妊婦に優しい職場環境を!(shutterstock.com)

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 今年2月に「保育園落ちた日本死ね」の匿名ブログで炎上した待機児童問題にも見られるように、この国は先進国と言われながら依然として子育てと仕事の両立が困難なようだ。

 特に「育児の主体は女性」という性別役割分業の考え方が根強い社会では、働く女性の負担は重い。

 先日、そうした状況を象徴するかのような報道が、新聞各紙に掲載された。全国労働組合総連合(全労連)の女性部が、「働く女性の4人に1人が流産を経験している」という調査結果を発表したのだ。

仕事と流産率の関係は明らかではない

 これは、全労連が2011年以降に妊娠・出産した女性労働者にアンケートを行い、調査結果をまとめたもの。2015年4月から7月にかけて全国47都道府県の働く女性2909人を対象に実施された。回答者の内訳は、正規労働者が82.9%、非正規労働者が16.0%だった。

 それによると「過去に流産を経験したことがある」と答えた人の割合は23.2%で、おおよそ4人にひとり。ちなみに日本産科婦人科学会のホームページによると、一般に妊娠の15%前後が自然流産するといわれている。

 今回の結果は、前回調査時(2011年)の24.4%よりはやや減少しているが、平均に比べると高い数字だ。

 流産経験者612人のうち、124人が2回流産、40人は3回以上流産していた。職種別では「販売・店員」(29.7%)、「外交・営業」(25.9%)が比較的高かった。また、「妊娠中の経過が順調ではなかった」と答えた人は全体の66.1%。

 内容は「つわりが重かった」「切迫流産(妊娠22週未満で出血や痛みを伴い、流産しかかっている危険な状態)・早産を経験したことがある」「むくみがあった」などだ。

 とりわけ「切迫流産・早産を経験した」と答えた人は27.5%にのぼり、職種別では「看護師」が37.4%で最も多かった。

「仕事をやめなかったから流産」と自分を責めかねない

 ただしこの発表では、回答者が何歳で流産を経験したのかがが明らかにされていない。

 一般的な流産率は確かに15%ほどだが、年齢別にみると35歳を過ぎる頃から増加し、35〜39歳では20%、40歳以上になると40%以上の妊娠が流産に終わるとされる(参考:日本産科婦人学会 日産婦誌52巻9号)。

 特に妊娠初期の流産は、受精卵の時点で染色体異常があって起きるケースがほとんどで、防ぎようがないものだ。従って、流産を経験した人の年齢分布や月齢を分析することなく、一概に「仕事を持つ女性の流産率が高い」と言ってしまうのは早計だろう。

 こうしたデータの扱い方は、働く女性が「私が仕事をやめなかったから流産してしまった」と自分を責めることにもつながりかねない。
「なかった子だと思えば気落ちしない」だと!?

 とはいえ、日本の労働環境が妊娠した女性に対して十分にケアできているかといえば、実態はまったくそうではない。厚生労働省の「働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定」の周知度が低いことも問題だ。

 たとえば、妊娠中の休憩時間の延長・回数の増加措置については、64.5%が「知らなかった」と回答。また、ラッシュアワーを避けて通勤できるようにする勤務時間の短縮措置も、38.2%が「知らなかった」と回答した。

 さらに、正規・非正規の雇用形態にかかわらず、すべての女性が取ることのできる産前休業(産前6週)を、「6週間未満しかとれなかった」「とらなかった」理由として、「職場の都合で請求しなかった」と答えた人は13.8%にのぼった。また非正規女性労働者の23.2%が「制度自体を知らなかった」と答えている。

 妊娠中に女性が利用できる制度の認知度の低さや、全労働者に保証されている休業の取得が不十分である実態は明らかだ。

 加えて、ここ数で年浮上してきたのは「マタニティハラスメント」の問題だ。

 職場に妊娠を報告すると「子どもが第一」という価値観を押しつけて退職を迫ったり、長時間働けないのにわざと上司が長時間労働を強制したり、同僚からいじめられるといった「マタハラ」の被害を受けている女性が少なくない。

 妊娠・出産を理由とした不利益取扱いは、男女雇用機会均等法で禁止されているのにもかかわらず、依然として法律より慣例を重視する職場が多い。これでは働く女性が安心して妊娠・出産できる環境はほど遠い。

 全労連調査の回答者のフリーコメントには「妊娠中、夜勤勤務中に出血。(中略)腹痛も強く翌日勤務ができない可能性を伝えたが交代がいないと言われた。流産した後、『なかった子どもだと思えば気も落とさなくてすむ』と言われた」という、痛ましいケースもあったという。

 先月3月29日、均等法&育児介護休業法等の改正案が参議院善意会一致で可決・成立した。これにより、2017年1月1日から「マタハラ防止対策」が企業に義務化されることになる。

 こうした法整備を通じて、政府が掲げる「女性の仕事と暮らしの両立」を真に実のあるものとしない限り、出生率の向上は望めない。
(文=編集部)