中国の北朝鮮レストランで働いていた男女13人の韓国への集団亡命について、韓国内では「中国が黙認した」との見方が出ている。写真は中国にある朝鮮レストラン。

写真拡大

2016年4月15日、中国浙江省の北朝鮮レストランで働いていた男女13人が7日、東南アジア経由で韓国に集団亡命した。これについて、中国当局は「北朝鮮の旅券で合法的に出国した」と言及。異例の対応に、韓国内では「中国が亡命を黙認したのではないか」との見方が強まっている。

【その他の写真】

聯合ニュースや中央日報など複数の韓国メディアによると、13人はリーダー格の男性支配人と女性従業員12人。男性支配人は30代で、女性は1人が30代で残りは22〜25歳という。

13人は当初、中国吉林省の北朝鮮レストランに勤務していたが、商売がうまくいかず、昨年12月、浙江省寧波市の「柳京食堂」に移った。韓国情報当局によると、従業員の旅券は支配人が管理しているとされ、支配人が亡命を主導したとみられる。さらに、海外の北朝鮮レストランなどには情報機関の監視要員が配置されているほか、従業員間の相互監視も徹底するため、亡命までには緻密な事前準備があったようだ。

亡命ルートは、寧波市から陸路でまず上海に行き、上海空港からマレーシアのクアラルンプールに向かった。そこから空路タイのバンコクを経由して韓国入りした。迅速かつ手際よく動いており、韓国側のサポートがあった可能性が大きい。

到着翌日の8日には韓国統一省が「集団亡命」を公表。いち早い発表には13日投開票の総選挙で政権与党への追い風を狙ったとして、野党陣営が反発する一幕もあった。

今回の集団亡命ついて、中国外交部の陸慷報道局長は11日の記者会見で、「レストラン従業員13人は合法的な旅券を持って中国から出国した」と説明した。中国の公安当局が国内に居住する一部の北朝鮮住民が行方不明になったとの届け出を受けて確認した結果、北朝鮮国籍者13人が6日早朝に有効な旅券を持って出国した事実を確認した、という。

中国側の事務的ともいえる対応に、韓国メディアは「中国政府は従業員の脱北を事前に察知しており、少なくとも『黙認』または『傍観』して間接的に協力した」との見方を相次いで報じた。さらに、韓国メディアは北朝鮮の抗議を中国側が「合法的な旅券を持っていれば、どこにでも行けると一蹴した」とも報道。核実験やミサイル発射など国際社会への挑発行為を繰り返す北朝鮮を見る中国の目が厳しくなっていることをうかがわせた。

朝鮮中央通信によると、北朝鮮の赤十字社会中央委員会は12日になって、「前代未聞の誘引拉致行為であり、共和国に対する重大挑発」と非難する談話を発表。談話は中国も間接的に非難し、韓国政府の謝罪とともに、13人を北朝鮮に戻すよう求めた。

北朝鮮は外貨獲得のため、海外で130店以上のレストランを経営、うち100店以上は中国にある。従業員は「エリート層」に属し、体制への忠誠度などを基準に選抜される。

韓国人観光客目当てだが、国連の経済制裁強化を受け、韓国政府はレストラン訪問の自粛を勧告。客足が減り、多くが経営難に陥っている。その一方で、本国からの「上納金」要求は増えるばかり。脱北すれば、家族に危険が及ぶが、それにもかかわらず亡命に踏み切った背景には、こうした事情もあったとみられる。(編集/日向)