ハイヒールを履かない人でも外反母趾に(shutterstock.com)

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 足のことは何でも診る」がコンセプトの足の診療所(東京・表参道)では、外反母趾や巻き爪、たこやいぼ、魚の目、リウマチ、創傷、痛風、水虫など、多種多様な疾患を診る。

 しかし、そうした多様な疾患の原因はほぼひとつ、「足の構造異常」に集約される。足の骨格の形状が悪くなり、皮膚、血管、骨などにさまざまな症状を引き起こすのだという。

 くるぶしから下には、片足で26〜28個もの骨がある。これは体全体の骨の数の4分の1に相当する数だ。これらの骨が緻密に組み合わされて弧状につながり、「アーチ構造」を作って足底を支えている。このアーチ構造が崩れると、さまざまなトラブルが発生する。

外反母趾の原因はヒールではなかった

 足のトラブルとして真っ先に思い浮かぶのが「外反母趾」だろう。ヒールの高い靴が原因と思われがちだが、ハイヒールを履かない人でも外反母趾は発生する。根本的な原因は、骨格が歪んで足のアーチ構造が崩れ、関節が変形してしまったことにある。

 足の診療所の桑原靖院長は「外反母趾は進行性の疾患です。原因であるアーチ構造の歪みを取り除かないとどんどん進行し、手術が必要になることもあります」と話す。

 悪化を防ぐための治療法としては、靴のアセスメントとアドバイス、外反母趾パッドによる摩擦・圧の低減、固めのインソールによるアーチ構造補強、ステロイド注射等がある。初期の外反母趾であればこうした処置で進行を食い止められるが、重症の外反母趾では根治的手術という選択肢もある。

 外反母趾では第1中足骨が内側に倒れ込み、関節が変形、脱臼している。手術ではこの骨を切断し、最適な位置に配置しなおして固定する。固定には吸収素材を用いるため、体内には残らない。術後翌日からは歩行によるリハビリを開始。3日〜1週間程度の入院が必要となる。

巻き爪も手術で根治できる

 足の診療所には、巻き爪(陥入爪)で悩んでいる人も多く訪れる。これまでにワイヤー矯正術を受けたものの再発してしまったというという患者も多い。

 「巻き爪は、爪に原因があると思われがちですが、実は足の側にあることの方が圧倒的に多い。例えば指の変形や偏平足によっても巻き爪は生じます。こうした原因を放っておいて爪への対処療法をするだけでは、再発する可能性は高いですね」

 足ゆびの変形や扁平足が起因する外反母趾が要因となっている巻き爪の場合は、インソールによる治療が必要なケースもある。

 また足の診療所では「NaOH手術」を行っている。NaOHとは爪になる前の細胞を焼くための薬品の名称だ。この手術では、食い込んでいる爪部分をニッパーで取り除き、爪の生えてくる場所にNaOHを付けて、ガーゼとコーバンで固定する。爪になる前の細胞を焼いてしまうので、そこからは爪が生えない。少量の麻酔をかけて行うので痛みもほとんどなく、5分程度で完了。皮膚への侵襲性も少ない。健康保険が適用でき、料金は3割負担で1万円程度である。
足底筋膜炎にはアキレス腱のストレッチ

 足の裏が激しく痛む「足底筋膜炎」も、よく見られる疾患である。朝起きて最初に体重をかけたときに強く痛み、歩き始めると和らぐのが特徴だが、慢性化すると痛みが続くこともある。これも足のアーチ構造が崩れ、足の裏でうまく衝撃を吸収できなくなったために生じる炎症だ。

 足の診療所では、まず「アキレス腱のストレッチ」を指導する。立った姿勢で壁に手をつき、脚を前後に開いて前の膝をゆっくり曲げる。後ろの足はかかとを床につけ、はずみをつけずにゆっくりと伸ばす。これだけで症状が改善する人もいるという。

 このほか、アーチ構造を支えるために、土踏まずの部分が立体的になったインソールを使用するのも効果がある。インソールは保険適用で、ひとりひとりの足の形に合せて義肢装具士が作成する。

 痛みが強い場合にはステロイド注射で炎症を抑えるほか、ナイトスプリント(夜間に装着するアキレス腱を伸ばすための装具)、専用の医療機器を使用した体外衝撃波治療(衝撃波を疼痛部位に宛てることで、痛みを軽減させる治療法)も提供している。

 「大切なのは、アキレス腱が硬くならないようにすること、それから骨のアーチ構造を保つようにすることです。ストレッチでアキレス腱を伸ばしたり、自分の足に合うしっかりしたインソールを使うことが、再発予防につながります」

 足の診療所には、すでにいくつかの病院を受診していていながら、原因がわからず痛みどめや湿布を出されるだけですぐに再発を繰り返す「フットケア難民」も多く来院する。長年苦しんできた外反母趾や巻き爪が、手術で根治できたと喜ぶ患者も多いという。

「もちろん手術に抵抗があるという患者さんもいらっしゃいます。どの治療法を選択するかは、最終的には患者さんが決定することです。私たちの仕事は、根本の原因がどこにあるのかを探ること。それから、可能な限りの選択肢を探し、提示することです」

 患者さんが最適な選択ができるよう、各治療法のメリットやデメリットもしっかりと伝えるようにしているという。

桑原 靖(くわはら・やすし)
足の診療所院長
1978年静岡県生まれ。2004年、埼玉医科大学を卒業。2006年、同大医学部形成外科入局。創傷治癒学、難治性創傷治療を専攻。外来医長、フットケア担当医師を経て2013年、「足の診療所」を開設。埼玉医科大学形成外科非常勤医師、下肢救済足病学会評議員。