今年はじめ全国がん(成人病)センター協議会加盟16施設の治療成績をまとめた「がんの10年生存率」が公表された。

 全部位、全ステージ(病期)をまるめた生存率は58.8%。大腸がんを例にすると、転移がない早期なら98.8〜84.4%、リンパ節転移がある進行がんでも69.6%が10年を乗り切っている。

 発生部位や診断時の病期にもよるが、進行が比較的遅い大腸がんや乳がんについては「がん=死」という認識を改める頃合いだろう。

「がん=生存」という事実は、治療中〜治療後の生活設計や就労計画が必要だということ。実は新規にがんと診断される3人に1人は、20〜64歳の生産年齢なのだ──ところが。

 昨年内閣府が20代以上の成人を対象に行った世論調査によると「2週間に1度ほど通院する必要がある場合、働き続けられると思うか」との設問に対し、「どちらかといえば、そう思わない」「そう思わない」という回答が3分の2を超えた。

 特に乳がんの好発年齢である40代の女性では76.7%が治療が始まったら「働き続けられない」と考えていることが分かっている。

 乳がんの10年生存率は早期で93.5%、脇の下のリンパ節転移を認める2期で85.5%、3期でも53.8%と高い。この間、仕事を失うことは治療費の問題だけではなく、社会との絆や自己効力感の喪失を招きかねない。

「がんでも働きたい」との悲痛な声を受け、厚生労働省はこの2月、企業向けにがん患者が仕事と治療を両立できるよう支援するガイドライン(指針)を公表した。

 指針では、例えば午前中に放射線治療を受け、午後出勤に対応できる時間単位の有給休暇制や時差出勤の在り方、また企業側から主治医に意見を求める際の書面のひな型などが示されている。

 いわゆる「私傷病」の取り扱いは各社の就業規則に委ねられている。指針に法的な拘束力はない。しかし、3人に1人ががんに罹患する時代にがん患者を安易に切り捨てることこそ錯誤だろう。

 がんと共に生きる社会に何が必要か。皆で考える時が来たようだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)