佐々木圭一氏●上智大学大学院を修了後、1997年博報堂に入社。伝えることが得意でなかったにもかかわらず、コピーライターとして配属され、苦しむ。著書『伝え方が9割』では、もがくなかで見つけた伝え方の技術を惜しみなく紹介。

写真拡大

業績を挙げている経営者たちは、どんなメールを書いているのだろうか。超効率重視のメールから情熱的なものまで、様々に集まったメールを言葉のプロが徹底分析する。

「伝え方が変われば日本は変わる」。そう言い切るのは、50万部のベストセラーになった『伝え方が9割』(ダイヤモンド社)の著者でコピーライターとして数々の賞を受賞してきた佐々木圭一氏だ。

日本は世界最高レベルの商品をつくっているのに、「伝え方」がイマイチなために中国や韓国にビジネスで負けるようになっている。そんな現状が佐々木氏にとってははがゆくてならないのだ。トップだけではなく、役員、管理職、各職場のリーダーの発信力を上げることさえできれば――。

「発信力」と聞くと難しく聞こえるかもしれない。「オレにはそんな才能ないし」と最初からあきらめている人もいるだろう。しかし、あきらめる必要はまったくない。

「伝え方は才能やセンスの問題だと思われがちですが、そうではありません。とてもシンプルな技術があって、トレーニングをすれば、誰でもプロのような感動的なコトバをつくることができるのです」(佐々木氏)

名経営者たちが書いたメールを拝見すると、発信力に優れた彼らは、自然とその「シンプルな技術」を使っていると佐々木氏は指摘する。ビジネスマンがそのワザをすぐにでも実践できるように、ポイントを解説してもらった。

■なぜ、いつも3行以内ですませるのか

元ソフトバンク社長室長の三木雄信氏によると、孫社長がメールで最も重視するのは効率。そのため、ツイッターよりも短い文面になることがほとんどだ。そしてそれを受け取った部下がすぐに何かしらの行動が起こせるように「〜すること」と明確な指示だけを示し、なぜそれが必要かという理由の説明はない。複雑な説明が必要な場合は、メールだと効率が悪いので電話や会議で伝える。

▼伝え方の達人が解説!

【1】「大至急」でスピード重視を伝える
冒頭の「大至急」と文章の短さから速度が大切だということがわかる。信頼関係をしっかり築けている部下との間ではこれくらい端的なものでもOK。

【2】「認められたい欲」にアプローチする
一般のビジネスマンが孫社長と同じように書くと冷たい印象をもたれかねない。そこで、「君なら乗り越えられると思います。期待しています」などと一言添えよう。

【3】「感謝の言葉」でやる気に点火
「はい。」のあとに「いつもありがとう!」があると気分が上がる。また、「検討すること。」のあとに「山田さん、こういう提案が会社をよくする。ありがとう」などと書けば、次からもいい提案が上がってくるようになるはずだ。

(佐々木圭一 撮影=宇佐美雅浩、小倉和徳、的野弘路)