女性は救命処置を受けにくい?(shutterstock.com)

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 もし目の前で誰かが心停止を起こして倒れたとしたら、あなたはためらいなく救命処置を行うことができるだろうか。もし、それが異性だった場合は......。

 以前、意識のない女性に自動体外式除細動器(AED)を使おうとして服を切ったら、「痴漢呼ばわりされた」という体験談がネットで話題になったことがある。

 真偽は定かではないが、救命のためとはいっても公衆の面前で胸をはだけられたくない女性は多いだろう。その点の配慮は確かに必要だが、いち早く心肺蘇生法(CPR)やAEDを行うと救命率は上がる。

 心停止後2分以内に救命処置を開始すれば、生存率は90%。しかし1分遅れるごとにその割合は7~10%ずつ低下し、10分経過してしまえばほぼ絶望的といわれている。

 近年、日本でも公共の場でのAED設置が進み、迅速な救命処置の大切さが認識されるようになった。一般の人が講習を受けられる機会も増え、救命できるケースは徐々に増えている。

 ところが、心停止して倒れている人物が女性だった場合、その場に居合わせた人から救命措置を受けられる確率は男性に比べて低い――。

 そんな研究結果を、欧州心臓病学会(ESC)が今年、「国際女性デー」(3月8日)に公表した。

病院搬送時の生存率も女性が低い

 ジョルジュ・ポンピドゥー欧州病院(フランス・パリ)のNicole Karam博士らは、2011~2014年の間に、パリ周辺の公共の場で心停止を起こした1万1420人のデータを分析。そのうちの6割が男性、4割が女性だった。

 男性の場合、心停止を起こしたその場に誰かが居合わせる確率は比較的低かったが、基本的な救命措置(CPRやAEDの使用など)を受けた比率は70%だった。

 一方、女性は誰かが居合わせる確率が高かったにもかかわらず、救命処置を受けたのは60%と男性より低かった。

 さらに、生存した状態で病院に搬送されたのは女性18%、男性26%、こちらも女性が下回った。

女性の心肺蘇生実施率が低い理由

 なぜ、女性の心肺蘇生実施率が低いのだろうか。Karam博士はこう推察する。

 「女性は男性より華奢に見えるために、『胸骨圧迫で骨折させてしまっては』と躊躇するのだろう。また、心臓病は男性に多いので、女性が倒れても『心臓が原因ではないだろう』という思い込みがあるのかもしれない」

 心停止した人の多くが、数日前からめまいや動悸、胸の痛み、息切れなどの症状を起こしている。だが、「女性は冠動脈疾患を起こしにくい」という思い込みから、本人が病院に行かずに放置したり、受診しても適切な検査が受けられていない現状もあるという。

 Karam博士は「周囲の人はもちろん、女性自身も心停止リスクがあるということを理解し、十分に注意してほしい」とコメントしている。
「ブラジャーはそのままでOK」心肺蘇生法はシンプルに

 心肺蘇生のガイドラインは5年に1度改正され、2010年には心臓マッサージ(胸骨圧迫)とセットになっていた「マウスtoマウス」が、現在は必須ではなくなった。

 以前は「ブラジャーを外す」と指導されていたAEDの電極装着も、現在は1秒でも早い除細動を優先し、「つけたままでOK」とされる場合が多い。

 このように市民の行う心肺蘇生法は、現場での実利が優先されたものに変更され、一定の効果を上げている。

このあたりの事情を多くの人が認識し、心肺蘇生のレクチャーを受けて技術を身につければ、女性の救命率アップにもつながるだろう。
(文=編集部)