婚約するってどういうこと? どんな義務と責任が生じるの?

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執筆:石井林太郎(弁護士)


最近では、芸能人に限らず、SNSなどを通じて婚約を広く公表する方々も増えているように思われますが、皆さんは、いかなる場合に婚約が成立するか、また、婚約によって生じる法的な義務や責任についてご存知でしょうか。
今回は、婚約と 婚約破棄と慰謝料 について、法律に基づいて説明したいと思います。

明確な約束や結納をしていなくても「婚約成立」になる?


「婚約」というと、明確に約束を取り交わしたときや、結納をしたときに成立すると考える人もいるでしょう。しかし、婚約(法的には「婚姻予約契約」といいます。)の成否は、約束の取り交わしや結納を行ったか否かだけで判断されるものではありません。次の要素を総合的にみて判断されます。
(1)交際期間の長さ
(2)結婚に向けた準備の進み具合(結婚式場の予約等)
(3)婚約の事実を対外的に公表したか否か、公表したとすればどのような形で公表したか(家族に対する報告のみか、職場の上司や同僚、友人達にまで広く公表したか等)
(4)退職・同棲・家事への従事など、結婚に向けた生活状況の変化の有無・程度などに照らして判断されます。
もちろん、明確に約束を取り交わしている場合や結納を行っているような場合は、結婚に向けた準備も進んでおり、また、婚約したことを対外的に公表していることも多いでしょうから、結果として、婚約が成立していると判断される可能性は高いといえます。
しかし、裁判例上、明確な約束や結納を行っていなくても婚約の成立が認められているケースは相当数ありますし、反対に、結納をしていても法的には婚約は成立していないと判断されるケースもあります。

どんなときに「婚約の不当破棄」と評価されるの?


婚約も契約と同じです。いったん婚約が成立すると、当事者は誠実に交際し、婚姻を成立させるべき法的義務を負うこととなります。「不当な理由」で婚約を破棄するようなことがあれば、婚約を不当に破棄した者が相手方に対して損害賠償義務を負います。
「不当な理由」がどのようなものを指すのかというと、「単なる性格の不一致」がこれに当たることは想像し易いでしょう。しかし「家族が反対している」「相手方の身内に問題がある」といった理由も、婚約破棄を正当化する理由とはならず、「不当な理由」に当たると考えられています。

婚約破棄と慰謝料 の関係とは?


婚約を不当に破棄された者は、相手方に対し、婚約の不当破棄により被った精神的苦痛について、慰謝料を請求することができます。具体的な慰謝料の金額については、個別具体的な事情により様々ですが、離婚時の慰謝料に比べると低額な傾向にあり、一般的な相場としては、30万円から200万円程度と考えられているようです。
もっとも、婚約に伴って前職を退職して収入が喪失あるいは減額してしまった場合や、結婚に備えて用意した嫁入り道具等の購入費用等については、慰謝料とは別に賠償対象となり得るので、注意が必要です。

深刻な問題になる前に専門家へ相談を


婚約や婚姻の解消は、これまでの密接な人間関係が前提となっていることに加え、同じ出来事であっても当事者双方の認識・捉え方が異なることが多々あります。そのため、相手方の理解を得ることが容易でないことが少なくありませんので、深刻な問題となる前に、専門家に相談することをお勧めします。