「僕はああいうところに飛び出すことはあまりない」。自身でもそう分析する同点ゴールは、結果にこだわる強い気持ちが生んだものだった。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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「結果を残さないと次はない」
 
 野津田岳人は悲壮なほどの覚悟を持って、練習試合の清水戦に臨んでいた。アジア最終予選前に、右膝内側側副靱帯を損傷(全治8週間)し、五輪出場権を懸けた決戦のメンバーから落選。復活後も広島でポジションを奪えず、ポルトガル遠征にも招集されなかった。

【U23日本代表PHOTO】トレーニングマッチ U23日本代表1-1清水

 悲願である国際大会出場へのアピールの場を求め、生まれ育った広島を離れて新潟への移籍を決断しただけに、今回の静岡合宿はある意味で“ラストチャンス”だったのだ。
 
 後半頭から右サイドハーフに入ると、精力的にフリーランニングし、積極的にゴールに向かっていく。

 迎えた70分、左サイドの約30メートルの位置でFKを得ると、清水のゴール前にスペースを見つけた野津田は、すかさずペナルティエリアに侵入。キッカーの鎌田からスルーパスを受け、飛び出してくるGKの動きを冷静に見極めて、ゴール右隅にシュートを突き刺した。
 
「(後半に入って)相手の足が止まってきた部分があったので、隙があるかなと。スペースがあったところに走り込んだら、(鎌田)大地が良いボールをくれた。大地がフリーだったし、アイツはしつかり見てくれている。あとは落ち着いて流し込むだけだった」
 
 逆に受け手の野津田に対し、鎌田も「あれは僕というか、岳人くんが切り替えて良い動き出しをしてくれたから」と話す。
 
 野津田と言えば、左足の強烈なキックが武器だ。本来ならば、鎌田に代わってキッカーの位置に立っていても不思議はないが、“ゴールへの欲”が身体を動かしたという。
 
「確かに、僕はああいうところに飛び出すことはあまりない。でも、今日は特にゴールが欲しかったし、だから自然とああいう動きができたと思う。もっとシュートを狙っていきたかったけど、まずはゴールに向かって積極的にプレーできたのが良かった」

 野津田は昨年11月の佐賀合宿でも、鳥栖との練習試合でスーパーゴールを決めている。その直後、手倉森監督は「岳人は(アピールの)大事なところでゴールを決める。アイツは“持っている”」と話していたが、再び与えられたチャンスで結果を残し、試合後にはまた指揮官から“持っている”との言葉を受けた。
 しかし、ゴールを決めたからといって、次の代表招集が保証されたわけではない。

「どれだけ結果を出せるかで、自分が次に呼ばれるかが懸かってくる勝負の合宿だと分かっていた。そのなかで自分の存在を示すためにも、自分の良さを出して行こうと。久しぶりに代表に来て、ゴールを取れたのは自信になるし、まずは良かった。でも、自分の課題はしっかり結果を出せるか。『チームを救う』部分でももっとこだわらないといけない。そこは今日ひとつ出せたけど、勝ち越しゴールを奪えるようになっていきたい」
 
 野津田はU-17ワールドカップ、U-20ワールドカップの舞台を経験していない。それだけに、世界大会への想いはひと一倍強い。
 
 まだ見ぬ「世界」に挑戦するために――。「なんとしても(五輪のメンバーに)選ばれて活躍したい」と力強く語ったレフティは、残り4か月必死にアピールを続ける覚悟だ。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)