松山英樹(24歳)の表情から、悔しさがあふれ出ていた。

 スコアカードを提出し、そのままテレビのインタビュー。そして、大会公式のクイックインタビューを終えると、松山は一旦、ロッカールームのあるハウスのほうへ向かって歩いていった。その刹那、右手で目頭をぬぐう素振りを見せた。

 それからしばらくして、日本人記者団の囲み取材のためにコース内へと戻ってきた。彼の顔には、涙をぬぐい取った形跡が残っていた。

 悔しいはずである。マスターズの最終日、3アンダーで首位のジョーダン・スピース(22歳/アメリカ)とは、2打差の3位タイで迎えた。日本人選手として、これまで見果てぬ夢だったメジャー優勝。それも憧れのマスターズで、優勝の可能性が非常に大きなポジションをつかんでいたからだ。

 にもかかわらず、前半の4番、5番、6番を、ボギー、ボギー、ダブルボギーとして、早々に通算3オーバーまで後退した。その後、8番、10番、13番でバーディーを奪ったものの、トータル「73」のラウンド。3日目を終えてイーブンパーの5位タイだったダニー・ウィレット(28歳/イングランド)が逆転優勝を飾る一方で、松山は通算イーブンパーの7位タイで終わってしまった。

 うっすらと光る涙を目に浮かべながら、松山は語った。

「スタートの1番ホールのティーショットは思いどおり打てて、フェアウェーの真ん中だったんですけど、次のショットが悪かったです。そこから......。でも、まだチャンスがあると思って何とか立て直したんですけど、12番からの、バーディー、イーグルが取れそうなパットをことごとく外してしまって......。ショットも、ショート、ミドルアイアンともに思いどおりにいかないケースが多くて......。悪いながらもここまでこられたことは自分でも評価してあげたいですけど、やっぱり悔しい」

 その悔しさは、自分ができるのにできなかった悔しさなのか、自分が足りない(技量を持っていない)からうまくいかなかった悔しさなのか、どっち? と質問した。

 すると松山は、前者だと応えた。

 マスターズで勝つためにこの1年間、松山は相当な努力を重ねてきた。体幹を太く、しなやかに鍛え、筋力アップ、持久力アップを図った。スイングも、特にパッティングはかなりレベルアップさせてきた。普通なら、嫌になるほどきついトレーニングや、ショット、パッティングの精度を高める練習を、これ以上ないほどこなしてマスターズを迎えたのだ。ゆえに悔しさは膨らむばかりだった。

「初日が始まる前までは、結構ショットもいい感じだったんですけど、試合になってからどんどん自分の思いどおりにいかないというか......。ミスは絶対に出ると思うんですけど、それにしても多すぎるというか......。ショートアイアンでミスしたりして、ちょっと自分が予想している感じではなかった。ロングアイアンとか、ドライバーでミスするのはわかっていたんですけど、そこはあまりミスすることがなくて、逆にアイアンで、ショートアイアンからミドルアイアンでのミスが多かった。それが、苦しかったな、という感じがありますね。

 ただ、この(過酷で、グリーンも超高速の)コンディションでもやれた、というのはよかった。昨年はすごくグリーンが軟らかくて遅いコンディションの中での5位でしたけど、今年はそういう感じではなく、風も吹いて、みんなが苦労するようなコンディションだった。それで、ここ(7位タイ)にいられたのはすごく自信になりましたね」

 3日目を終えて3位タイというのは、この1年間の進化だと思う。そして、その3日目を終えたときには、松山は公式会見場に呼ばれ、外国人記者団からもさまざまな質問が飛び交った。

 その中で気になったのは、「今季も米ツアーで1勝を挙げて、世界のトップランクに入っているから、自信がついたのでは?」という質問に対して、松山が「う〜ん......、自信はまだまだですかね。ただ、今こうして世界のトップランクの選手たちの仲間入りをしているんだな、と思うと、少しは成長したと感じています」と答えたことだ。

 いや、松山英樹は、少しどころの成長ではなく、今は押しも押されもせぬトップランクの選手だという自信を持つべきだと思う。今年のマスターズチャンピオンや、上位にはだかる選手たちとの差は、不確かな自信を確かな自信に変えるだけで埋まると思う。

 そうすれば、やがてメジャーでも優勝できる。そのポテンシャルは、ますます野太く成長していると思うだけになおさらだ。

 2016年マスターズが終わった。松山と、そして優勝を逃したジョーダン・スピースにとっては、残酷極まりない春だった。

三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho