孤独を妨げないように配慮された羽生結弦氏の情熱大陸を見て、風呂とかケツを期待した自分を痛切に反省するの巻。
「孤独」を妨げない程度に配慮された密着!

900回を迎える記念回となった10日のTBS「情熱大陸」。アスリートの貴重な素顔が見られる機会として、僕も楽しみにしている同番組ですが、900回記念回で採り上げたのは羽生結弦氏。僕は羽生氏の私物や本棚や食事風景、風呂とかケツとかが見られるのではないかと、やましい期待をしていました。

しかし、実際の放送は率直に言えば淡泊なもの。密着感は薄く、プライベートな風景はほとんど含まれないものでした。それもそのはず、衣装や前後関係から推測するに、今回の放送にあたって羽生氏に密着できたのは2回しかないのです。1月のニュー・イヤー・オン・アイス密着と、3月のトロントでの調整への密着。この2回だけです。

今回の情熱大陸は「3ヶ月間密着」ではあるけれど、ビッチリ3ヶ月張りついたのではなく、1月と3月の2回の取材日で集中して撮り溜めた映像に過ぎません。その意味では、メシだの風呂だのを撮っている余裕も密着感もあるはずがなく、プライベートシーンを期待したコア層にとっては物足りないものになったことは否めないでしょう。

ただ、そんな中でも、世界選手権後に明かされた怪我のことを羽生氏本人が事前に語るなど、貴重な場面はしっかりと含まれていました。むしろ「アスリート羽生結弦」としては、ケガの実態というトップシークレットを事前に明かしていたというのは驚くべきサービスでしょう。本来なら、どのメディアもシャットアウトして隠し通したいことなわけですから。

その上で「現実逃避」や「ボーッとする時間」、「孤独」である時間の大切さを、自分を保つために必要なものとして同時に語っている。これはつまり、アスリート羽生結弦はみなさんにしっかりと見せていくし、語るべきものは明かしていくけれど、そうじゃないときを残しておいてくれよというメッセージでしょう。風呂が見たいとかケツが見たいとか言っているオッサン自重せよ、そんなメッセージ。

その意味で、今回の情熱大陸は番組本来の主旨に立ち返る、よい内容だったのではないでしょうか。どこかのバカが風呂とかケツが映るのは当たり前かのようにカンチガイさせていたものを、軌道修正して高品質の番組に戻していくキッカケとさえ言えるかもしれない。情熱大陸は本来、風呂とかケツを映す番組ではない、アスリートの「情熱」の源泉たる苦悩や悔しさ、迷いや闘志を映していくものだったはずです。

僕もこのことを胸に刻んで今後の生活に励んでいきたいと思います。羽生氏と結婚とか同居とかができた際には、正直コチラのブログで「今日の愛情ご飯」とか「お風呂で見つけた意外なホクロ」とか「下着は手洗い」みたいな記事をアップしようと思っていましたが、それはナシだなと。それやったら、一発で離婚だし、そこを見せたらアスリート羽生結弦の邪魔なんだなと。もしもそういうことになったら、風呂もケツも僕が独占してしまうことになり大変恐縮ですが、どうぞみなさんもご自重いただけますようお願いいたします。

ということで、1000回、1100回、1200回と定期的に羽生氏を採り上げてもらうことを期待しつつ、10日のTBS「情熱大陸」をチェックしていきましょう。

◆寿司ネタも、怪我してるから赤身の気分なんだよね!

番組冒頭恒例の、情熱大陸のテーマ曲に合わせて手書きの署名が表示されるカット。900回記念を示す字幕と、いつもよりテンションの高いBGM。一発で書けたのか、何度も書き直したのかわからないけれど、羽生フォント誕生の予感すら漂う完璧な「羽生結弦」の署名。そして、その奥に輝く笑顔。記念回らしいグレードアップ感から番組は始まります。

ニュー・イヤー・オン・アイスのバックステージの模様。トロントでの練習風景。ほかのメディアの取材を受ける姿。断片的につながれる情報群。「好きな寿司ネタは何ですか?」「今の気分的にはちょっと赤身が食べたいかな」というやり取りには、そこはかとない情熱大陸的などうでもよさも感じます。

そこに被せられる「孤独ですよ」から始まる立ち話。周りの環境が自分の精神や肉体に大きく影響してくるから、それを遮断しないといけないと語る羽生氏。「ある意味で孤独にさせてもらいたい、むしろ」という言葉には実感がこもります。情熱大陸的には「やっべぇ、密着しっちゃった」と戦慄したかもしれませんね。

↓密着は1月の大阪から始まった!青のメガネに青のマフラー姿で羽生氏が情熱大陸に登場!

メガネ屋:「青いフレーム入荷しました!」
マフラー屋:「青いマフラー入荷しました!」
空港:「ここが羽生氏が通ったゲートです!」

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情熱大陸的には外すことができない車中インタビューもここでこなします。質問は「ボーッとしたいとか思いませんか?」という定番のもの。羽生氏は「オフの時間にはボーッとするし、現実逃避もするし。大丈夫です」との回答。ちなみに、現実逃避の内容は「音楽を聴いて熱唱」「ゲーム(※3DSのモンスターハンタークロス)の中に入り込む」といったところ。

しかし、そうした「現実逃避」の時間も本当に心からスケートが抜け落ちているわけではない模様。「ボーッとしている」とクチでは言う氷を離れている時間にも、「ふとした瞬間に生活の中で気がつくものがあり」「ちょっと使えるなと思ったものを、理論的に考えて、イメージして、上手くいったら氷上で試す」ことはあるのだとか。何のかんので24時間スケートな男です。

↓支えてあげたい、支えさせてほしい!全国に「羽生氏の民泊拠点」が誕生しそうな生活ぶりも明らかに!
羽生氏:「(大阪にきたら)明石焼き食べたいなーとかって思うんですけど」

羽生氏:「これまでの人生で2、3回しか食べたことないですね」

羽生氏:「しかもコンビニの(笑)」

羽生氏:「うん、でもなんか、いつもコンビニですね」

羽生氏:「大抵はコンビニか、ルームサービスか何か」

羽生氏:「そんな生活ばっかですね」


兵庫は明石焼き、大阪はたこ焼き、京都は八ッ橋、和歌山ラーメン、奈良は鹿煎餅、滋賀は琵琶湖だよ!

コンビニばっかりじゃメニューも限定されるから、ウチにきなさい!

クックパッド見て頑張るから!

ニュー・イヤー・オン・アイスではバックステージの模様にも密着。出番を待って身体をスイングさせたり、リンク上の出来事に手拍子や笑顔を見せたり、場内アナウンスに合わせて「フォー」したり。取り立てて目新しい場面ばかりではないものの、ピリピリするだけでなく、楽しく和気藹々とスケートと向き合う時間もあるというのは、番組的にもいいエッセンスになっていました。

↓でも番組では特に強調しない部分で、さりげなくスゴイ場面を映すぞ!練習で見せた4回転ルッツ!


ここを言わないあたりが、今回の情熱だな!

スゴイ技ですよー、とか言ったらコケてるのにバツが悪いもんな!

「認定」じゃなく「成功」するまで秘密です!

↓ショーを終えてホテルに戻った場面では、帽子姿の羽生氏も!

ココでプーさんの帽子とかで出てきたらドッカンドッカンなんだけどなぁ!

そんなイタズラの余裕すらないほどに、疲れ切った表情が絶対王者の多忙を物語る!

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つづいては3月、カナダのトロントへと取材班は移動します。ホームリンクで世界選手権への調整に励む羽生氏への密着です。しかし、いきなり不穏な雰囲気。それもそのはず、この時分にはのちに「左足の靭帯損傷」と発表されたケガの痛みが強まっていたのです。曲かけ練習の最中にも演技を止め、「くっそー」とうなだれるほどの状態。それでも、ホームリンクに掲示されたワールドチャンピオンの一覧に、自分よりあとにハビエル・フェルナンデスの名前があることを見て、自分を鼓舞し、奮起させます。

↓痛みを隠して戦うバックステージを、情熱のカメラには密かに目撃していた!
――今日、足を気にしてましたよね?ケガのことって放送終わったら言っても大丈夫なの?

羽生氏:「言わないかもなー」


羽生氏:「わかんない、その…言わないかもしれない」

羽生氏:「GPシリーズ始まる前から、ですかね、ちょっとずつ違和感を感じてたんですけれども…」

羽生氏:「まぁ、だんだん痛くなってって」

羽生氏:「まぁ、でも、今ちゃんと歩けてるし(笑)」

羽生氏:「ここまでしっかりやってきたんで」

羽生氏:「ホント、ありがたいです」

羽生氏:「(場所は)左足ですね、足、足首かな」

――自分って強い人間ですか?

羽生氏:「弱いです」

羽生氏:「めちゃくちゃ弱いです」

羽生氏:「弱いからこそそこで遮断しないとできないんですよ」

羽生氏:「強ければ、まわりが何を言おうと、まわりがどんな環境であろうと、関係なく自分を作り出せると思うんですよ」

羽生氏:「自分が作り出せない理由は、たぶん弱いからだと思うんですね」

――つらいときはどうやって乗り越える?

羽生氏:「あぁもう乗り越えようとしないです」

羽生氏:「つらいものはつらい、認めちゃう」

羽生氏:「つらいからもうやりたくないんだったら止めればいいし」

羽生氏:「それでいいと思ってます、僕は」

言わずに隠し通せる感じなら言わなかったんだろうね!

でも、もう取材対応もしんどいし、治療に専念したいから、「公の場に出ない理由」を正直に言うしかなかった、と!

ガンバレ男の子、負けるなケガに、負けるな自分に!

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そして迎えた世界選手権。結果はご存じのとおりですが、このバックステージの模様を踏まえるならば、あの怒りのワケも、あの「見たか!」の理由もまた違ったものに見えてくるでしょう。ケガへの不安、できない自分への苛立ちが重なる中で、それでも世界選手権でほぼ完璧なショートプログラムができたことの達成感。それ以外に「見たか!」の理由は浮かんできません。こんな試練に負けないぞ、と抗う姿としての「見たか!」。トロントでの姿からは、そのあたりがハッキリと浮かび上がってきます。

面白いリアクションをすれば、ヘンな解釈で対立を煽るような向きも多い昨今ですが、本人はいつも変わらずただ自分のスケートに向き合っている。「見たか、弱い俺」。「見たか、試練を与えるスケートの神」。見せつける相手は、いつも自分の内側にいる。情熱的な定番の名場面である「自宅訪問」「本棚チェック」「本日の献立」など生活臭が漂うものはまったくありませんでしたが、番組の本質である情熱の源泉はしっかりととらえられた。そこをとらえるに足るだけの密着はできたのではないでしょうか。

番組は最後にボストンの世界選手権にとびます。試合後にホテルを訪れ、結果を受けての密着インタビュー。荷物や私物をとらえないように配慮したカット割りの中で、羽生氏は「このままでは終わらない」と来季以降への誓いを立てます。敗戦の直後にも関わらず、激闘の直後にも関わらず、ほとばしる「情熱」。うむ、本当に見たいものは私物でも本棚でもメシでもなく、その情熱なのだ。爽やかな納得感の中で番組は幕を下ろします。

羽生氏がセルフコントロールに取り組むように、僕もまたセルフコントロールをしていきたく思います。この爽やかな納得感を大切に、風呂のことを心から追い出していくように。そうやって僕が自分を律することが、もっとも見たい「金メダル」とか「世界最高」とか「生涯最高」につながっていくことを信じて……!

今後もネンイチくらいで密着取材日を設定してくださいね!