キャプテンの遠藤が不在のため、これまで以上にリーダーシップの意識は高い。練習中にもチームメイトへの声掛けや初招集の選手への声も欠かさなかった。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 今回の静岡合宿には、U-23代表キャプテンの遠藤航がACL出場のため、副キャプテンの大島僚太が故障明けのため、ともに姿を見せていない。となれば、守備陣の柱としてチームを支えてきた岩波拓也に、先導役を期待してしまう。本人もリーダーシップは先述のふたりがいる時以上に意識しているようで、「自分の立ち位置を考えても、リーダーの自覚を持ちながらプレーしたい」と力強く語る。

【U-23日本代表PHOTO】 トレーニングキャンプ@静岡
 
「静かな選手が多いなかで、俺は本当にいろんな選手とコミュニケーションが取れる。そういう意味で、今回初めて来た選手たちが良い形で入れるように助けたい。ゲーム形式の練習をして、細かい部分もだいぶすり合わせができてきた。彼らもみんなJリーグで結果を残して集まってきているからそこまで差はないし、逆に対戦して良い選手だなと思う人が来たり、チームの競争意識も高まっていてすごく良い感じだと思う」
 
 ステップ&スプリントのメニューで、ハードル機材をすべて倒してしまった三竿健斗に「おい、おい、ふざけるなよ!」と話しかけて笑いを誘えば、戦術練習ではパスミスを犯した際に前線の選手に「ごめん!」と大声で謝る――。合宿2日目のこの日も、チームの中心には岩波がいた。その背景には、所属する神戸が好順位(現在リーグ5位)につけている充実感と、クラブで活躍しているCBのライバルたちへの対抗心があるという。
 
「自分が今争っているCBを見ると、(植田と奈良が)J1で結果を出して上位にいる。今は俺自身もリーグで調子がいいけど、彼らの活躍が刺激になって良いパフォーマンスが出せていると思う。刺激を受けながら、でもふたりには絶対に負けたくない。キャンプは期間が短いので、なにか良いプレーをするというよりも、安定して(失点を)ゼロに抑えたい」
 五輪までの期間をどう使っていくか、と問われたなかで、岩波は「今のままでメダルを取れるかと言われればたぶん無理だと思う」と現実を見つめる言葉を口にした。ただし、それは悲観的な意味ではなく、残り約4か月の月日を無駄にせず、レベルアップのために費やしたいという意思の表われだ。
 
「(3月の)メキシコ戦に勝った後、(抽選のPOT3にいる)ポルトガルの試合を観ましたけど、ポルトガルはメキシコ以上で、上には上がいるなと思った。ああいうレベルが世界のスタンダードというか、監督がいつも言っているレベルなのかなと。
 
 アジアチャンピオンになって自信がついたとはいえ、俺たちもこのまま世界に行くわけじゃない。もっと一人ひとりがレベルアップして臨まないと。5月にはガーナのA代表と対戦しますけど、日本での試合なので負ける姿は見せられないし、その後にはトゥーロン(国際大会)もある。そこに向けても良い形で、明日の清水戦、そしてJリーグの試合に臨みたい」
 
 岩波の胸の中には、アジア最終予選で五輪出場権の懸かった準決勝に出られなかった悔しさが今も秘められている。それは、大会優勝の喜びをも上回るほど、岩波にとってはショッキングな出来事だった。だからこそ、「その悔しさを五輪で晴らしたい」と高らかに宣言する。

「自分の道は自分で拓いてきた」と語る岩波は、夢の舞台である五輪に向けて、走り続けるつもりだ。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)