拡大する「民泊」。 その光と影

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執筆:阿佐木ユウ(フリーライター)


いま何かと話題の「民泊」。民泊とは、個人がマンションや住宅の空室などを使って有料で宿泊サービスを提供することで、急増する外国人旅行者の受け皿として注目されています。「民泊なんて、自分には関係ない」と思っているかもしれませんが、あなたの住まいの近隣でトラブルが起こる可能性もあるのです。

死亡事故も発生


民泊をめぐるトラブルとして代表的なのが、宿泊者が夜中に大声で騒ぐ、間違えて別室のインターホンを鳴らす、ゴミを分別せずに指定の場所以外に放置する、空き缶や空きビンを窓から投げ捨てる──といったもの。

話は迷惑行為に留まらず、犯罪が絡んでくることも。麻薬の不法所持で逮捕される事件も起きています。また、今年7月には、東京・渋谷区のマンション12階のベランダから中国人の4歳の女の子が転落し死亡する重大事故も発生。母親が近くのコンビニに出かけていた間に起こった悲劇でした。

マンションが乗っ取られる?


こうした民泊の提供者と利用者を橋渡ししているのが、米国のエアビーアンドビー社に代表されるネット事業者です。部屋の提供も申し込みもすべてがオンラインで完結するため、周辺住民が知らないうちにマンションの一角が民泊に利用されているケースもあります。

民泊の広がりにより、「何か最近外国人の出入りが多いな……」と思っていたら、ある日突然トラブルに巻き込まれるというケースが起こり得るのです。
民泊利用者のマナーの悪さにうんざりした日本人入居者が次々とマンションを退去し、空いた部屋がさらに民泊用に転用されるという、まるで「乗っ取り」と言えるようなケースも出てきているそうです。

「おいしい」ビジネス


民泊が急速に広まっている大きな理由のひとつに、ビジネスとしての「うまみ」があります。家賃6〜7万円の部屋でも、民泊に提供すれば月に数十万円儲かるとも言われており、先述のエアビーアンドビー社のサイトでも、日本だけですでに1万数千件の物件が登録されています。

特に東京や大阪、京都などの都市部は深刻なホテル不足に陥っているため、新たなビジネスチャンスとしても注目されているのです。お金持ちの中国人が分譲マンションを何室も購入し、日本への渡航者向けに民泊を営業しているという話も聞こえてきます。こうなると、もはや民泊とは呼べないレベルです。

一方で法的には、「旅館業法に抵触しかねない」「賃貸物件の場合、大半で禁止されている又貸しにあたる」といった問題があるほか、「不法滞在者が逃げこむ可能性」「違法な営業活動の拠点となる恐れ」なども否定できません。このため、不動産業者からは「民泊の現場はすでに無法地帯」「資産価値に影響する死活問題」といった悲鳴に近い声も上がっています。

対抗するマンションも


民泊に「侵略」される前に、具体的な対抗策をとるマンションも出てきました。都内のあるマンションでは、「民泊禁止」を明確にした管理規約を新たに制定。このマンションはプールなども併設された物件であるため、自分たちの共有施設に不特定多数の旅行者が出入りすることは容認できないと判断したようです。

本来のメリットの最大化を


もちろん、民泊にもメリットはあります。人と人が素朴に触れ合えるという本来的な魅力や、外国からの観光客が増えることによる経済的なメリット。さらに、ますますグローバル化する社会において日本人の意識変化をもたらす可能性も秘めています。

民泊拡大の流れは、もはや止められないでしょう。そうであれば、いかにしてそのデメリットを最小化し、メリットを最大化するかが重要と言えそうです。宿泊施設が足りない現状や2020年の東京オリンピック開催を踏まえて、みんなで考え、できるだけ早く取りまとめる必要がありそうです。