「障害者」という言葉を正しく理解していますか? 概念、法律、行政の視点から解説

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執筆:山本恵一(メンタルヘルスライター)
監修:岡本 良平(医学博士、東京医科歯科大学名誉教授)

障害者とは


障害は、身体や精神の器官が、遺伝的な先天的要因、あるいは病気やけがなどの後天的要因によって、その機能を果たせなくなっている状態です。
そのため、長期にわたって日常生活や社会生活に制約を受けている人を、障害者と呼びます。
障害者を理解し、共生していくにはどんなことが必要でしょうか?

障害の概念


1993年に改正された「障害者基本法」で、障害者とは「身体障害、知的障害または精神障害があるため、長期にわたり、日常生活または社会生活に相当な制限を受けるものをいう」と規定されています。
障害は次の3点から理解されてきました。

 機能障害(インペアメント)


心身のはたらきに機能的な異常があること。医学的概念

能力障害(ディスアビリティ)


機能障害のために生じた能力低下。歩くのが遅いとか、ことばが話せないなど

 社会的不利(ハンディキャップ)


上記二つから生じる社会的な不利益

障害者基本法では、障害の種類は大きく、身体障害、知的障害、精神障害の3つに分類されています。

 身体障害


身体障害者福祉法では「視覚障害」「聴覚・平衡機能障害」「音声・言語・そしゃく機能障害」「肢体不自由」「内臓機能などの疾患による内部障害」の5つがあります。
肢体とは両手・両脚のこと、内部障害は心臓や肺など重要な臓器や免疫が障害されている場合です。認定されると身体障害者手帳が交付されます。

知的障害


日常生活の知的行動に支障があって、知能指数が基準以下の場合に、知的障害者と認定されます。
根拠となる法令では、「おおむね18歳未満の発達期に遅滞が生じ、その遅滞が明らかであり、適応行動が困難であること」と3つの要件が基準とされています。

ですので、成人になって病気や事故など、あるいは、認知症などで知的機能が低下した場合は知的障害とはみなされません。
認定されると療育手帳が交付されます。

 精神障害


精神保健福祉法では、「統合失調症、精神作用物質による急性中毒またはその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患」と定められています。
アメリカ精神医学界の最新版「DSM-5、精神疾患の分類と診断の手引き」では、(神経)発達障害や神経認知障害群に属する「認知症」などが、新たな注目事となっています。認定されると精神障害者保健福祉手帳が発布されます。

障害者の数


厚労省発表の「全国在宅障害児・者等実態調査」(2011年)によると、身体障害者手帳所持者数は約479万人、療育手帳所持者約62万人、精神障害者保健福祉手帳所持者は約56万人と推計されています。
身体障害は70歳以上が約58%、知的障害は30代が20.5%、精神障害者は40代が20.9%と、もっとも多くなっています。

また、障害者手帳は持っていないが自立支援給付を受けている人は32万人、どちらも受けていないが、日常生活を送る上で生活のしづらさがあると推計される数133万人など、厚労省としては、「我が国の障害者の総数(推計値)」を約788万人(人口の約6.2%)とみています。ここには、軽度認知障害、軽度の適応障害、軽度発達障害は含まれていません。

障害者を取り巻く現在の環境


近年以降について言いますと、1975年に国連で「権利宣言」が行われ、人権の保護が謳われたこと。1981年を「国際障害者年」と宣言。2003年に障害者の自己決定・自己選択を尊重したいわゆる「自立支援」が構築。2002年からは、精神保健福祉サービスや精神障害者居宅支援事業などを、市町村が中心となって推進することになりました。

このように、障害者への支援は、お上主導の「措置」による入所型施設中心から、在宅・地域福祉サービスへと移行・促進されてきています。
これを受けて、障害者のニーズに合った福祉を合言葉に、NPO法人、ボランティア団体の活躍が活発になったことが、障害者へのケアやサービスの質や量を高めてきたと言えるでしょう。
現在では、12月3日が「国際障害者デー」、2004年から12月3日〜9日までを「障害者週間」と定められています。
オリンピックも身体障害者の「パラリンピック」や「スペシャルオリンピック(知的障害者のオリンピック)」が知名度を上げてきています。

障害者とのつきあい方


1976年に刊行された乙武洋匡さんの著書『五体不満足』は、障害は個性だという強烈なメッセージを私たちに与えました。
ともすると「日陰者」として、差別の対象として扱われてきた「障害者」。その人権については、なおも、多くのハンディを背負ってはいるものの、乙武氏のように、さまざまな分野で自立にむかって積極的に活躍する人が増えています。いわゆる「健常者」が、障害者と一緒に活動するなどして、障害者を理解し、一緒に生きていくことは、ますます重要になってくるでしょう。

ICT技術の発達などによって、最近ではバーチャルな手法で、障害者の疑似体験もできるようになりました。こうした技術の活用も、その理解や共生に役立つことでしょう。

障害者が自立を目指し、日常生活や職業生活を行いたいと願っても、ハンディキャップや偏見(差別)によって、まだ十分な活躍ができない現状もあります。バリアフリーな生活、雇用や就労支援、教育としての「特別支援」など、課題が多いことも忘れることはできません。

<執筆者プロフィール>
山本恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長