by Inhabitat

トイレの後に洗った手を簡単に乾かせるハンドドライヤーは、公共機関などのトイレに設置されていますが、手を十分に洗わないと手に付いた雑菌がハンドドライヤーを介して空気中に拡散し、他の利用者に迷惑がかかる可能性があります。最新の研究により、ダイソン製ハンドドライヤーは、ペーパータオルに比べてなんと1300倍ものウイルスを空気中に放出していることが判明しています。

Evaluation of the potential for virus dispersal during hand drying: a comparison of three methods - Kimmitt - 2016 - Journal of Applied Microbiology - Wiley Online Library

http://onlinelibrary.wiley.com/wol1/doi/10.1111/jam.13014/full

Using a Dyson hand dryer is like setting off a viral bomb in a bathroom | Ars Technica

http://arstechnica.com/science/2016/04/dyson-dryers-hurl-60x-more-viruses-most-at-kid-face-height-than-other-dryers/



濡れた手をハンドドライヤーで乾かすと、ペーパータオルで手を拭くことに比べて空気中に多くの細菌を放出するという問題点は、研究者の間で長年知られてきたことでした。さらに、ダイソン製のハンドドライヤー「Dyson Airblade」が、他のハンドドライヤーよりも空気中に多くのウイルスを拡散している可能性が指摘されていました。ウイルスは、細菌とは異なり、空気中でも高い伝染力を保ち、ごくわずかな量で生物に感染することが可能です。

そこで、ウェストミンスター大学で生物科学を研究しているPatrick Kimmitt氏とKeith Redway氏は、ハンドドライヤーの使用後にウイルスが空気中にどのくらい拡散するかを観察するために実験を実施。まず、手袋をはめた手に「バクテリオファージMS2」というウイルスを塗り、続いてペーパータオル、一般的なハンドドライヤー、Dyson Airbladeの3種類の方法で濡れた手を乾かしました。手を乾かす際の空気中の成分を分析するとともに、手を乾かす場所の周囲に寒天培地溶液を注いだプレートを設置し、大腸菌に感染したMS2の個数を数えたとのこと。

手を乾かす場所の隣に設置したプレートを観察すると、Dyson Airbladeは、一般的なハンドドライヤーと比較すると大腸菌が60倍も広がっていて、さらにペーパータオルと比べると大腸菌の数は1300倍も多かったことが判明。MS2が広がった場所を詳しく見ると、空気中に拡散したMS2のうち70%が、子どもの顔の高さから見つかったそうです。



また、ペーパータオルで濡れた手を拭いた際は、手に残ったウイルスが周囲にほとんど広がらず、一般的なハンドドライヤーではウイルスは25cmほど離れたところに届くのがせいぜいでしたが、Dyson Airbladeは3メートル以上離れたところまでウイルスが広がり、一般的なハンドドライヤーの約20倍もウイルスの拡散力が高く、ウイルスの個数は500倍にも達していたとのこと。加えて、Dyson Airbladeでは空気中にウイルスが残る時間が15分以上もあり、一般的なハンドドライヤーのおよそ50倍、ペーパータオルの100倍にものぼることが判明しています。

雑菌が洗い流されていない手でハンドドライヤーを使うと、次にハンドドライヤーを使う人や、周囲のトイレ利用者の手に雑菌が広がることになり、特に体が弱っている人が多く滞在する医療施設では大きな問題となります。Kimmitt氏は論文の中で、「医療関係施設や食品製造工場など、衛生面や交差感染に特に気をつけなければならない場所において、洗った手を乾かす方法について注意深く検討しなければならない」と注意を呼びかけています。



by Richard Masoner / Cyclelicious