とはいえ、FIFAはIOCに対して完全に譲歩したわけではない。2009年には年齢制限を23歳から21歳に引き下げることを提案したり、リオ大会からはオーバーエイジのみならず、23歳以下の選手にも代表チームによる拘束権を認めない方針を示したりするなど、基本的には非協力的な姿勢を貫いている。7日には、Jクラブからの選手派遣はオーバーエイジを含めて1チーム3人までとすることが日本サッカー協会から発表されたばかりだ。

 結局のところ、オーバーエイジとはIOCとFIFAによる“妥協の産物”である。だが、これを享受する側の代表チームにとってはメンバー選考の選択肢が増え、また我々ファンにとってもスター選手のプレーも見られるチャンスが増えるとあって、悪いことはほとんどない。

 ちなみに、日本代表はオーバーエイジのルールが誕生したアトランタ大会以降、リオ大会で6大会連続のオリンピック出場となるが、オーバーエイジが1人でも出場した過去3大会中2大会ではグループステージを突破している。4年前のロンドン大会では、当時VVVフェンロ所属だった吉田麻也(現サウサンプトン)とFC東京所属の徳永悠平がオーバーエイジとして招集され、4位入賞を果たしたのは記憶に新しい。なお、歴代のオーバーエイジをポジション別に分類すると、GKが2名(楢崎正剛、曽ヶ端準)、DFが3名(森岡隆三、吉田麻也、徳永悠平)、MFが2名(三浦淳宏、小野伸二)であるのに対し、FWは1人も選ばれていない。守備的な選手が多く招集されるのは、ポジションの特性上、ある程度の経験値が求められるからだろう。

 ただし、オーバーエイジを使うことが必ずしもベストとは言い切れない事実もある。オーバーエイジを招集せずに全員23歳以下の選手で臨んだ2大会を振り返ってみると、アトランタ大会では、ベベット、リバウド、ロベルト・カルロスとオーバーエイジをフルで活用したブラジル代表から金星を挙げる“マイアミの奇跡”を起こした。また北京大会に出場したメンバーからは、長友佑都、本田圭佑、香川真司、岡崎慎司ら、多くの選手がフル代表で長らく主力として活躍している。オーバーエイジの使用による功罪は確かに存在するのだ。

 いずれにせよ、冒頭で述べたとおり、リオ大会ではオーバーエイジを招集する方針であることが示された。そして注目の組み合わせ抽選会は、14日にブラジルのマラカナンスタジアムで行われる。アジア最終予選では対戦相手に合わせて積極的にメンバーの入れ替えを行った手倉森誠監督だけに、オーバーエイジの選手選考もグループステージの相手次第といったところだろう。

 果たして、オーバーエイジは何名招集され、そして誰が選ばれるのか。もちろん、そこに誰もが納得する答えは存在しない。ただし、いろんな予想をすることができ、またベストメンバーについて想像するという楽しみがあるのは間違いない。

(記事/Footmedia)