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パナソニックが昨年11月に発売したななめドラム式洗濯機「Cuble」。表面に凸凹がない、洗練されたデザインで注目を集めている。洗濯機というのは、これまでドラム式に限らず機能性訴求が優先で、デザイン性は二の次といったイメージがあった中、この傾向に一石を投じたのが本製品だと言えよう。

○Instagramに投稿したくなる「洗濯機」

「『Cuble』を買った方が、Instagramなどに、写真をアップしていらっしゃるんです」。Cubleのデザインを担当したパナソニック アプライアンス社 デザインセンターの太田耕介氏は、同機種の象徴的なエピソードとして、InstagramをはじめとしたSNSへの投稿を挙げた。

「今まで、洗濯機を買ったことをSNSで写真をシェアし、友達に知らせる…みたいな現象はあまりなかったと思うので、既存の洗濯機とは異なる形で、Cubleに関心を持っていただいたのだと実感しています」(太田氏)。

Cubleのデザインの特徴は、つなぎ目のないフラットで直線的な形にある。"キュービックフォルム"と呼ばれる独自のデザイン。「つなぎ目を極力排したシンプルでフラットなデザインは、すき間が少ないため、同時に汚れを溜まりにくくし、メンテナンス性を高める役割も果たすんです」と太田氏。見た目の美しさはもちろんだが、"機能美"が詰まった結果でもあるという。

そんなこだわりの結果からか、20万円台後半というドラム式洗濯機の中では高価格帯の製品ながら、9月に発表した直後から300台近い予約申し込みを受けたほどの反響だったという。

○隠す存在から、見せるモノへ

「ドラム式洗濯機の新しい提案」というかたちでスタートしたCubleの開発の始まりは、約2年前まで遡る。パナソニックによると、現在のドラム式洗濯機の主流となっている丸みを帯びたデザインは、同社が2003年に発売した"ななめドラム"が源流となっているのだとか(ちなみに、これが世界で初めてのななめ式だそうです)。これは、ドラム槽をわずかに斜め後方へ傾けることで、洗濯物の出し入れのしやすさと節水性を高めることを実現したものだ。「ドラムの傾きを強調する曲線形状にすることで、一目で機能性などがお客様に伝わるデザインにする」(太田氏)ことを重要視してきたという。これ以降他社も追随し、日本におけるドラム式洗濯機は曲線的なデザインがスタンダードになっていったそうだ。

しかし、発売から10年ほどを経たあたりで、ドラム式洗濯機の機能はある程度のレベルの高さにまで達し、定着。当初は30度まで傾いていたドラム槽も、現在では10度の傾きで十分な性能を発揮できるようになっていた。

パナソニック社内では「機能性がある程度高まってきた中、洗濯機も今までの形でいいのか?」という機運が高まり、これまで機能性が重視され、洗面所で"隠す"というイメージがあった洗濯機の新たなスタイルを提案するプロジェクトが開始されたといい、それがCubleの誕生につながったとのことだ。

Cubleを開発するにあたり、デザインコンセプトとしてまず意識されたのが、"空間との調和"だという。「最近のサニタリー空間は、シンクなどをはじめフラットなデザインが増えてきています。そこで線を揃えていくことで、スッキリさせられると考えました。しかし、単に四角くするのではなく、凹凸や隙間を徹底的になくし、シンプルな箱を目指すことにしました」と太田氏は振り返る。

しかし、デザイン性を求めながらも、もう一方でポリシーとして掲げられていたのは、「機能性を犠牲にしたり、妥協したりしない」ということ。そこで従来からの"ななめドラム"の使い勝手を守りながらも、本体の外観を大きく変えていくというのが使命だった。つまり、中身のドラム槽を10度に傾けた状態のままで、本体を水平垂直な形状にするという決して容易ではない挑戦だ。

○これまで丸かったものを四角くする

"空間との調和"を生み出す一方、”機能性を犠牲にしない”デザイン。それを掲げて開発されたCubleにおいて、これまでのドラム式洗濯機にはなかった構造上の大きな革新は、"フルオープンドア"と名付けられたドアの採用だ。

従来のドラム式洗濯機では、扉はドラム槽の投入口の部分を切り取るように、丸い形のものが取り付けられている。一方、Cubleでは、本体の前面が全体的にパネルになった四角い扉を採用している。

この大きな構造の変化は、機能性においてもさまざまな利点をもたらした。例えば、ヒンジ部分を本体の外側に取り付けることができるため、ドアを前に大きく開くことができる。これにより投入口前のスペースをドアがふさがず、作業空間を広く確保できるため、洗濯物が出し入れしやすくなった。また、すき間が少ないフラットな表面は手入れもしやすいというメリットも生み出す。

Cubleでは扉を全面的なパネルにしたものの、ドアの真ん中には"クリアウィンドウ"という、中が覗ける丸い"窓"の部分を設けている。太田氏によると、これは洗濯機の"エンターテイメント性"を意図したものとのこと。

「ユーザーの方の中には、洗濯機が回っている状態を見たいという声もあります。中が見えることで、洗濯に対するユーザーのモチベーションを上げられるのではないか。そう考え、あえて中を見せるために透明な強化アクリル板を採用しました」と話す。

Cubleをはじめとするパナソニックのドラム式洗濯機の特徴のひとつに"即効泡洗浄"という機能がある。高い水圧により洗浄液を泡状にして衣類に降り注ぎ、洗浄力を高めるための機能だが、「この泡が外から見えることで、"嫌々行う家事"から"楽しい"ものへと洗濯に対するイメージをポジティブに転換したかった」とのことだ。

とはいえ、これまでの洗濯機と異なるデザインの実現は、一筋縄ではいかなかったという。後編では、Cubleが直面した課題と、その突破口となった意外な製品について語られる。

(神野恵美)