■NBAプレーオフ2016・ファーストラウンド展望@イースト編

 4月13日にレギュラーシーズンの全日程が終了し、いよいよ今季のNBAはプレーオフへと突入する。決定したファーストラウンド計8カードを、東西カンファレンスごとに紹介したい。まずは、イースタン・カンファレンスの覇権の行方を占ってみよう。

[ファーストラウンド対戦カード@イースタン・カンファレンス]
クリーブランド・キャブス(1位)対デトロイト・ピストンズ(8位)
トロント・ラプターズ(2位)対インディアナ・ペイサーズ(7位)
マイアミ・ヒート(3位)対シャーロット・ホーネッツ(6位)
アトランタ・ホークス(4位)対ボストン・セルティックス(5位)

 イーストのファーストラウンド最注目カードと言えば、やはりクリーブランド・キャバリアーズ(57勝25敗/1位)対デトロイト・ピストンズ(44勝38敗/8位)の一戦だろう。第1シードを獲得したのは、昨季のイースト覇者・キャブス。昨年のNBAファイナルではゴールデンステート・ウォリアーズの前に2勝4敗で敗れたものの、それは「ビッグ3」と呼ばれるレブロン・ジェームズ(SF)、カイリー・アービング(PG)、ケビン・ラブ(PF)のうち、アービングとラブを故障で欠き、レブロンが孤軍奮闘しての結果だった。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 今季のキャブスはレギュラーシーズン前半、アービングやイマン・シャンパート(SG)ら主力を欠いた状態にもかかわらず、30勝11敗という好成績でカンファレンス首位をキープしていた。ところが、キャブスのフロントはデビッド・ブラット・ヘッドコーチ(HC)を急遽解任。アシスタントコーチだったタイロン・ルーを新HCに昇格させた。

 その理由は、1月14日のサンアントニオ・スパーズ戦を95−99で落とし、4日後のウォリアーズ戦でも98−132と大敗したため。両チームは、プレーオフを勝ち進めばNBAファイナルで対戦濃厚な相手。つまり、いくらイースタンを首位で走ろうとも、NBAファイナルで勝てないHCには三行半(みくだりはん)を突きつけたというわけだ。

 しかも、HCの解任を進言したのは、エースのレブロンだと囁(ささや)かれている。フロントはそれを否定するも、ブラットサイドは解任の理由を「1000%、レブロン」だとコメント。その真相は闇のなかだが、今季のキャブスにとってカンファレンス制覇はあくまで通過点でしかなく、リーグ優勝しか見据えていないのは間違いない。

 そんなキャブスがファーストラウンドで対戦するのが、第8シードのピストンズだ。レギュラーシーズンの対戦成績はキャブスの1勝3敗。思わぬ天敵が、昨季イースト王者・キャブスの前に立ちふさがる。

 7年ぶりのプレーオフ進出となるピストンズの勢いは本物だ。アウトサイドにレジー・ジャクソン(PG)、インサイドにアンドレ・ドラモンド(C)の2枚看板を擁し、今年2月にはジャクソンとポジションのかぶるブランドン・ジェニングス(PG)を放出して、オーランド・マジックからトバイアス・ハリス(SF)を獲得した。ウィークポイントだったSFの補強に成功し、チーム力を格段に向上させている。

 ピストンズの強みは、スターター全員が平均14.0得点以上という、どこからでも点が獲れるバランスの良さと、1試合チーム平均46.3本でリーグ2位タイをマークしたリバウンド能力の高さだ。インサイド陣だけを比較すると、ピストンズが相手を圧倒するかもしれない。キャブスのエンジンのかかりが遅ければ、いきなりアップセット(番狂わせ)を起こす可能性も十分にある。

 実力が拮抗しているカードで言えば、アトランタ・ホークス(48勝34敗/4位)対ボストン・セルティックス(48勝34敗/5位)の組み合わせも興味深い。

 今季はシカゴ・ブルズが2008−09シーズン以降初めてプレーオフ進出を逃して期待を裏切ったが、逆に良い意味で期待を裏切ったのがセルティックスだ。1試合平均105.7点の得点力はイースト・ナンバー1。その原動力となっているのが、エースのアイザイア・トーマス(PG)だ。2011年のドラフト2巡目全体60位という最下位指名ながら、今季はオールスターに初出場を果たす大躍進。175センチの小兵ながら、平均22.2得点(リーグ11位)の成績は立派だ。

 セルティックスの魅力は強敵相手、さらにアウェーでこそ発揮される。2月5日にはアウェーでのキャブス戦でエイブリー・ブラッドリー(PG)がブザービーターを沈め、104−103の逆転勝利。さらに4月1日に敵地オラクル・アリーナで行なわれたウォリアーズ戦でも109−106で勝利を収め、2015年1月25日から続いていたウォリアーズのNBA歴代最長ホーム連勝記録を「54」で断ち切った。エバン・ターナー(SG)は、「どこが相手でも勝てる。理由は単純だ。俺らはタイトルを争えるチームに勝ってきたんだから」と自信をのぞかせている。

 レギュラーシーズンの対戦成績は、3勝1敗でホークスがリード。シード上位のホークスがホームコートアドバンテージを持つ。しかし、今季の流れを踏まえるならば、アウェーでより真価を発揮するセルティックスがホークスの足もとをすくうかもしれない。

 一方、トロント・ラプターズ(56勝26敗/2位)対インディアナ・ペイサーズ(45勝37敗/7位)の一戦は、ラプターズ有利と予想される。

 球団史上最多のレギュラーシーズン56勝を挙げて第2シードを獲得したラプターズは、明らかに今季を「勝負の年」と位置づけている。オールスターガードのカイル・ラウリー(PG)、デマー・デローザン(SG)のバックコートコンビの破壊力はリーグ屈指。4月に入って守備職人のデマール・キャロル(SF)がひざの手術から復帰し、プレーオフに間に合ったのも心強い。1試合平均98.2失点とイーストでもっとも固い守備が、より強固になるのは間違いない。

 今季のペイサーズは、完全復活したポール・ジョージ(SF)がオフェンスのタクトを振るう。見どころは、「ペイサーズのジョージ対ラプターズのキャロル」のマッチアップだ。この対決の勝敗が、試合結果を大きく左右するだろう。

 そして最後のカード、マイアミ・ヒート(48勝34敗/3位)対シャーロット・ホーネッツ(48勝34敗/6位)の一戦は、ホーネッツのオーナーでもあるマイケル・ジョーダンの秘蔵っ子――ケンバ・ウォーカー(PG)の爆発力に着目したい。ウォーカーは1月18日のユタ・ジャズ戦でフランチャイズレコード&キャリアハイとなる52得点を挙げ、全米中にその名を広めた25歳だ。

 対するヒートは、今季好調だったクリス・ボッシュ(PF)が2月、血栓症の治療のためにチームを離脱。2シーズンぶりのプレーオフに暗雲が立ち込めるも、2月27日にブルックリン・ネッツを解雇されていたジョー・ジョンソン(SF)を獲得し、ボッシュの穴を埋めることに成功している。

 ヒートは控えの層こそ薄いものの、ドウェイン・ウェイド(SG)、ハッサン・ホワイトサイド(C)、ゴラン・ドラギッチ(PG)、ルオル・デン(SF)、そしてジョンソンと、スターターはカンファレンス屈指の豪華な面々が並ぶ。2011年から2014年まで4年連続でNBAファイナルに進出したヒートが、ふたたびイーストの主役に躍り出ても不思議ではない。

 今季のプレーオフは、順当なチームが勝ち上がるのか、それとも波乱が待っているのか――。突出したチームの少ないイースタン・カンファレンスは、ファーストラウンドから目が離せない。

水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro