土足のわが家は、床の上で寝ちゃダメよ(イラスト・サカタルージ)

写真拡大

オトコのひそかな楽しみ。最近では「ひとりエッチ」などと軽やかに呼ばれるが、度が過ぎた方法で行なうと怖〜い症状に陥るおそれがある。

生身の女性の膣の中でイクことができない「膣内射精障害」になる。治すのが難しく、最近いい治療薬ができているED(勃起障害)より深刻だという。

激しい圧迫感から得られる刺激が危険すぎる

オナニーには様々な都市伝説がある。「オナニーをし過ぎると頭が悪くなる」「......ハゲる」「......皮膚が黒くなる」などだが、泌尿器科の専門医のサイトをみると、「いずれも科学的な根拠がない。適度なオナニーは体によいので安心してやっていい」と勧めている。「オナニーをしないと古い精子がどんどんたまるし、勃起神経は使わないと退化するためEDになりかねない」というわけだ。

「それなら、心配する必要ないジャン!」という反論が聞こえてきそうだが、オナニーの方法が問題なのだ。「いいオナニー、悪いオナニー」があり、専門家たちが一致して「危険なオナニー」と指摘するのが、通称「床(ゆか)オナ」と呼ばれる方法だ。ペニスを床や畳、シーツなどに押し付けたり、こすりつけたりするやり方だ。激しい圧迫感から得られる刺激が、女性の膣の中に挿入して得られる快感とはまるで別世界の強さだという。

泌尿器科医の小堀善友氏は著書「オトコの『性』活習慣病」の中で、その危険性について、次のように書いている(抜粋要約)。

【最近こんな男性患者が増えている。ある日、Aさんがやってきた。

Aさん「妻の膣の中でイケないんです」
私「オナニーではイケるんですか?」
Aさん「はい。膣の中に挿入はできるんです。途中で中折れするわけでもありません。でもイケないので、妻の方が痛みを訴えるようになりました」
私「勃起障害というわけではありませんね」
Aさん「はい。だから最近は妻に気づかれないようイッたふりをします。このままでは子どもができません。どうしたらいいですか?」

Aさんは「床オナ」の常習者だった。若い頃、間違ったオナニーに取りつかれた結果、膣内の刺激では満足できず、射精のメカニズムが発動できなくなってしまったのだ。「オナニーではイケる」ということも、「床オナ」ならイケるということだった。】

膣内射精障害が日本人の国民病になったわけ

2014年1月、日本家族計画協会家族計画研究センターが、約10万7000人を対象に調査した「日本男女のオナニーの実態報告」を発表した。それによると、20代男性の93.9%(30代は88.6%)、女性の66.1%(同53.6%)が日常的にオナニーをしていると回答した。「床オナ」については調査しなかったが、同研究センター長の北村邦夫医師は発表の場で、あえて「床オナ問題」にふれてこう警鐘を鳴らした。

「最近、日本では膣内射精障害が深刻な問題になっています。床オナの刺激に慣れてしまうことが、その原因の1つです。床オナは海外の様々な文献を探しても見つからず、日本固有の問題と言えます」

いわば「床オナ」は国民病というわけだ。日本には他国にない「家の中で靴を脱ぐ文化」があり、布団を敷いて寝たり、畳の上でゴロゴロしたりする。そこで「禁断の快楽」に目覚めてしまうらしい。

ある大学の泌尿器科の報告によると、男性機能障害で訪れる患者の約3割は膣内射精障害だという。この中には、なかなか射精しない「遅漏」と呼ばれる人も含まれるが、他の国では勃起障害と早漏が男性機能障害のほとんどを占めることを思うと驚くべき数字だ。

「EDなら治療薬で解決できるが...」と専門家

膣内射精障害は、どんな女性ともダメな場合もあれば、特定の相手とだけダメな場合もある。治療するのは非常に難しい。男性不妊治療が専門の岡田弘・独協医科大学越谷病院泌尿器科主任教授は、著書の「男を維持する『精子力』」の中でこう書いている(抜粋要約)。

「ED(勃起障害)なら治療薬でほとんど解決できるが、膣内射精障害の根はもっと深い。相手の女性にとっても深刻だ。『セックスしても気持ちがよさそうでないのは、自分に原因があるのかしら』と悩んでしまうからだ。また、子どもがほしいのにできないこともつらい」
「女性の膣の刺激に近いオナニーホールという器具(商品名・TENGA)を使う方法があるが、矯正できるかどうかは個人差が大きい。奥さんより、TENGAを愛してしまう人も増えている。悪いオナニーを矯正するには2年くらい時間がかかる。しかも全員が治るとは限らない。もしも子どもを望むのなら、人工授精という方法があることを知ってほしい」

「床オナ」の危険性については、お堅いNHK教育テレビ(Eテレ)の高校生向け番組「オトナへのトビラTV」(2014年7月17日放送)でも取り上げた。出演した泌尿器科医の岩室紳也氏が若い人にこう呼びかけていた。

「オナニーは手でしましょう! これからは弱い刺激のオナニーに慣れていきましょうね!」