日本の「最低賃金」は、低すぎる?

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執筆:井澤佑治(コラムニスト)

2015年7月に、厚生労働省が各都道府県の最低賃金と生活保護の水準に関するデータがされましたが、
このデータによれば、「最低賃金で働く人の手取り収入」が「生活保護の受給額」を下回る、という逆転現象は解消されているとのことです。

なんだか当たり前のことのようですが、「働く人の暮らしを守る」ためといわれるこの「最低賃金」と「生活保護」との整合性について、改めて考えてみたいと思います。

2014年に「逆転現象」が解消


2008年7月に施行された「改正最低賃金法」には、最低賃金を定める際には「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮する」と明記されています。
この法改正を受けて最低賃金は毎年引き上げられ、2008年に時給703円であった最低賃金の全国平均は2014年には時給780円となり、生活保護との「逆転現象」がようやく解消した形となりました。

「逆転は解消していない」という意見も


そもそも、この「逆転現象」が問題視されているのは、生活保護の受給額が最低賃金を上回ってしまった場合、受給者が「自立する意欲を損なうため」といわれています。
しかし、実際の金額を見てみると、逆転現象が解消したとはいえ、最低賃金が生活保護を上回っている差額は時給にして9円〜117円と極めて少ないものにとどまっているのが現状です(2014年度の最低賃金と、2013年度の生活保護で比較した結果)。

また、医療費の免除などの措置が受けられる生活保護と比べると、パートやアルバイトといった非正規雇用の場合は健康保険や年金なども手取り収入から支払わなければならず、こうしたことからインターネットなどには「逆転は解消していない」とする意見もあがっています。

日本の最低賃金は安すぎる?


2015年に経済協力開発機構(OECD)が27カ国を対象にまとめた調査によると、世界で「もっとも最低賃金が高い国」はオーストラリアで時給15.96豪州ドル(約1530円)。
以下、ルクセンブルグ、ベルギー、アイルランドとつづき、フランスが時給8.24ドル(約1020円)で5位となりました。ちなみに、連邦政府が時給7.25ドル(約897円)の最低賃金を設定しているアメリカは11位でしたが、州ごとに最低賃金の異なるアメリカでは、全米の州の半分は連邦政府の定める最低賃金を上回る額を指示しているとのことです。

非正規雇用者の待遇改善が課題


また、以前(2015年4月)に東京など国内30都市で、ファストフード店で働く若者らが賃金アップを求めるデモをおこないましたが、このデモで要求されていた待遇は「時給1500円」です。

この金額は、現在の780円という最低賃金からするとすいぶん高額に見えるかもしれませんが、必死で働いても生活がラクにならないワーキングプアや、低賃金で過酷な労働を強いられるブラックバイトなどの問題を考えると、「健康で文化的な最低限度の暮らし」をするためには、決してそれほど極端な要求ではないのかもしれません。

また、上記のような賃金に関することだけではなく、パート・アルバイト・派遣といった非正規雇用の労働者が増加しつづけている現在の日本においては、福利厚生などの面における正社員との格差の解消も、「働く人の暮らしを守る」ためには大きな課題といえるでしょう。
・参考資料
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/saiteichingin02/dl/04.pdf
(改正最低賃金法について 厚生労働省)
・参考ニュース
http://www.cnn.co.jp/business/35064591.html
(最低賃金の国際調査 CNN)

<執筆者プロフィール>
井澤佑治(いざわ・ゆうじ)
コラムニスト、舞踏家/ダンサー。通販メーカーのコピーライターとして、健康食品などの広告を数多く手がけたのちに、ダンサーとして独立。国内外で公演やワークショップ活動を展開しつつ、身体操作や食事療法などさまざまな心身の健康法を探究する。現在はダンスを切り口に、高齢者への体操指導、障がいや精神疾患を持つ人を対象としたセラピー、発達障害児の療育、LGBTの支援などにも携わっている。