社会人ともなれば様々な職種の人に出会うと思います。それは、ライターという職業に就く筆者だって同様。ファイルには数えきれないほどの名刺が収まってるし、そのファイル自体が自宅には何冊もあります。

先日、名刺を整理していたら、同じ人の名刺を2枚もらっていたことに気付きました。要するに、同じ人に「初めまして」の挨拶を二度していたわけです。名刺交換を普通に行っていても相手へどれほどの印象を与えるのか、不安になってしまいますね。
というか、私の記憶力が低いだけかもしれませんが……。

「あのプラモデル名刺の方ですよね」と覚えてもらえる


先日、ちょっと気になるツールを発見しました。「有限会社共栄金型」(千葉県野田市)が開発した"プラモデル名刺"は、こんな感じです。



その名の通りに、プラモデルみたい! それでいて、よく見ると名刺になっている。だって、名前も住所も電話番号も書いてあるもの。
でも、なぜこのような珍名刺を作ろうと思ったのだろう……。
「私どもは金型製作を業務とする会社なのですが、昨今の景気が影響して以前ほど仕事を取りづらくなった現状があります。そこで、我々の持つものづくりの技術を活かして自社製品を展開しようと考えました」(同社・長尾健司さん)

しかし、妙案がなかなか思い浮かばない。一方で、今後のために人脈を広げる必要がある。そこで、長尾さんは異業種交流会へ出席するようになります。
「ただ、交流会に出ても『金型って何ですか?』と質問されることが予想以上に多かったんです。そこでお渡しする名刺自体をプラモデル風にし、金型について一発でわかってもらえるように工夫したんです」(長尾さん)

結果、これが大成功! 一発で金型について理解してもらえるし、相手にインパクトを与える効果にも繋がりました。
「2回目に会った時、『あのプラモデル名刺の方ですよね』ってだいたいの皆さんが覚えてくれています。もちろん、私が金型屋だということもわかってくれているみたいです(笑)」(長尾さん)

そして、同社は気付きます。これ、そのまま自社製品に成り得るんじゃないか!? と。

美容師用の名刺は、本物の櫛にもなる


こうして、今年1月から"プラモデル名刺"の受注を開始した同社。この名刺の強みは、自身の職種を相手に伝える効果です。
「今までにいくつかの企業さんからご依頼いただいたのですが、某バス会社の名刺を作った際は、その会社のキャラクターを金型にしてデザインしました」(長尾さん)

では、ここで一例をご紹介しましょう。これは、どの職種用の名刺だと思います?


皆まで言う必要はないでしょうか? ハサミがあって、櫛がある。……そう、美容師さんのために製作されたものなんです!
「他に、飲食店さん用にフォークをデザインした名刺を作っても面白いと思います。そういった名刺は、金型から外せば本物の櫛やフォークとして実用もできますよね」(長尾さん)

もちろん、個人事業主が"プラモデル名刺"を発注してもOK。自身の職種でもいいし、本人の名前をイメージさせるようなデザインにしても面白いでしょう。ただ、あくまで同社は製作を受け持つ立場。デザインについては、発注主側で担当して考えてくださいね。

"プラモデル名刺"には、メリットとデメリットがある


この"プラモデル名刺"を実際に使用していた長尾さんは、先方から「これ、名刺なんですか?」「もらっていいの!?」と驚かれることが多かったそうです。このようなインパクトがあれば、相手から忘れられることもないでしょう。
「きっと、そのうち紙の名刺っていらなくなると思うんです。もはや、SNSを通じてお互いを確認できる時代になっていますから」(長尾さん)

とは言え、"プラモデル名刺"にデメリットがないわけではない。まず、名刺入れに入りにくいです。
「営業の方は一度に多くの枚数の名刺を持って行きたいでしょうが、"プラモデル名刺"はかさばるので50枚が限界でしょうね……」(長尾さん)

もう一つある。
「"プラモデル名刺"って、年配の方にはあまり喜ばれないんです。たぶん、従来の名刺への固定概念をお持ちなんだと思います」(長尾さん)
なるほど。そこら辺は、TPOに合わせて臨機応変に扱ってください……。

ちなみに"プラモデル名刺"製作にかかる料金は、金型が5万円〜で、名刺が1枚あたり150円〜。言うまでもなく、通常の名刺よりは値が張ります。相手への印象度と料金を天秤にかけた上で、どちらを取るかはあなた次第です。
(寺西ジャジューカ)