来月、台湾の新総統に蔡英文氏が就任する。独立志向の民進党を率いる蔡氏が中国との関係をどう構築していくか注目される。写真は台湾の国父記念館。

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2016年4月16日、台湾の蔡英文民進党代表が来月、新総統に就任する。女性総統は初めて。蔡氏は今年1月の総統選挙で、親中国色が強い国民党の朱立倫氏らを大差で破り、8年ぶりの政権交代を実現させた。独立志向の民進党を率いる蔡氏が、海を隔てた大陸とどう向き合っていくかが最大の焦点だ。

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蔡氏は選挙中から、中国との関係については「現状維持」を強調。昨年11月、シンガポールで中国の習近平国家主席と初めて会談するなど「対中接近」を試みた現職の国民党・馬英九総統との違いを鮮明にしている。台湾メディアによると、3月末に行われた馬総統との政権引き継ぎの会談で対中政策は議題にならなかったという。

台湾行政院大陸委員会が定期的に実施している最新の世論調査によると、中国との関係について86.7%が「広義の現状維持」を支持している。「広義の現状維持」は、「現状維持後、再決定」(31.8%)、「永遠に現状維持」(26.5%)、「現状維持後、独立」(19.8%)、「現状維持後、統一」(8.6%)の合計。一方、「出来るだけ早く独立」は6.5%、「出来るだけ早く統一」は1.1%だった。

これに対し、中国は総統選直後、「われわれの台湾政策は一貫して明確であり、選挙の結果によって変わることはない。中国は92年合意を堅持し、台湾を独立させるいかなる形の分裂活動にも、引き続き断固として反対する」との国務院台湾事務弁公室談話を発表。独立志向にいち早くクギを刺した。

さらに、王毅外相も「彼ら(台湾)の憲政に基づいて選ばれた以上、その憲法の規定には背けない。彼らの憲法が規定しているのは、大陸(中国)と台湾は一つの国だということだ」と発言した。中国高官が国とは認めていない台湾の憲法に言及するのは異例で、民進党政権との交流の糸口を探る動きとの見方もある。

中国側の揺さぶりは観光面にも及び、台湾・旺報はこのほど、ホテル関係者の話として「中国人観光客は台中や高雄のホテルの主な顧客で、宿泊客の7〜8割を占めていたが、総統選の後、団体客が4〜5割減少した」と報じた。光華網も「中国政府が警告の意味を込めて1日5000人のツアー枠を3750人にまで減らす」と伝えた。実数では3分の1にまで落ち込むとも予測され、台湾経済にとっては深刻な打撃となる。

民進党は総統選と同時にあった立法院(国会、定数113)選で68議席を得て初めて過半数となった。14年3月、台中間のサービス分野の市場開放を目指す「サービス貿易協定」の批准に反発する学生らが立法院議場を占拠した「ひまわり学生運動」から発展した新政党「時代力量」も5議席を得た。

国民党政権による中国への急接近に民意がブレーキをかけた形で、その背景には、このままでは台湾が中国にのみ込まれてしまうという危機感がある。蔡氏にとっては、こうした民意を踏まえながら、台中間の経済交流を発展させ、対中関係をどう安定化していくが問われている。(編集/日向)