トイレでスマホ操作は危険(shutterstock.com)

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 不思議キャラクター・戸川純がTOTOウォシュレットのCMに登場したのは1982年のこと。キャッチコピーは、「お尻だって洗ってほしい」――。

 日本人の清潔志向の高まりと相まって、このCMを契機に温水洗浄便座は市民権を得て売れ始めた。

 その後、ホテルやオフィスビル、空港、商業施設をはじめ、新築の一般住宅にも普及。そして2015年3月末現在、一般家庭への普及率は77.5%にも達している。今や、温水洗浄便座でないと「大」ができないという人までいるほどだ。

外国人の評価が高い日本のトイレ

 昨年(2015年)、流行語大賞にもなった中国人観光客による「爆買い」。化粧品や医薬品、炊飯器などと並んで温水洗浄便座も人気だという。重い上に嵩張り、中国で買うより高価だが、日本で品質管理し、日本で販売されている製品なら、メイド・イン・チャイナでも安心だから買うのだという。

 自国で買えないわけではないが、日本で買ってこそステータスになるのだそうだ。

 日本のトイレを評価しているのは、なにも中国人だけではない。とあるテレビ番組で、ヨーロッパ人の旅行者が「トイレがきれい!」と驚いていた。それは温水洗浄便座だけでなく、トイレ空間そのものに対する評価と言える。

 内閣府男女共同参画局の「暮らしの質」向上検討会では、トイレについて深く掘り下げ、施策の方向性や個別対策を検討している。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックで訪日する多くの外国人に、高機能の温水洗浄便座、擬音装置、節水型便器を使ってもらうことで、日本の「おもてなし文化」体験してもらう。日本のソフトパワーを示すよい媒体になると、トイレを位置づけている。

 また、「汚い、危険、怖い」といったイメージのある学校のトイレや公衆トイレ、公園トイレも、2020年に向けて改修や整備などを行なう取り組み「ジャパン・トイレ・チャレンジ」が提言されている。

 すでに一部の自治体では、快適なトイレ環境を目指して「認証制度」を導入しているところもあるという。

日本には昔からトイレの神様がいた

 政府に後押しされなくても、なにしろトイレの神様「厠神」や「雪隠神」がいる国である。

 妊婦がつねに掃除をしてトイレをきれいにしておくと、安産できる上にきれいな子どもが産まれるといった伝承もある。お七夜の際に赤ちゃんをトイレの神様にお参りをさせる「雪隠参り」も各地にあった習俗だ(生後3日目のところも)。

 中世のパリやロンドン庶民の住まいにトイレはなく、おまるに大小便をして、いっぱいになったら窓から投げ捨てていたという。街路のあちこちにある糞尿を避けるためにハイヒールが発達したというのは余談だが、同時期の江戸の長屋には、共同の便所が設置されていたのだから大きな違いだ。

 日本人は、もともとトイレについては「ちょっとうるさい」民族なのかもしれない。
トイレとスマホの相性はよくない

 清潔なトイレで用を足せる安心感からか、最近トイレにスマートフォンを持ち込む人が増えている。ひと昔前までは、「大」の際に「本を持っていく」という人が多かったが、これがスマホに取って代わったのだろう。仕事中に秘密のメールをトイレで打つ人もいるという。

 きれいなトイレと最新機器であるスマホ、一見、不潔とは思えないところが盲点かもしれない。

 イギリスのある研究報告によると、スマホや携帯電話の表面には、便器の18倍もの細菌が付着しているという! 便器よりはるかに汚いのだ。

 水没の恐れもさることながら、本と違ってスマホは指を密着させ、通話の際は限りなく口を近づけて使用する。トイレには、ノロウイルスや大腸菌、サルモネラ菌など目に見えない糞便物質による細菌やウイルスがいっぱい。トイレを出る際に手を洗っても、細菌がスマホに付着していると元の木阿弥だ。

 汚れたスマホを使用すると細菌が指に付着し、指から口を経由し体の中に入ってしまう恐れもある。世界一きれいな日本のトイレでも、スマホ持ち込みは不潔だと心得たい。
(文=編集部)