男女雇用機会均等法の施行から30年。節目の今年4月に、働く女性をサポートする「女性活躍推進法」が全面施行された。安倍政権が掲げる一億総活躍社会の実現に向け、期待は大きいが課題も山積している。写真は国連難民高等弁務官などを務め、世界で活躍した緒方貞子氏。

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男女雇用機会均等法の施行(1986年4月)からちょうど30年。節目の今年4月に働く女性をサポートする「女性活躍推進法」が全面施行され、育成や登用に向けた行動計画の策定と公表が大企業に義務づけられた。安倍政権が掲げる「一億総活躍社会」の実現に向け、期待は大きいが課題も山積している。

女性活躍推進法は従業員301人以上の企業に、女性登用のための行動計画づくりを求めている。女性社員をどう育て登用していくか。現状を把握・分析した上で、行動計画と数値目標を届け出る必要がある。企業の行動計画などは厚生労働省の専用サイトにアップされ、認定されれば3段階の評価認定マークが各企業に付与される。

女性活躍の認定に当たっては、(1)採用(2)継続就業(3)働き方(4)登用(5)多様なキャリアコースなどの評価項目について判断する。認定企業は商品や広告、求人広告などの際にマークをつけることで、優れた企業であることをアピールできるという。

◆女性管理職比率は先進国で最低レベル

日本の生産年齢人口(15歳以上65歳未満)は2015年の7785万人が、60年には半減するとの厳しい予測もある。女性活躍推進法では、減少する労働力の新たな担い手として「女性の活躍」がクローズアップされた。女性が働き続けられる職場環境の整備が必要であり、長時間労働の縮減、育児休暇の拡充や保育所待機児童の解消など子育て環境の整備が欠かせない。

低迷する日本経済の立て直しに苦慮する政府にとって、「女性の活躍」は成長戦略の目玉でもある。管理職を増やすため「2020年までに官民の指導的地位に女性が占める割合を30%程度とする」という「2030(ニイマルサンマル)」目標を掲げたが、企業の課長クラスの女性比率は9.2%(14年時点)で達成は難しい。15年末に閣議決定した「第4次男女共同参画基本計画」では女性管理職の登用目標を「下方修正」。例えば課長相当職の目標値は20年で15%。「2030」を断念した格好だ。

このままでは「課長15%」の目標達成も難しいのが実情だ。多くの日本企業は女性社員の育成を怠ってきた結果、女性管理職比率は先進国で最低レベル。労働力人口が減る中で人材の有効活用は喫緊の課題で、企業にとって女性の活躍推進は重要な経営戦略にもなり得る。

◆「均等法」施行の30年前から進歩していない?

男女雇用機会均等法が施行されたのは1986年4月。この歴史的な転換点を前に、筆者は論考「『男女雇用均等法が変える日本的経営』―女性の職場進出で日本の集団主義的経営は崩壊する」(月刊文芸春秋1985年11月号)を執筆。当時の企業社会の実態を分析し、同法施行後の姿を7頁にわたって予測した。30年経った今、予測通りの点もあるが、「当時と変わっていない点も目立ち、あまり進歩していない」(社会労務保険士)のは否めない。拙文の冒頭と結びの一部は次の通り。官民のさらなる努力を望みたい。

<働く場での男女雇用完全平等をめざす男女雇用均等法が、86年4月から施行される。「国連婦人の10年」に因んだ婦人差別撤廃条約の批准条件となるものだが、男中心のわが国産業界にとっては“黒船襲来”にも比すべき大出来事。各企業は「降って沸いた」ようなこの法律に戸惑いながらも、採用、昇進から福利厚生、教育まで人事管理全般の見直し作業に着手した。
「均等法順守と企業活力維持を両立させるにはどうしたらいいか」を追求する過程で浮かび上がってきたのは、従来の集団主義的経営から個別能力主義的経営への転換である。男女雇用均等法は従来の日本式経営を大きく変えるインパクトを秘めているのだ。>
(中略)
<欧米諸国は、20数年も前から男女雇用均等を実施してきた。その環境整備や社内改革に当たり、各国の政府や企業は相当の負担を行っている。日本の政府や企業も、もっとこの面でカネを使ったり、ムダを甘受するなどして、「国際社会の一員」としてのコストを負担すべきであろう。
共稼ぎでウィークデーの日中働いた後あとは、残業や土・日の就労はできるだけ避け、充実した余暇を楽しむ――。これも世界で1、2を争う民間経済体制をつくりあげた日本人が進むべき一つの道かもしれない。
男女雇用均等法によって日本の男社会は、企業、家庭の両面から突き崩されることになりそうだが、それはいつの日か通らなければならない道のような気がしてくるのである。>(八牧浩行)