NHK 大河ドラマ「真田丸」(作:作三谷幸喜/毎週日曜 総合テレビ午後8時 BSプレミアム 午後6時)
4月10日放送 第14回「大坂」 演出:木村隆文


いよいよ大坂


1月からはじまった「真田丸」。怒濤の勢いで4分の1が過ぎて、いよいよ舞台は大坂へ。

清須(三谷幸喜の映画だと「須」)会議(天正/10年1582年)
→「賤ヶ岳の戦い」(天正11年/1583年)
→「小牧・長久手の戦い」(天正12年/1584年)を経て、
大坂城を完成させ(天正13年/1585年)、実質、天下をとった豊臣秀吉(小日向文世)と、
真田源次郎信繁(堺雅人)が対面する。

堺と小日向の、いつもまぶしそうな目といつも笑っているような口元を中心に、全体的に顔立ちが似ているという意見は以前から多く出ていた。ふたりが共演するのは今回がはじめてのことではないし、三谷の初大河ドラマ「新選組!」にもどちらも出演している。中でも今回、ふたりを横並びでなく、顔を縦に並べた画面には遊び心が感じられ、心踊った。

やっぱり似ている。

似ているふたりが運命の対面を果たす前、源次郎は茶々(後の淀の方/竹内結子)と出会い「わりと好きな顔」と言われるのも、狙っているとしか思えない。
後に秀吉が亡くなると、淀は遺児・秀頼を立てて、豊臣復興のため徳川と戦う。その時、源次郎信繁の力を借りることになるが、そのわけが秀吉の顔に似ているため親近感や信頼感をもったということだったら、大阪の陣がより楽しめそう。淀が、好みの顔のせいで信繁に強く思い入れるなんてエピソードがあったりして。

それにしても、源次郎は、きり(長澤まさみ)にしろ茶々にしろ、自由なおなごに振り回される運をもっているらしい。

「天真爛漫」と表現された竹内結子の茶々は、まるで月9(フジテレビ)のような演技だった。
はじめて会った男の顔を両手で抑え「わりと好きな顔(ハート)」とだけ言って、男に鮮烈な印象を残したまま風のように去っていく、それが彼と彼女との出会いだった・・・という感じは月9の1話にありそう。ところが、三谷幸喜、月9は書いてない。

めっちゃ決め台詞


三谷らしくない新鮮な場面が14話ではもうひとつあった。
真田信尹(栗原英雄)にそそのかされ、家康(内野聖陽)を裏切り秀吉についた石川数正(伊藤正之)が、源次郎信繁相手に後悔を語る場面。
「それはでもそそのかされたのがいけないんじゃないでしょうか」
「最後は自分で決めたことなのですから 自ら責めを負うしかないと思います」
「もうしょうがないですよ 裏切ってしまったんですから
 先は読めないのはみな同じです だから必死に生きているんです」
「人を騙したり 裏切ることもあるでしょう
 でもそれが善とか悪ではかれるものではないと わたしは思います」
「石川さん、とりあえず先に進みましょう」
 噛んで含めるように石川を諭す信繁。
 正論、正論、理想論、ポジティブシンキング。めっちゃ決め台詞。
 なにこれ、日曜劇場(TBS)? だが、三谷幸喜、日曜劇場は、オムニバスの一話「おやじの背中『北別府さんどうぞ』」(14年)しか書いてない。
 源次郎信繁、ようやく20歳になったくらいだから、青い台詞も無理はないか。それともこれも演技? 劇中劇が多い「真田丸」はなんかもうほんとうにややこしい。

ほかは、コメディリリーフとして申し分ない信幸(大泉洋)のと家康、引き締めてくれる北条氏政(高嶋政伸)と上杉景勝(遠藤憲一)、渋い本多正信(近藤正臣)、真田信尹(栗原英雄)、直江兼継(村上新悟)、まさかの、きりへのライバル心を抱く矢沢三十郎頼幸(迫田孝也)など、安心のスタメンに、14回では、新たな個性派たちが参戦した。
“人を不快にさせる何かをもっている“石田三成(山本耕史)、 “言ってることがおかしい”加藤清正(新井浩文)など、曲者尽くし。
とりわけ、清正は、野山を駆け回っていた秀吉が関白になることを不服に思いながら、その秀吉に仕えることでもらった”加藤主計頭清政という名前を「返したくないなあ、気に入ってるんだ」「好きなんだよなあ、響きが お袋も喜んでくれてさあ」と逡巡する。この時代の人が出世魚みたいに名前を変えていくことを、こんなふうに現代的な台詞で見せてくれるのは愉快だ。
三成と清正には、ローゼンクランツとギルデンスターン(ハムレットの御学友で、トム・ストッパードが彼らを主役にした戯曲「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」を書いている)みたいになってほしい。

NHKドラマと世の中の引きの強さ


加藤清正といえば、熊本城。現実では、熊本大地震が起こり、心配な状況である。
14回では、天正13年11月に起きた天正地震に、家康たちが慌てる場面があった。
こういうことにシンクロを感じてしまうのもなんなのだが、朝ドラ「とと姉ちゃん」でも火事のシーンがあった日に、新宿ゴールデン街の火事、結核で父親がなくなった回の数日後、渋谷警察署で結核感染者が発見されたというニュースがあって、NHKドラマと世の中の引きの強さに少々背筋が寒くなる。

今はただ、多くの出来事で不自由な思いを強いられている方々が一刻も早く心落ち着けることを祈るのみ。
「真田丸」では、天正地震によって秀吉は、戦をいったん止めて復興に尽力したと語られていた。
現実でも、国をおさめるひとたちは、とにかく復興第一でお願いしたい。
(木俣冬)