蒲田初音鮨 鮪

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誰もが魅了されてしまう蒲田に佇む劇場型のお寿司屋さん。

【写真】こんな寿司食べたことない! 驚きの「寿司劇場」フォトギャラリー(39枚)

一度は行ってみたいと思っていた、蒲田の「初音鮨」さん。一歩足を踏み入れると二度とは抜け出せない、想像を超える感嘆と至福の2時間が待っています。

その初音鮨は、JR蒲田駅西口から東京工科大に向かって歩くと、大学敷地のすぐ目の前に。

瀟洒な蔦のからまる洋館なので、一見するとフレンチレストランかな?と思ってしまいますが、右脇の風情ある灯篭を目印に暖簾をくぐります。

入るとそこには、なんとも素敵な待合いの空間が広がります。その季節と継承を大切にしたしつらえのひとつひとつを拝見しながら、その日相席になる方々との会話を楽しみつつ、待っている時間も初音鮨ならではの素敵な時間です。

こちらは以前は客席があったそうです。今のお寿司のスタイルに変わってから、待合いの席にななりました。だからこのような贅沢な空間が生まれたのですね。

飾られている大皿は、井戸に投げ入れて逃げる事によって戦火を免れたという、貴重なものだそうです。ひとつひとつにストーリーがあり、少しづつそんな話を聞かせて頂ける空間でもありますね。

そして、笑顔の美しい女将にいざなわれ、入り口で靴を脱ぎ、いざ、鮨劇場へ。

迎えて下さるのは、蒲田で4代続く初音鮨の大将、中治勝さん。ここから中治さんの江戸っ子口調のひとり舞台が始まります。まるで落語の枕を聞いているかのような楽しい楽しい時間なのです。

そして、寿司が進むにつれて、話が進むにつれて、自称「変態」の寿司職人・中治勝の“寿司科学”が、惜しげもなく披露されていくのです。

*落語の枕…落語の本編に入る前の導入としての話

まずは合わせたての赤酢のすし飯の味見で幕が落とされます。

お米の甘さを最大限に引き出すことによって、砂糖を一切使っていないというすし飯。この合わせたてから、すし飯の変化と、その変化に合わせたネタとの妙味を味わって頂きたい、ということで、シャリの味見から始まるのです。

そしてつまみはなく、いきなりにぎりで始まります。

小肌から始まりました。本日の小肌は富津勝田のもの。

しっかりと仕事がされているのに、ふんわり柔らかくまろやかです。酢に骨の旨みが溶け出る事による美味しさなんだそうです。1貫目から既に中治勝ワールドに魅了されます。

お酒は純米吟醸の墨廼江から始まります。女将かにぎりに合わせてピッタリの日本酒を合わせてくれるのですが、またその合わせが絶妙なのです。

2貫目は牡蠣。陸前高田の牡蠣バカ三代の牡蠣を、最高の蒸加減で頂きます。

火加減が申し分なく、甘味と旨みが口の中で爆発します。

平目は千葉竹岡の2.7圓如塩干し熟成5日目のものです。

切り身に縁側と肝を挟んで握られます。今思い出してもよだれが出ます。

平目スープも頂きました。

ここで鮪の準備が行われます。今日は長崎県壱岐の106圓世修Δ任后

大将の使っている刀のような包丁ですが、よく鮪を解体する時に、刀より長いような包丁をテレビなんかで見かけますよね? 大将の包丁は、20年くらい使ったその鮪包丁を仕立て直したもので、鮪屋さんからプレゼントされたものなんだそうです。

「ただより高いものはない、この包丁で鮪を切ると厚く切れるので、喜ぶのはお客さんと鮪屋てなもんで」と冗談を交えながら。でも惜しげもなく出してくれる鮪の量、この量は他では経験がないですね。

赤身、中とろ、大トロと切り分けられて、黒塗りの箱で室温に戻され後ほど生で握られ、もうひと組は漬け用に。

なので鮪は都合6貫頂く事になります。

4貫目は蛤。

千葉九十九里産を潮仕立てで。季節ですね、旨みがあって、サクッとした食感と柔らかさを持ち合わせていて美味しいです。

鰆です。これも他では食べた事がない素晴らしいお仕事です。宮崎の活けじめの神経を抜いて、塩水でひいて、12日間熟成させたものだそうです。生ハム的な凝縮された旨みを楽しめます。

「背に腹はかえられねえってんで…」と、背の部分と腹の部分とを合わせて握ってくれます。

6貫目は三浦半島小柴の天然鰻。

定置網にかかったそうです。白焼きで。

鰻自身の脂でこんがり焼けていて、切るとザクザクと包丁の音がします。

さて、先ほど準備していた鮪の赤身の登場です。生と漬けの両方で食べ比べです。

そうそう、ここで初音鮨さんの食べ方の流儀と、自ら“変態”と称する大将たる所以を説明しておきます。

こちら初音鮨さんでは、大将から手渡しでにぎりを渡されます。

それを人差し指で受け、親指と中指で両脇から支えて首を返して舌の上にネタが着地するように口に放りこみます。口を大きく開けて、ちょっと顎が上がった状態がベストです。

そして5秒間待ちます。噛んではいけません。口の中で魚のエキスが出てきて唾液と混じり、丁度良い温度で美味しさを味わうというわけです。早く食べたいという衝動に駆られてもじっと5秒間は耐えなくてはいけないのが、初音鮨での流儀です。

ネタの温度、口の中で旨みを感じる温度、漬け醤油の温度、ネタを並べる大皿の温度、そして食べるタイミングまでをが計算しつくされた、自称“変態寿司おやじ”の究極の美味しさを提供する趣向とあいなります。


というわけで、こちらも流儀通り、赤身と赤身漬けを頂きます。

そして山梨の復活させた蔵のお酒、旦(だん)を合わせて。。

赤身の酸味とだんの酸味が丁度いい具合に調和します。合わせるとたまりませんね。
そうそう、ここで女将さんの卸してくれるわさびは甘味が感じられて美味しいんです。


何故か不思議と大将のより美味しいんですよ。(大将には内緒にしておいて下さい。笑)

中トロにいきましょう。

こちらも生と漬けの両方です。中トロが漬けだなんて! こんな贅沢許されるのでしょうか…。

ここから後半戦の11貫目。

天然虎ふぐの白子を炙りで頂きます。

口の中でリゾットです。中トロ漬けの後でもインパクト大です。

そして12貫目は高知のあおりいか2.7圓任后自家製のからすみと共に頂きます。

からすみがあおりいかの向こうに見えていい感じです。

間違いない美味しさ。そして合わせるお酒は寿司酒ともいわれる日高見で。

後半戦もいい感じです。

13貫目は初鰹。漬けで頂きます。

14貫目に毛蟹が出ました! 1.5圓搬腓な毛蟹です。

こちらのネタは、全部その土地で取れた一番いいものが、例によって自称変態おやじの手によって集められているので、最高に美味しいものばかりなのです。

蒸しあがった毛蟹は、大将が包丁で切れ味よくさばきながら、反対の端で女将が一生懸命ほぐしてくれます。

二人三脚で仲睦まじく、おふたりのコンビネーションはいつお伺いしても完璧です。

毛蟹は味噌と共に握ってくれます。

その蟹の量と言ったらすごくて、2貫に分けてもらってやっと口に入ります。

口の中での5秒が待てません。既に蟹汁でいっぱいです。こんなに蟹を頬張れるなんて! 至福の時ですよね。

16貫目は大トロの生。もちろん口の中でとろけます。

近畿大学の調べによると、鮪の体温は28℃が平熱だそう。その温度などを計算して、最高の状態で握られるのだから、とろけるのは当たり前ですよね。

そしてさらに大トロ漬け炙り。まるでチャーシューのような姿。

大トロを漬け? 炙りで? 贅沢過ぎてばちが当たりそうです。でも口福ですね。

この後、先ほどから食べて来た6種類の鮪の太巻きです。もう完全に昇天しちゃいます。

また海苔との相性が抜群で、シャリもぴったりの状態です。この太巻きはセンセーショナル。

初音鮨さんでしか味わえない鮪六種の太巻き。ご馳走さまです。

と言っても、まだ干瓢と〆の玉子焼きがあります。

安定の美味しさの干瓢巻き。

そしてケーキ? カステラ?と 思ってしまう玉子焼き。

なんかどんどん進化しているような気がします。これぞ逸品の玉子焼き、これが寿司飯と合わさるとなんとも言えず更なる美味しさを醸し出すのですが、もう食べられません。お腹が一杯です。(笑)

こちらの初音鮨さんは126年・4代続く歴史あるお店です。蒲田の地には大正時代になってから、そして4代目の中治勝さんは独自のスタイルで今なお進化中。進化中の理由は、毎回新しい驚きがあるから。

ご夫婦おふたりで仲睦まじくお店を切り盛りされる姿に、魅了されるファンの人が多いのも納得のお人柄。

かなり詳しく書いてしまったので、ここまで読まされると行く楽しみが…と思われた方もいらっしゃるかと思いますが、ここまでお読みになっても、感動と至福の時を過ごせる事請け合いです。私はこの記事を書きながら、自分の唾液でおぼれそうになりましたから(笑)。

ぜひ一度、蒲田『初音鮨』で、“変態親父・寿司劇場”をご体験下さい。
詳しい情報はお店のFacebookでご確認を。