医師への「袖の下」をめぐる率直な告白が波紋を広げている(写真はイメージ)

写真拡大

50人の「名医」がテレビ番組で明かした医療現場の内実が、大きく波紋を広げている。出演した医師の実に9割以上が、いわゆる患者から現金などの「袖の下」を受け取ったことがあるという内容だ。

医師が実名・顔出しで、その感想を語るという珍しい内容で、そのあまりにも率直な告白に、医師としての倫理観を疑問視する声も続出している。

「カステラと同じ感覚のものは受け取る」

波紋を広げているのは、2016年4月11日夜にTBS系で放送された「直撃!コロシアム!!ズバッと!TV」。「がんの名医50人が明かす新事実!」と題して、約2時間にわたって医師50人が手元のスイッチを使いながら様々な質問に答えるという内容だ。例えば

「バリウムのレントゲン検査はあんまり効かない」

という質問に対しては42人がボタンを押して賛同する、という具合だ。番組では、検査の精度の低さを指摘する声が相次いだ。

しかし、最も注目を集めたのは、番組中盤に放送された「患者から袖の下をもらったことがある」という質問だ。46人がボタンを押し、医療ジャーナリストで内科・婦人科医の森田豊医師は「相場」について

「病気によりますし、大学病院の教授となると、ガンだと20、30、50、100(万円)とかって言うのは聞いたことありますね」

と解説。としま昭和病院の神田橋宏治医師は、

「言っておかないといけないと思って言うんですが、お金1円も出さなくても本当にいいですから。借金してお礼を持ってくる人もいるんですよね。そういう人からは絶対にもらいません」

と断りながら、金銭的に余裕のある人からは受け取る傾向があることを明かした。

「皆さん方(スタジオ出演者)ぐらいだったら1万円ぐらい」
「お礼って言って、カステラを持って来るのと同じ感覚のものは受け取ります。だけど、それが10万になると微妙だし...」

看護師が目を離したすきにカルテの間に茶封筒を挟み込む

番組では、医師へのアンケートをもとに「袖の下は、こうやって渡してくれれば有り難い」というコーナーまで登場。回診の際に看護師が目を離したすきに(1)カルテの間に茶封筒を挟み込む(2)医師のポケットに入れる、といった「手口」が紹介された。「感謝の気持ちを込めて手紙を書いてきました。自宅でじっくり読んでください」などとして患者が医師に手紙を渡し、その中に紙幣を忍ばせるといったやり方も喜ばれるという。

おおたけ消化器内科クリニックの大竹真一郎院長は、

「あるある。看護師さんの前で渡されると、やっぱり『先生受け取ってる、私らもらってない』となるので、やっぱり受け取れない」

などと納得した様子。

パークサイド広尾レディスクリニックの尾西芳子医師は

「白衣を着ているとポケットに知らない間にスッと入れられていることがあるので、手術の後とかに深刻な話をしにいく時は、白衣を着ないで、ポケットのない服をきて行くようにしている」

と内情を明かし、聖マリアンナ医科大学病院の高田女里は

「入れられたら断れないので、『ありがとうございます』と、素直に受け取ります」

と、率直な感想を述べた。

番組の中で異色だったのが順天堂大学医学部付属順天堂病院の高橋和久副院長で、

「基本的にはお断りするようにしている。寄付という形で研究目的に、ということで医局に入れていただいたりすることはある」

と話していた。

ただ、あくまで質問は「袖の下をもらったことがある」という過去の経験を問うもので、「今でも袖の下が日常的に横行しているかどうか」については、番組内で明示的に議論されることはなかった。

医師が公務員だった場合には収賄罪に当たる可能性との見方も

こういった率直な声には、異論も続出している。例えばプロフィールで「お医者さん2年目」と自己紹介しているツイッター利用者は、

「患者さんからの謝礼が慣習として当然のものなような(原文ママ)印象を与える浅はかな編集で、それを信じた患者さんたちが無駄なお金を払うことになると思うと、本当に余りの無責任さに怒りがこみ上げてくる」

と憤り、ツイートは5000回以上リツイート(転送)された。

甲南大学法科大学院教授で弁護士の園田寿氏は、ヤフーの個人ニュースコーナーに「がんの『名医』たちの情けないほどの倫理観のなさ」と題した記事を投稿。医師が公務員だった場合には収賄罪に当たる可能性を指摘した。この記事は、4月13日18時30分時点で、「個人ニュース」でアクセスランキングの1位になっている。