「吉祥寺だけが住みたい街ですか? 2」講談社/マキヒロチ/610円

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【連載】聖地巡礼さんぽ〜あの作品の街へ〜Vol.9

【写真を見る】おもちゃ問屋が多い蔵前エリアの中でも、象徴的な存在なのが「バンダイ本社ビル」

漫画や映画、ドラマなど、人気作品の舞台となった街を散策し、“住みたい街”としての魅力を深堀していく本連載。ここからみんなの“住みたい街”が見つかるかも?

第9回は、今回で3回目の登場となる「吉祥寺だけが住みたい街ですか?」の第2巻に登場した蔵前駅をピックアップ。物語は1話完結で、住みたい街ナンバーワンの吉祥寺に引っ越そうと物件を探しに来た人たちが、ある不動産屋に入るところから始まる。

今回、不動産屋に訪ねてきたのはカメラマン志望の女性。彼女はニューヨークでプロを目指すが、本業の仕事は少なくバイトの毎日に疲れて帰国する。そこで、都内に住むため吉祥寺で物件を探すが、不動産屋の双子の女性スタッフになぜか蔵前駅を紹介され、実際にある店やスポットを巡りながら意外な街の魅力に触れていく。

都民でもあまりなじみのない蔵前駅は、都営大江戸線と浅草線が走り、浅草は隣駅で歩いてでも行ける距離にある下町。しかし、取材時にすれ違った、この周辺で働いているおぼしきおじさんが「蔵前もオシャレな街になってきたな」と話していたりと、新たな街の動きも見え始めている。5月には浅草の一大イベント「三社祭」などが行われ、春の散歩にも最適な「隅田川」など、蔵前駅の魅力をスポットとともに紹介する。

■ 「バンダイ本社ビル」

漫画内でカメラマンの女性と不動産屋スタッフの3人が通りかかったのが「バンダイ本社ビル」。蔵前駅周辺は、バンダイのほか、エポックの本社もあり、浅草橋に続く江戸通りには、おもちゃや花火の問屋、人形屋さんなどが多く、「おもちゃの街」としても知られる。「バンダイ本社ビル」には、ビルの外にウルトラマンやパックマンなどの人形が設置されたキャラクターストリートがあり、一緒に撮影することも可能。ビルの外からでも、バンダイが作ったおもちゃなども見ることができ、どこかほっこりとした気分にさせられる。

「台東区駒形周辺の地域は、昔から玩具メーカーや問屋が集まっており、弊社も1950年の創業以来ずっと駒形周辺で営業しております。長く営業されている玩具問屋さんも沢山ございますので、歴史と風情を感じる街並を楽しんでください」(株式会社バンダイ 広報チームの石尾美香さん)。

■ 「MIRROR」

漫画内の3人が街を巡るなかで登場するのが、5年前は元々倉庫だったビルをリノベーションした飲食店ビル「MIRROR」だ。ここにオープンしたきっかけは、「地元の人に愛される店=街作りが活性化」というオーナーの意向で、実際にオーナーが街を歩き、このビルを見つけたという。

施設内には、「リバーサイドカフェ シエロイリオ」、卓球バーの「リバヨン」、ルーフトップバー「プリバード」の3つの飲食店が入る。ランチ前に訪問した取材当日は、「リバーサイドカフェ シエロイリオ」にオープンする前から行列ができており、カフェという業態にも関わらず、高齢者の夫婦、地元のママや家族連れ、近くで働く人、イヌを連れた人(イヌはテラスのみ)など、幅広い年齢層の人がカジュアルなビストロ料理を楽しんでいた。

例えば夜は「リバーサイドカフェ シエロイリオ」で食事をしたあとに、2軒目は卓球も楽しめるリビングスタイルのバー「リバヨン」や、少し大人の雰囲気でこだわりのお酒やシガーも扱う「プリバード」を利用する人もいるなど、一つのビルで二次会まで楽しめる使い勝手のよさも魅力だ。

「5年前にオープンした店ですが、今ではカフェの店主が毎年春に行われているお祭りに参加して、地元の人と一緒に神輿を担ぐようになるなど、地域と連動したイベントにも参画し、ようやく街になじめてきたのかなと思います」(ビルと飲食店を経営する株式会社バルニバービ PRESSの藤井菜央さん)。

■ 「ペリカン」

漫画の中で、不動産屋の双子のお気に入りで、3人がロールパンを食べたのがパン屋の「ペリカン」だ。1942年創業の老舗は、元々は都内のカフェや喫茶店にパンを卸していたが、2代目の頃から「パン屋は地域に根差した商売」と考え、小売りを始めるようになった。

通常のパン屋とは異なり、販売するのは家庭でよく食べられる「食パン」と「ロールパン」のみ。70年間変わらない昔ながらの製法で作る食パンは、1日400斤以上も売れる。いわゆる直売所のようなスタイルで、閉店前になくなることも多いので、買うなら予約がオススメだ。

「以前の蔵前は下町のような雰囲気でしたが、最近は街並が変わってきましたね。地元の小学校で、モノ作りで商売をしようと志す人のために、作業スペースを提供する試みを始め、そこで商売を軌道にのせた人たちが蔵前に店をオープンしているんです。鞄などの革製品、雑貨、家具などの店が増えており、若い人たちの力を感じますね」(ペリカン 4代目店主の渡辺陸さん)。

■ 「隅田川」

漫画内で帰国したばかりのカメラマンは、泊まる所がなかったので、外国人が多く宿泊する蔵前のオシャレなゲストハウスに一泊する。その翌朝、散歩がてらにふと訪れたのが「隅田川」だ。彼女は昔から川が好きで、ニューヨークにいた時もハドソン川をよく訪れていた。「隅田川」をしばらく見つめた彼女は、自分が日本に帰ってきた意味を見つけようと決心をする。彼女が川を好きなのは、人間の悩みさえも洗い流してくれるからかな、というのは漫画を読んだ時の記者の感想だが、川を眺めているとなぜか「前に進もう」と思う気持ちはどこか共感できる。

蔵前駅周辺の「隅田川」からは東京スカイツリーが見え、時折運航船が走り、川沿いも散歩しやすいようきれいに舗装されている。取材当日は、近くにある幼稚園の子供たちが散歩をしていたり、近所のおじさん二人がベンチに座って会話をしていたりと、のどかな風景が広がっていた。

お祭りが頻繁に行われる浅草が近いため、「祭りでよく見かけるお面を売っている店や、射的の景品用におもちゃ問屋があるのかな」など、散策しながら街の歴史に思いを馳せるのは下町ならではの魅力でもある。さらに、若い職人が新たな息吹を街に吹き込み、徐々に活性化され、新たな街が形成されている蔵前エリア。散歩に最適なこの季節に蔵前エリアを訪れ、新旧のよさが混在した街の魅力に触れてみよう。【東京ウォーカー】

第10弾は4月下旬配信予定