公開5日で観客動員100万人を突破した映画「暗殺教室〜卒業編〜」。これは2016年公開の映画では最速記録だ。昨年公開の前作以上の好調な滑り出しを記録した要因のひとつは、「週刊少年ジャンプ」3月19日発売号で最終話を迎えた原作漫画と同じストーリー、同じラストシーンである、という話題性もあるだろう。


公開時、原作者・松井優征は「羽住英一郎監督と羽住組はとにかく仕事が速くて技術力が高く、原作のビジュアルやストーリーが完璧に固まるのをギリギリまで待ってくれました」とコメントを残した。では実際に、製作サイドはどんな苦労があったのか? キーマンのひとりである、映画での脚本担当でノベライズ版も手がけた金沢達也氏に、原作と映画の関わり方など制作秘話を聞いた。

松井先生はスゴすぎますわ!


─── 「アクションもあると思って鍛えたのに、この身体、どうしてくれるんですか?」……製作報告会見で烏丸役の椎名桔平さんがこんなことを言っていました。

金沢:そこ!(笑)。いや、言ってましたけども。桔平さん、本当に鍛え込んでいたみたいですよ。

─── 個人的に、原作の烏丸先生の立ち位置がとても好きなんですね。ああいう、若人を見守る大人の余裕というか。でも、今作ではあんまり烏丸先生出番ないのかぁ……と思っていたのですが、いやいや、烏丸先生の見せ場も含め、見どころ満載でした。

金沢:烏丸先生には最後にビシッと締めていただいて。それに烏丸先生の出番が少ない分「コロスマ先生」が出てきたじゃないですか。

─── いや、出てましたけども(笑)。ただ、烏丸先生の出番は一例として、これだけ「メインキャスト」と呼べる人が大勢いる作品です。しかも今回は“殺せんせー”の過去も明かされ、そしてラストまで描ききるということで、前作以上に「原作のどこをどう抽出するか」が大変だったんじゃないかと感じたんですが。

金沢:前作は、既にある原作の中から、どこをどうピックアップして2時間の作品にするか、というのが脚本家としての仕事でした。でも今回は、脚本を作る段階で、原作よりも先を進まなければならなかったわけです。

─── どのくらい前倒しをした感じですか? 製作スタート時から、原作と同じラストにする、というのは決まっていたわけですよね? 2月にあった製作報告会見で、原作者(松井優征)自身が「終わり方、エンディングに関しては、これじゃないとダメ、というのがありました」と語っています。

金沢:そうですね。撮影は秋だったから……夏前くらいには脚本はできていたかな。なので、今回、松井先生とのキャッチボールの頻度・密度は前作以上でした。脚本づくりの初期段階でラストシーンまでの構成をお聞きし、脚本の決定稿ができるギリギリまで細かいアイデアなんかも随時いただいた感じです。

─── 実際、映画の中で、原作と一字一句変わらないセリフ、というシーンは多かったです。

金沢:実は、松井先生からはかなり綿密なプロットをいただいていたんです。ものすごく分厚い。そのプロットにあわせて原作も映画も進めたから、同じものになるという。松井先生からも新しいアイデアをどんどんもらい、何度もフィードバックを繰り返してくださいました。そうそう、映画で橋本さとしさんが演じた「ホウジョウ」という役があるんですけども。

─── 眼鏡をかけた、政府側の刺客というか。

金沢:あのキャラクターは実はこちらで考えたもので、それを松井先生が気に入ってくれて漫画の方にも登場したり。そういったこともできるのが、ある意味で究極のメディアミックスだったのかな、と。

─── そう考えると、漫画の方もとんでもないですね。連載終了の半年前にプロットができているという。いや、最後までプロットが完成している作品というのは他にもあると思いますが、それを、半年以上先の映画公開にあわせて、同じタイミングで終わらせるっていうのは……毎週連載でそのスケジューリングはちょっと信じられないです。

金沢:ホントそう! 最初にもらったプロットっていうのも、セリフがほぼ入ったものなんです。頭の中で出来あがっているわけですよ。それを、卒業の話だから卒業のタイミングにあわせて描きあげるというね。いやもう、松井先生はスゴすぎますわ! 


キレイに散らばってできたパッチワークのような作品


─── 映画においては、「パート2は難しい」とよく言われます。今回、特に「2作目だから」意識したこと、難しかった点はどんなところでしょうか?

金沢:やっぱり、「2」だけでもわかるものにする、というのはありました。もちろん、あらすじとかダイジェストの部分は必要なんですけども、「2」だけ観ても楽しめるものに、というのは絶対条件。

─── そこがまた、難しいところなのかと。

金沢:前作が、数あるエピソードからどこをどう抽出するか、ある意味で削ぎ落としてできた作品だとすれば、今回はいろんな要素がキレイに散らばってできたパッチワークのような作品、といえばいいのか……。コメディあり、ラブロマンスあり、SFあり、アクションあり。いろんな映画を観た感じになって、でも決してバラバラではない。そんな作品になっているんじゃないかと思います。

─── パッチワークということですが、その中でも、作品の軸はここ! というのは製作陣にはあったんですか?

金沢:当然ですが、まずはエンディング。エンディングをどう撮るかは羽住監督が特に力を入れていました。あとはやっぱり、渚とカルマのタイマン勝負かな。撮影的にもそうですが、脚本的にも何度も書き直したところですね。

─── どんな部分を?

金沢:殺せんせーを「殺す派」「殺さない派」に分かれて、じゃあタイマンで勝負すればいいじゃない、というそのままの流れに最初はしたんです。でもそれだと、あまりにも段取り過ぎる。それに、ちょっと単調かなということで、まずタイマンから始まって、途中に回想シーンで意見のぶつかり合いを描いて、またタイマンに戻るという。そこは、いいアクセントになっているのかなと思います。


山田君と菅田君もスゴいんだけど……


─── 渚とカルマのタイマン勝負の話が出ましたが、それを演じた山田涼介(渚)と菅田将暉(カルマ)のふたりについてお聞きします。2人とも前作からのこの1年で役者としてキャリアを重ね、幅が広がったというか、露出も大きく増えたと思います。そういった役者の成長と脚本作りは相関する部分はありますか?

金沢:「暗殺教室」に関していえば、原作がしっかりしている分、役者にあわせて「当て書き」をしているわけではないんですね。その意味で影響はないんですけど、それにしても菅田君のここ最近の露出はすごいよね。

─── 連ドラにCMにと、正直すごいです。

金沢:ひょっとして、前作とは違うカルマになっちゃうんじゃないか、ともちょっと思いました。でも、蓋を開けたら菅田君は完璧にカルマに合わせてきました。前作と変わらずちゃんとカルマだし、でも、原作同様に作品の中で成長していくカルマの姿も表現できている。彼は本当にすごいと思います。それと山田君も。タイマン勝負のためにかなり身体を作ってきてましたから。

─── そうなんですか! 服の上からはわからない部分です。

金沢:華奢に見えて、かなりスゴイ身体してましたよ(笑)。山田君と菅田君もすごいんだけど、他にも、カエデ役の山本舞香ちゃんも映画「桜ノ雨」で主演を務め、橋本環奈ちゃんも映画「セーラー服と機関銃」で主演。他の生徒役の子たちもそう。これが学園モノの良さというか、役者陣の成長度合いが作品にもいい影響を生み出していると思うし、製作スタッフの一人として、素直に嬉しいですよね。

─── そう考えると、よく全員が再集結できましたよね。

金沢:ホントに! 皆これだけBigになって、正直、無理かもしれないと思いました。それでも、ちゃんと全員揃うことができた。僕ら製作陣にとっては、足掛け3年くらいのプロジェクトだったわけです。だから、今の正直な気持ちは、ただただ寂しい、ということですね。まさに「卒業」。あぁ、終わっちゃうなぁ……という。なんか、スピンオフとかができれば嬉しいんですけど、こればっかりはね。

─── スンピンオフを期待したくなるほど、前作以上の好調な滑り出しです。

金沢:ありがたいです。いろんな要素が詰まった内容なんですが、最後はとにかく泣ける作品になっています。ここまでは学生や若い方が多いと思うんですが、大人の人にもぜひ観てもらいたいですね。あと、ノベライズ版も出していますので、そちらもあわせてどうぞ。


(オグマナオト)