日本とフィリピンが防衛協力を進めている。日比両国が念頭に置いているのは南シナ海。領有権を主張して着々と軍事拠点化する中国のけん制が狙いだ。資料写真。

写真拡大

2016年4月9日、海上自衛隊の練習潜水艦「おやしお」が護衛艦2隻とともに3日、フィリピン北部・ルソン島のスービック湾に寄港した。日本の潜水艦の寄港は15年ぶりだ。南シナ海で広範な領有権を主張して傍若無人にも見える海洋進出を図り、比などと対立している中国。これに対抗して中国をけん制する日比防衛協力も着々と進んでいる。

日本は今年2月末、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国で初めて比と「防衛装備品・技術移転協定」を締結した。武器や関連技術を第三国に移転したり、当初の目的以外に使ったりする場合に輸出国の事前同意を義務付ける内容で、移転の前提になる。協定締結を受け、日本側は海洋監視用として比側が求める海自の練習機「TC90」5機程度の貸与を準備している。

これに先立ち、昨年5月には護衛艦「はるさめ」「あまぎり」が、マニラ西方海域で比海軍のフリゲート艦1隻と共同訓練を行った。日比共同訓練は初で、昨年4月に日米中やASEAN各国などで合意した海上衝突回避規範(CUES)に沿った通信・戦術訓練が目的だった。6月にも海自P3C対潜哨戒機が参加して比海軍との捜索・救難訓練を実施。中国が埋め立てを強行した南沙(英語名・スプラトリー)諸島に近い海域を訓練場所に充てた。

さらに、昨年9月22日から10月7日にかけて比西部のパラワン島や周辺海域で在沖縄米海兵隊と比海兵隊が共同で行った敵前上陸などの訓練に、オブザーバーとして陸上自衛隊幹部らを派遣した。パラワン島は南沙諸島のそばに位置し、米比両国は先月、同島の比空軍基地を米軍の拠点とすることで合意した。

今回の潜水艦派遣について、海自は「訓練航海の一環で、特定の国を意識したものではない」と説明する。その一方で、中谷元・防衛相は日比防衛協力に関して「南シナ海では航行の自由やシーレーン(海上交通路)の確保は重要であり、比とは共同訓練など地域の安定に資する活動に積極的に取り組んできた。今後も2国間や多国間での共同訓練などを行い、連携を進めていきたい」と述べた。同相は4月下旬には比を訪問し、練習機貸与などの調整を進める予定という。

潜水艦に同行した護衛艦「ありあけ」「せとぎり」の2隻は、その後、南シナ海の領有権を中国と争っているベトナム最大の軍港カムラン湾に向かった。海自のカムラン湾寄港は初めて。これにも中国をけん制する狙いがあるとみられる。

こうした中、4日からは米比両国軍の合同軍事演習「バリカタン」がマニラ近郊などで始まった。日本は今回もオブザーバー参加だが、米国防総省高官は「自衛隊が定期的に正式参加するようになる」との見通しを示した。

中国は日比防衛協力に当然、反発する。潜水艦派遣などが伝えられた3月初め、中国外交部の洪磊報道官は「国家間の協力は地域の平和と安定に資するものであるべきだ。第三国を念頭に置いたり、他国の主権と安全や国益を害したりするものであってはならない」と強調。「日本は第2次世界大戦中に中国の南シナ海の諸島を不法占拠している。日本が再び南シナ海に軍事的回帰をする動きを、われわれは高度に警戒している」と、逆に日本をけん制した。(編集/日向)