DJ SUMIROCK

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4月1日より全国ロードショーがスタートした映画「あやしい彼女」。73歳の毒舌おばあちゃんが、ある日突然20歳に若返り、もう一つの自分の人生を歩み始めるという物語だ。

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見た目は20歳ながら中身は73歳という異色のヒロイン・節子を演じるのは多部未華子。さらに彼女と二人一役で若返る前の主人公を倍賞美津子が演じている。

誰もが一度は思い描く「あのとき違う道を歩んでいれば」という究極のifをテーマにした本作だが、もちろん現実は映画のようにはいかず、人生をやり直すことはできない。だからこそ、何歳であっても一度きりの人生を思い切り生きるべきだということを本作は教えてくれるのだ。

まさに、それを実践している人物が現実にも存在する。81歳ながら「DJ」としてイベントに出演し、確かなセンスとテクニックでフロアを沸かせるDJ SUMIROCKこと岩室純子(いわむろすみこ)さんだ。

すでに数々のメディアで取り上げられるなど、DJ界ではその名を知られた存在。こう書くと、昔からの著名なDJがそのまま活躍しているだけではと思うかもしれないが、彼女がDJとしての活動を始めたのはなんと4年前からなのだ。

当時、DJ SUMIROCKのもとにホームステイしていたフランス人のアドリアンさんがDJイベントを主催しており、それに参加したことがきっかけでDJを志したという。2012年からはスクールにも通って本格的にDJとしての技術を磨いたというからすごい。

「鉄腕アトム」からスタートし、ジャズやシャンソンを織り交ぜるジャンルレスなプレイが彼女の持ち味だ。国内の他、パリやノルマンディーなど海外のイベントにも出演している。

昼は餃子屋の女将として働きながら、夜はDJとして活躍するDJ SUMIROCK。果たして彼女の目に、20歳に戻ってもう一度人生をやり直そうとする節子はどう映るのだろうか。

DJ SUMIROCKが働く「餃子荘ムロ」で、餃子をいただきながら「あやしい彼女」の感想を聞いた。ちなみにこのお店、高田馬場で60年以上続く老舗で、取材日も開店前から行列ができていたほどの人気店である。

洋画が大好き。日本映画はほとんど見ない

――「あやしい彼女」、いかがでしたか?

DJ SUMIROCK:とってもよかったですよ。ストーリーも面白いし、主演の女優さんがかわいかったですしね。

――主演は多部未華子さんですね。

DJ SUMIROCK:そうそう、演技も上手だし、ベテランの役者さんに負けず自然でよかったです。

――普段はどんな映画をご覧になるのですか?

DJ SUMIROCK:アクションものが好きですね。あとは昔の映画ですけど、「カサブランカ」や「イヴの総て」、「格子なき牢獄」、「鎧なき騎士」なんかが大好き。実は子どもの頃から洋画が好きで、日本映画はぜんぜん見なかったんです。戦時中で洋画がなかったときでも日本映画は好きじゃないから見たくなかったくらい(笑)。

――えっ、そうだったんですね。そんなDJ SUMIROCKさんに「面白かった」と言ってもらえてホッとしました(笑)。「あやしい彼女」は、73歳の女性がある日突然20歳に戻ってしまうというお話ですが……。

DJ SUMIROCK:その設定自体は最近よくあるから、特にどうとは思わなかったけど(笑)、でもよかったと思います。特に節子がバッグをひったくられて追いかけるシーンが印象的でしたね。あのときはまだ倍賞さんが演じているカツでしたっけ。

――若返る前のカツは73歳で、冒頭では女手一つで育てた娘との仲もぎくしゃくしています。

DJ SUMIROCK:最初はぶつぶつ文句をつぶやいてばかりでしたね。私はカツの年齢に近いけど、そこは私と逆だなって思いました。もう少しカツはカラッとしていた方がいいですね。でもああいう性格じゃないとドラマにならないですもんね?(笑)

――ま、まぁそこは……(笑)。

DJ SUMIROCK:ただ私も気持ちはともかく、体はついていかないですよ。先日のイベントでも調子に乗って夜中のアフターパーティーまで参加したらくたびれてしまって。翌日はお休みをいただきました。

――800人規模のイベントですよね。十分、体もついていっているように思えます(笑)。

DJ SUMIROCK:ふふふ(笑)。

型にはまらない選曲でフロアを盛り上げる

――また映画の話に戻りますと、「あやしい彼女」でも"音楽"が物語全体の大事なテーマの一つになっています。20歳になった節子は夢だった歌手を目指し、彼女の才能に目をつけたプロデューサーにスカウトされます。

DJ SUMIROCK:音楽もよかったですね。懐かしい曲がたくさん流れますよね。

――「見上げてごらん夜の星を」「真赤な太陽」「悲しくてやりきれない」などですね。特に印象に残った曲はありますか?

DJ SUMIROCK:最初に倍賞さんが歌っていた……「東京ブギウギ」かな。「悲しくてやりきれない」を歌ってプロデューサーが節子に目をつけるところなんて、取り上げ方がうまいなぁと思いましたね。私はその当時を知っていますから、違和感がなかったです。こういう曲を知ってらっしゃる方が映画を作られたんでしょうかね。

この映画で使われた曲は、当時は街でしょっちゅう流れていましたよ。いい曲はいつ聴いてもいいですね。今の人が昔のいい曲を知るきっかけになるかもしれません。

――音楽といえば、DJ SUMIROCKさんがクラブでかける曲は「鉄腕アトム」やジャズ、シャンソンなど幅広いですよね。

DJ SUMIROCK:私がDJになるきっかけになったアドリアンという方がイベントを主催しているのですが、もともと彼のコンセプトは、いろんな人に来てもらいたいということなんですよ。

――DJ SUMIROCKさんの選曲が型にはまらないのには、そういう背景もあるのですね。

DJ SUMIROCK:ふふ。みなさん、面白がってるんじゃないですか(笑)。私ね、不安なんですよ。

――不安?

DJ SUMIROCK:私が歳だからみなさんがワーワー言ってくださっているのか、それとも私のプレイが本当にいいからなのか、それがわからないんです。褒められるし、すごいですねって言っていただきますけど、物珍しいから来てくださっているだけなのかなって思ったりするんです。

――年齢で珍しがられているだけなら、何度もイベントに出演してフロアを沸かせるのは無理だと思いますが……実際にイベントにお邪魔しましたが、すごく盛り上がっていました。

DJ SUMIROCK:みなさんが声を出して踊ってくださると、うまくいったのかなって嬉しくなりますね。うまくつなげられたとか、選曲がよかったとか、考えていたことがイメージ通りにあたったときは嬉しいです。

――高揚感が?

DJ SUMIROCK:高揚感はあまりないんですよ。私、そういうのって冷静なんです(笑)。

未知の世界に挑戦するには、失敗を恐れないこと

――(笑)。……ところで、映画の主人公・節子は20歳に戻ったことで新しい道を歩むきっかけを手に入れましたが、DJ SUMIROCKさんは70歳を超えてからDJという新しい道に挑戦されました。新しいこと、未知の世界に挑戦するのは、若くても尻込みしてしまう人が多いと思います。

DJ SUMIROCK:私はもう、そういう性格なんですよね。昔から「あなた心臓ね」って言われていました。「心臓ね」っていうのは、「肝っ玉が座っているわね」ってこと。私も普段はおとなしいんですよ。でもいざ何かしないといけないってときは、他の人よりも早くサッとやる性格なんです。

――うらやましい限りです……。どうすればそうなれるのでしょうか。

DJ SUMIROCK:失敗しても気にしないことでしょうか。最初うまくいかないのは当たり前のことなんですよ。命に関わることだとダメだけど、恥ずかしい思いをするくらいだったら大したことはないんです。私自身、そんな大した人間ではないから、笑われたって大したことはない。そう思えばいいんです。

わからないことも多いですよ。イベントでも場所によって機械の操作もぜんぶ違いますから。

――そういうときはどうされるのですか?

DJ SUMIROCK:わからないことは周りの人に助けてもらいます。そのときそのときで「わかりません」と言って、お願いして教えていただくんです。

――助けてもらうといえば、映画でも節子が泣いている子どもとお母さんにおせっかいを焼くシーンがありますね。

DJ SUMIROCK:ええ。そういうのに気づく人って、年齢関係ないですよね。若い人でも気づく人はちゃんと気づくし。

20歳に戻れたら、なりたいものはバレリーナとスパイ

――DJ SUMIROCKさんがもし20歳に戻ったら、何をしたいですか?

DJ SUMIROCK:今とは違うことがやりたいですね。まずは昔、チェロをやりかけでやめてしまったので、それがやりたいです。それから、小学生のときに学校が戦争で閉鎖になったので、数学が途中のままなんです。幾何は後から勉強したけど、代数をやっていないので、その勉強がしたいですね。

――お仕事は?

DJ SUMIROCK:なりたいのは、バレリーナとスパイ!

――スパイですか!?

DJ SUMIROCK:スリルがありそうじゃないですか? でも痛みには弱いから、拷問なんか受けたらすぐ喋っちゃうけど(笑)。

――今、DJをされていることといい、DJ SUMIROCKさんは刺激がほしいタイプなのかもしれないと思いました。

DJ SUMIROCK:ああ、そうかもしれません! 旅行でもトラブルに巻き込まれるとワクワクするんです。スムーズに行くとあまりおもしろくない(笑)。

――何となくわかります(笑)。将来やりたいことはありますか? 音楽方面でも、それ以外でも。

DJ SUMIROCK:お金と時間があったら乗馬をしてみたいですね。スポーツは嫌いで、アーチェリーとかテニスとかやったんですけど、あまり……。でも乗馬だけはやってみたいです。

――乗馬ですか! 本当にあらゆる方向に好奇心旺盛ですよね。今後のチャレンジも楽しみにしています。

インタビューからも伝わってくるDJ SUMIROCKのバイタリティ。昼は餃子屋で鉄鍋を振るい、夜はクラブでターンテーブルを回す彼女からはエネルギーがあふれている。

「あやしい彼女」の節子のように物理的に若返ることは実際には不可能だが、だからといってあきらめる必要はないのだ。何歳になっても新しい挑戦はできる。DJ SUMIROCKの生き方がそれを証明している。

「あやしい彼女」は現在、全国の劇場で上映中だ。

DJ SUMIROCK 出演情報
「DecabarZ」
東京都新宿区歌舞伎町1-2-13 新光ビル5F
Twitter:@decabarz
4/29日(金)23:30〜のイベントにDJ SUMIROCK出演!