猫の糞などに棲息する寄生虫が原因か!?(shutterstock.com)

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 あなたの周りにこんな人はいないだろうか?

 普段は温厚な人柄なのに突然キレて怒鳴り出す。しかも一度ならず意外と頻繁に。それも前後の状況や脈絡に関係なく、あまりにも不釣り合いな爆発ぶりに周囲が唖然......。さらに1時間ほどで怒りが収まったかと思いきや、今度は猛省調に落ち込む――。

 そんな知人がいるとしたら、その意味不明にして不可解な激情の原因は「寄生虫」かも!? そして、当人が愛猫家であれば、その可能性はかなり濃厚かもしれない。

 衝動的に激怒する傾向のある人は、「猫の糞」などに含まれる寄生虫に影響を受けている可能性がる。最近の空前の猫ブームに水を差すような、そんな仰天報告が、米シカゴ大学のEmil Coccaro氏らの研究で示された。

全人類の3分の1が原虫に侵されていると推測

 Coccaro氏らの解析によれば、間欠性爆発性障害(Intermittent Explosive disoder:IED)の患者は、トキソプラズマ症の原因となるトキソプラズマ原虫の保有率が通常の2倍以上高いことが判明したという。

 この病は「間欠性」かつ「爆発性」と「性」の字が重複するあたりに、その特徴が読み取れる。つまりIEDは、頻回かつ衝動的に、状況と不釣り合いなほどの言語的、身体的な攻撃性を爆発させる精神疾患だ。いわゆる衝動制御障害の一種で、米国内の1600万人に症状が見られるという。

 一方、トキソプラズマ症(Toxoplasma gondii)とは、猫の糞や加熱調理不足の肉、よく洗っていない野菜の中に見られる寄生性原生生物(原虫)によって引き起こされる感染症である。

 ほぼ全ての温血脊椎動物(哺乳類・鳥類)が感染能を持ち、有病率に地域差があるものの、世界人口の約3分の1が感染していると推測されている。一般的には感染しても症状は少ないが、新生児や免疫不全患者では重症化の危険性が高くなる。
攻撃性の背景には性格や癖ではない可能性が

 Coccaro氏は「攻撃性の問題を抱える人は、単なる性格や本人の癖ではなく、なんらかの背景を持つ可能性がある。今回の研究でトキソプラズマ陽性の反応が認められた対象者は、怒り/攻撃性のスコアが有意に高かったのです」と語る。

 成人358人を対象とした研究は、「IED群」「IED以外の精神疾患群」「精神疾患のない対照群」の三派に分けられた。トキソプラズマ抗体陽性率の結果は、〃欧22%、群が16%、7欧9%。そして攻撃性・衝動性のスコアは、△と同程度だったのに比べ、,IED群は他派よりもはるかに高い数値を現わした。

 論文は「Journal of Clinical Psychiatry」3月23日号に掲載されたが、本研究は臨床試験ではないため、直接的な因果関係は明らかでない。また、Coccaro氏は「トキソプラズマ陽性の人が全員、攻撃性の問題を抱えているというわけでもありません」とも補足した。

トキソプラズマ症の予防法は?

 間欠性爆発性障害は男性に多く、男性ホルモンとの関連性や、幼少期の家庭内の劣悪環境(親のアルコール依存症/虐待/暴力など)が関係するとも見られている。後者の経験が思い起こされたり、無力感や状況を変えられない感覚に襲われると、突然、爆発したりする。

 原因となるトキソプラズマ症の予防法としては、調理時の肉は十分加熱し、野菜もよく洗うことを心がける。愛猫家として大いに気になる「猫の糞問題」については、屋内での飼育を優先し、糞には直接触れない注意が必要と専門家は助言する。

 たかが糞、されど糞。愛しい猫対応の不注意で感染症まっしぐら......では、ニャンとも笑うに笑えない。
(文=編集部)