中国の習近平国家主席の辞任を求める匿名の公開書簡がネット上に一時掲載されてから約1カ月が経過した。筆者や掲載の経緯などは明らかにされないままだ。写真は北京市天安門。

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2016年4月8日、中国の習近平国家主席(共産党総書記)の辞任を求める匿名の公開書簡がネット上に一時掲載されてから1カ月余。共産党トップの辞任を公然と要求する書簡は極めて異例だ。中国当局は「犯人捜し」に躍起になっているが、筆者や掲載の経緯などはナゾのままだ。

米国の中国語ニュースサイトなどによると、書簡は全国人民代表会議(全人代)の開幕を控えた3月4日夜、新疆ウイグル自治区政府系のニュースサイト「無界新聞」に掲載された。

「忠実なる共産党員」と名乗り、「習主席に権力を集中させた結果、あらゆる方面で危機が生じている」と主張。「東シナ海や南シナ海で摩擦を起こし、ベトナムやフィリピン、日本などを対中国で結束させた」、「『一帯一路(新シルクロード)』戦略で巨額の外貨準備を使いながら他国から回収できず、人民元の下落も止められない」などと批判した上で、「政治、経済、外交、イデオロギーなど全てにわたり失敗した。習主席は辞任すべきだ」と要求していた。

さらに「現在行われている反腐敗闘争が、ただの権力闘争であり、その目標が(習主席への)権力一極集中にあることは、誰の目にも明らかだ」と指摘。「このように党内の権力闘争が激化することは、あなたとあなたの家族の身の安全を脅かすであろうことを、われわれは案じている」などの脅迫めいた文言も含まれていた。

無界新聞は昨年春、新疆ウイグル自治区政府と中国の有力経済誌「財経」を発行する財訊集団、通販大手で中国の巨大企業であるアリババが共同で設立した。中国国営・新華社通信の配信記事や共産党機関紙・人民日報などの引用は極めて少なく、独自性が「売り物」だった。

この公開書簡は当局の指示で削除されたが、その前に多くの中国国民が目にしたため、転載されて拡散した。ネット時代の特徴でもある。無界新聞側は「ハッキングされた」と釈明しているが、使っていたアリババのコンピューターに形跡はなかったとされる。

書簡をめぐり、「権力闘争説」「内部犯行説」「外国情報機関の陰謀説」などが飛び交う中、中国当局は北京と香港を中心に活動する中国の著名コラムニストの賈葭氏を香港に向かう途中の空港で身柄拘束したが、その後釈放した。無界新聞の関係者は、ニュースサイトの4人が行方不明になっていると明らかにしている。

中国外交部の洪磊報道官は3月末の記者会見で「中国の安定を破壊しようとするいかなるたくらみも実現しない」と述べ、公開書簡に初めて言及した。しかし、外交部のホームページには、このやり取りに関する部分は掲載されていないという。 公開書簡を機に中国指導部がネット規制をますます強めるのだけは必至だ。(編集/日向)