中国のファーストレディ・彭麗媛氏のおかげで、日本の真珠が人気だ。写真は習夫妻。

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最近、香港の友人夫妻が訪ねてきて、「いま、香港では日本産の真珠が大人気で、なかなか手に入らない」とこぼしていた。このため、今回の旅行ではツアーの訪問先には入っていないが、真珠の産地である三重県の伊勢志摩国立公園などを訪れる予定だ。この部分は特別に旅行社に頼んで個人旅行にしてもらったという。

「どうして、それほどまでに、真珠にこだわるのか」と尋ねたところ、その答えを聞いて驚いた。

「習近平(シー・ジンピン)国家主席の奥さんの彭麗媛(ポン・リーユエン)さんが身に着けているのが、日本産の真珠なのよ」と奥さんが興奮気味に語る。真偽のほどは定かではないが、日本産のなかでも最高級品らしいのだ。

彭麗媛さんの日本びいきは結構有名だ。化粧品は日本の一流メーカーの最高級品を使い、バッグなどの身の回りの品も日本製とのうわさもある。

中国のファーストレディである彭麗媛さんは習主席の外遊にはほとんど同行。現地に到着すると、旅客機のタラップから、習夫妻が仲良く手をつないで降りてくる場面は必ず中国のテレビニュースで流される。

また、訪問先では夫人外交よろしく、現地の教育施設や医療機関、名所旧跡などをその国のファーストレディと一緒に視察する。その模様も中国のテレビで放映されるので、彭麗媛さんの洋服やアクセサリーは、いやがうえにも中国女性の注目の的となる。

とくに、習主席は昨年1年間で14か国を訪問しており、歴代の最高指導者のなかで最も多かっただけに、夫人の露出度も必然的に高くなる。

一昨年、彭麗媛さんが持っていたバッグは広東省の小さな工場が生産された「国産品」と報じられると、「さすがに中国のファーストレディだけある」と称賛され、そのバッグの値段が急上昇した。これほど注目度が高くなると、外国産の高級ブランドとすぐに分かるようなものは身に着けられない。

その点、真珠はピアスだと小さくて目立ちにくいし、ネックレスだったとしても、産地までは特定できないので装飾品としては便利だろう。その彭麗媛さんの真珠を「日本産」と割り出したのは、さすがに中国人女性の美に対する執着のすさまじさを感じさせる。

しかし、彭麗媛さんのおかげで、真珠の人気が高まってやはり「中国恐るべし」だ。爆買いの影響が真珠業界にまで及んでいるのだから。中国経済の減速をよそに日本から香港への去年の真珠の輸出は前の年に比べて40%増加し、過去最高の251億円に上っているという。

◆筆者プロフィール:相馬勝
1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。