NHK大河ドラマ「真田丸」より
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第二回】

 5年ぶりの高視聴率をたたき出している大河ドラマ「真田丸」は、三谷幸喜ワールド炸裂で、豪華キャストのキャラが際立っている。三谷氏が意図しているか否かにかかわらず、能力開発プログラムのトレーナーである私の目には「モチベーションエリアの際立たせ方が絶妙」だと感じてしまう。

 初めて聞かれた方もいるだろうが、モチベーションエリアとは、モチベーションを左右させる領域のこと。そして実は、ビジネスの世界でも、このモチベーションエリアを把握できるかどうかに、成功のカギがかかっているのだ。

◆モチベーションエリアが際立つ「真田丸」の豪華キャスト

 私は、20年にわたる演習経験をふまえて、ビジネスパーソンのモチベーションエリアを、

「目標達成(経済的利益)」
「自由度確保」
「地位の獲得」
「他者との協力」
「安定の維持」
「公私の調和」

の6つのエリアで捉えている。例えば、「目標達成」の大小に影響を受けやすいという人もいれば、「公私の調和」がとれているかどうかでやる気が変わる人もいる。

 私は仕事柄、見聞きする言動をこのモチベーションエリアに当てはめる習性がついてしまっており、「真田丸」を見ていても、ついエリア分けをしてしまう。私の観察結果を披露すると、序盤の主役ともいえる草刈正雄演ずる真田昌幸は、「地位の獲得」にモチベーションエリアがありそうだ。なぜなら彼は、調略を繰り返すことを厭わず、信濃の国衆を束ねようとし、大名になることを視野に入れているからだ。

 一方、真田信幸(大泉洋)は「他者との協力」にモチベーションが左右されやすい人物として描かれている。「織田についたのだから、織田に従うべきだ」という彼の発言は、「他者との協力」を重んじるあまり、上司に順応する言動なのである。また、序盤で「他者との協力」に思い悩む徳川家康(内野聖陽)も、同じエリアに分類されそうだ。

 次に、自律・裁量を重んじる「自由度確保」にモチベーションが左右されやすい人物として、北条氏直(細田善彦)が挙げられる。父・北条氏政に「あれこれ言われたくない」という空気をたぎらせ、真田昌幸に「分かりやすい男よ。わしの逆のことしか言わん」と言われ操られる場面は、その象徴といえるだろう。

 また、このモチベーションエリアだが、複数のエリアにまたがる場合もある。上杉景勝(遠藤憲一)は、「他者との協力」と「地位の獲得」の間で行き来し、きり(長澤まさみ)は「安定の維持」と「公私の調和」の傾向を現時点では発揮している。

 さらにこのエリアは、状況変化や時間経過により、変わってくることもある。梅(黒木華)は当初、「公私の調和」に分類される言動を発揮していたが、「私はこの子のために戦いにいくの。親となったら話は別よ」と、「目標達成」意欲をより強く見せるように変わる。同じく「目標達成」意欲を強く持つ信繁(堺雅人)と梅が結ばれたのは、このモチベーションエリアを共有していたからであろう。

◆モチベーションエリアに応じたマネジメントが組織力を高める

 話をビジネスの現場に戻す。分解スキル・反復演習型能力開発プログラムの演習を積み重ねる中で、私はチームをまとめることに苦労し業績を上げることができないマネジャーには、共通の欠点があることが分かってきた。その欠点とは、メンバーのモチベーションエリアを見つけられず、モチベーションエリアに応じた方針や体制、コミュニケーションを繰り出せていないという点だ。

 例えば、「公私の調和」にモチベーションエリアがあるメンバーに対して、マネジャーが「売上増大のために徹夜してでもやり遂げろ!」といっても、メンバーのモチベーションが上がるどころか、逆効果となる。他方、「目標達成」にモチベーションエリアがあり、残業してでも超過達成したい意欲満々のメンバーに対して、「今は努力しても無駄だから、ゆっくり休んで、ほどほどにやろう」などと「公私の調和」を進めても反発が生じてしまう。