日本代表とタイ代表   著者撮影

4月12日、FIFAワールドカップ2018ロシア大会のアジア最終予選(3次予選)グループ分け抽選会が行われた。6大会連続のワールドカップ出場を目指す日本はB組となり、オーストラリア、サウジアラビア、UAE、イラク、そして急激な成長で注目を集める「東南アジアの雄」タイと対戦することが決まった。

 
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日本は2次予選でもカンボジア、シンガポールという東南アジアの2カ国と同グループを戦ったが、ワールドカップ出場に直結するいわゆる「アジア最終予選」で東南アジアの国と対戦するのは史上初の出来事。最終予選はホーム&アウェイの総当たりで開催されるレギュレーションで、まずは9月6日にタイ、来年3月28日に日本を舞台にワールドカップをかけた日本対タイの真剣勝負が行われる。

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東南アジアの国々にとって、ワールドカップは遠い存在だった。歴史を遡れば1938年の第3回大会にオランダ統治時代のインドネシア(オランダ領インド)がアジア初の代表として出場しているが、それを除けば東南アジアからの出場はなし。それどころか東南アジアの国がアジア最終予選に駒を進めた例も2002年大会予選のタイが唯一で、同大会は日本と韓国がホスト国のため予選に出場していなかったことなどラッキーな面も大きかった。

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対して今回のタイは2次予選で中東の強豪であるイラクを抑え、堂々のグループ首位で最終予選進出を決めている。東南アジアの国が、正真正銘の「力」でアジアのファイナルラウンドに進んだ初の例と言えるだろう。日本と韓国をはじめとする東アジア勢と伝統的にサッカー強国がそろう中東、それに近年はオーストラリアやウズベキスタンらが絡んで上位争いを演じてきたアジアのサッカー勢力図に一石を投じたかたちだ。

 

DSC_0363著者撮影

タイの躍進は、偶然の産物ではない。経済の成長にあわせてここ数年、タイのスポーツ界は目覚ましい発展を遂げてきた。バレーボールやバスケットボールなどこれまでタイでは存在感の薄かった競技でも本格的な国内リーグが誕生し、オリンピックでも2000年代に入ってからは回を追うごとにメダル数が増えるなど国際舞台での活躍も目立つようになった。なかでもサッカーは、急成長するタイのスポーツ界のシンボルともいえる存在だ。

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サッカーのタイリーグも、2010年頃から大きな成長を遂げてきた。リーグの規模が拡大してプロリーグとしてのステイタスが確立され、短期間で人気、実力ともに急上昇。近年、「タイ最強クラブ」の地位を不動のものにしつつあるブリーラム・ユナイテッドはアジアトップレベルの大会でも存在感を見せるようになり、実力の上昇にともなってイングランドのプレミアリーグに集中していたファンの関心も次第に自国リーグにも向けられるようになった。

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世界最強を誇るセパタクロー(足で行うバレーボールのような競技)が文化として根付いていることもあり、タイはもともと足を使う競技には強さを見せる。歴史を振り返ればサッカーも、実はかつてオリンピックに2度出場(1956年メルボルン大会と1968年メキシコ大会)するなど実績を残してきた。もともと一定の基盤があったところに国の発展にともなうスポーツ文化の開花が重なり、今回のワールドカップ予選における躍進は生まれた。

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アジア2次予選では、タイ以外にも東南アジアの国々がこれまでとはひと味違う輝きを見せた。現在、東南アジアではタイに次ぐ実力国であるベトナムや代表強化に力を入れているフィリピンなどが一定の結果を残し、かつてはアジアトップレベルのサッカー強国だったミャンマーや、育成に力を入れるカンボジアなども今後の躍進が期待される。こういった国々が近い将来、タイに続く可能性は大いにあるだろう。

タイのワールドカップアジア最終予選進出は、経済の成長とともに東南アジアに豊かなスポーツ文化が花開きつつあることの最初のシグナルかもしれない。

 
(text & photo : 本多 辰成 )

 

スポーツコラム「スポーツが繋ぐ! 東南アジアと日本の新時代」
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