コンビニで嫌われる客は?残った恵方巻きはどうなる?店長が大暴露
 最近コンビニで買い物をしていると、申し訳ない気持ちになることがままあります。店員の顔色や声のトーンに、ほの暗さを感じる瞬間があるからです。その原因は何かと考えると、過去には考えられないほどの仕事量にあるのではないでしょうか。

 公共料金の支払い、チケットの発券、おでん、ドーナツ、から揚げ、コーヒー……。コンビニに行けば、全ての用事が済ませてしまえるほどに、いつでもなんでも揃っている。スピーディーな便利さゆえ、欠かせない社会インフラなのは間違いありません。

◆恵方巻きノルマのためにバイトが自爆買い

 しかし、光あるところ影もあるもの。この快適さは、どこか一点に集中した負荷の裏返しに過ぎないのではないか。

『コンビニ店長の残酷日記』(三宮貞雄 著)は、自身もオーナー店長である著者が、日本式コンビニへの問題提起をした勇気ある一冊。

 たとえば恵方巻きひとつとっても、クレイジーな背景が浮かび上がってくる。第1章P53〜59では、仕入れから会計に至るまでの不条理が記されています。

 売れ残るとわかっていても、本部からのプレッシャーに負けて大量に仕入れる。結果、ノルマに届かなかった分を従業員が買い取る「自爆」がまかり通ってしまう。

 それでも本部SV(スーパーバイザー)が強気の姿勢を崩さないのは、本社が損をすることは絶対にあり得ないから。さらに、損をしないだけでなく、本来オーナーが受け取るべき利益まで吸い上げる日本独自の会計システムまで確立されているというのですから驚きです(それは、コンビニの本場アメリカでさえ反発したほどに不平等な契約なのだそう)。

 いずれにせよ、本部にとって恵方巻きという食品は、客が買おうが、バイトが「自爆」しようが、廃棄されようが、どうでもいいのですね。加盟店にどれだけ仕入れさせたかが重要なのです。恵方巻きも、消費者も、従業員も、すべて利益を吸い上げるための駒でしかない。恵方巻きひとつから、食物や人間が平気でぞんざいに扱われ得る殺伐とした様相が浮かび上がってくるようです。

◆一見、品のいい「モンスター客」も

 そんな経営上のストレスに加えて、「モンスター客」への対応に追われる著者は、現代の日本人の「何かが確実におかしくなっている」と感じている様子。

 たとえば、店の外まで落し物を探させようと電話してくる上品そうなご婦人。

 さらに、お昼の忙しい時間帯に、筆記用具一式を借りてファックスを送ったのに、ありがとうの一言すらなしに店を出る、スーツ姿の若いサラリーマン。

 彼らは人に危害を加えるわけではないでしょうが、基本的な何かが欠落している怖さを感じさせるエピソードでした。

◆細やかな心遣いを見せる客

 その一方で、焼酎を買う常連のトラック運転手は、飲酒運転を心配する店主に先んじて、
「大丈夫、このご時世に飲酒運転なんてやったら一発でアウト。おまんまの食い上げだ。荷物を運び終わったら、そこで一杯飲んできっちり寝るから心配すんなよ」(第2章 P86)
と、細やかな心遣いを見せる。

 毎朝のように弁当やおにぎりをカゴ一杯に買いこんでいた、ニッカポッカ姿の一見コワモテな客も、

「いろいろと世話になったな。オレ、この現場、今日で最後なんだ。もう明日からは来られない。短い間だったけど、ありがとうな」(第4章 P159)

 と、粋にお別れを告げたといいます。

 こうして、なんとか成り立っているコンビニというインフラ。著者によれば、「人間の本性が現れる場」だといいます。

<いつもエリートのような装いをした紳士も、深窓の令嬢も、店内に入ったとたんに鎧を脱ぎ捨て、常識では考えられないような行動を起こすことを嫌というほど思い知らされてきた。>
(まえがき P5)

 いくら売り上げても、雀の涙ほども出ない利益。そればかりか覚えきれないぐらいに膨れ上がったサービスに加え、横柄に振る舞う客まで丁寧に対応しなければならないコンビニ店員の気苦労は、計り知れません。
 
<TEXT/比嘉静六>