左「つるの剛士オフィシャルサイト」/右・吉本興業株式会社芸人プロフィールより

写真拡大

 本体の新聞同様に、ヘイト満載の常軌を逸した記事で定評のあるタカ派論壇誌「正論」(産経新聞社)。先日も同誌が主催する「正論」大賞の贈呈式に安倍首相がわざわざ出席し挨拶まで披露、「あなたの言う『公平中立』って一体何なんだよ!」とツッコまれたばかりだが、そんな安倍首相が偏向するほど大好きな「正論」に、あのトチ狂った企画が再び掲載された。

「トチ狂った企画」とは、「正論」3月号の『第1回せいろん女子会 気づいていますか? あなたが「保守オヤジ」です』。自称・保守女子4名による座談会で、そこで飛び出したのは"上から目線、気に入らない人にはすぐ「在日」と言って喜ぶ、服がダサい、話が長い、知識を押し付ける、態度が非常識、女に偏見もちすぎ"という保守オヤジたちへの痛烈すぎる批判の数々だったのだ。

 本サイトが同企画を取り上げると、「なにこの自虐......」「ついに狂ったか?」という反響とともに、頭のネジが抜けたとしか思えない「正論」編集部を心配する声が届いたが、「正論」編集部は久々に記事が話題になったことに気を良くしたのか、4月号でもこの恐怖の女子会を開いてしまったのである。しかも、『出でよ、「おめざ女子」』というさっぱり意味のわからないタイトルで。

 まず、座談会出席者の保守女子(といっても前回同様、出席者は萌えっぽいイラストで顔写真などはなし)は、「友達のほとんどは、そもそも『正論』という月刊誌があることも知らない。『正論』などの保守系論壇は、若い女性たちに相手にされていない、というのも現実です」と嘆く。そして司会者が「そういう若い女性の皆さんに手にとってもらえるようになるためにはどうしたらいいのか」と教えを請うのだ。

 いや、そりゃあ表紙に「君は支那事変を知っているか」などというおどろおどろしいタイトルと劇画調マンガをデカデカと載っけていたら、ドン引きして書店でもその場をそそくさと立ち去るだろう。だが、そこは「正論」読者の保守女子。「私も、メディアのおかしな報道や、中国や韓国が世界中にばらまいている歴史の嘘、日本の安全がおかしくなってる状況に、ようやく気づいた、という感じです。もっと勉強したい、これまで間違って信じ込まされていたことが本当はどうなのか知りたい、と思ってる」と力説する。

「歴史好きの「歴女」、山登りが好きな「山ガール」風にいうと、保守系女子ではなく、「おめざ女子」かな。「平和」だけを言っていればいいというお花畑思考や反日的な歴史の見方から目覚めた、という意味です」
「「お気づき女子」、格好よくいうと「インテリジェンス女子」(笑)かな。私も「保守系女子」じゃない方がしっくりくる」

「おめざ女子」に「お気づき女子」......。ネーミングにそこはかとなく漂うオヤジ加齢臭が気になるが、まあそれはいい。むしろ、彼女たち(もちろん、「正論」の脳内にいる非実在女子である可能性は否めないが)が「おめざ女子」になったきっかけというのが、今回の出席者5名のうち2名が「KAZUYAさんの動画」と言っている点のほうが引っかかる。

 KAZUYA氏といえば、先日、著書が回収騒ぎとなったケント・ギルバート氏(詳しくは過去記事を参照)も信用を寄せる人物だが、彼はYouTubeやニコニコ動画に反日攻撃動画を続々と配信しているネトウヨ・ユーチューバー。有象無象のネトウヨ系まとめサイトと見粉うような陰謀論を展開することで知られているが、保守女子たちは「KAZUYAさんは保守だとか右寄りとかそういうんじゃなくて、日本が良くなればいいと思ってるんですって」ともちあげている。よくこの程度のメディアリテラシーで「インテリジェンス女子」を名乗ったものだ。

 で、そんなネトウヨ汚染された彼女たちが注目している芸能人は、つるの剛士に小籔千豊だという。

「安保法制の議論があった時に「『反対反対』ばかりで「賛成」の意見や声も聞きたい」「賛成派だって反対派だって平和への想い、戦争反対の想いは同じ」とツイートしてて、「おっ、隠しているけれど、この人保守かも」と想像するようになりました(笑)」
「つるのさんには、もっとメディアに出てほしいなあ」
「お笑いタレントの小籔千豊さんにも注目してます」

 多くの芸能人が安保法制反対を叫んだ一方で、賛成派は手薄だったことを考えるとネトウヨがつるのに期待しているのはよくわかる。しかも、つるのはツイッターで、

〈僕の小学校時代(大阪、高槻)は国旗掲揚、国歌斉唱廃止、「皆平等」ということで運動会の点数制度廃止、何故か隣国の事を学ぶ授業。今考えればかなり偏った教育を受けていた地域、時代でした。イチ先生の歪んだ思想に多数の子供達を巻き込まないで頂きたい。断固。〉

 と、ネトウヨ思考を披露。まさに「おめざ男子」といった感じだが、一方の小籔って、それは保守女子たちが前号でやり玉に上げていた「上から目線」「女に偏見もちすぎ」に当てはまる人物なはずなのだが......。

 さらに、彼女たちはこんなことまで言い出す。

「五郎丸選手には向井理さんと、靖国神社を参拝してほしい。靖国神社に参拝する女性もものすごく増えると想う。「五郎丸靖国神社」企画をぜひ(笑)」

 ドラマ版『永遠の0』(テレビ東京)主演をきっかけに靖国参拝をブログで告白した向井はともかく、たしかに五郎丸選手は昨年11月「自民党立党60周年記念式典」に出席、安倍首相とがっちり握手をするというパフォーマンスを披露。右派勢力は強い味方ができたとばかりに色めき立ち、「正論」と同じ極右雑誌「WiLL」(ワック)でも五郎丸特集を組み、"五郎丸ポーズは日本人の心"などという失笑を禁じ得ない論考を載せていた。

 しかし、こちらも本サイトの既報の通り、残念ながら五郎丸選手は複数の書籍のなかで、世界中で蔓延る人種差別を憂いながらも〈国籍にとらわれないラグビーは、いい意味での『スペシャル』です〉と語ったり、〈肌の色や言葉、国籍が違っても関係ない。それは「ラグビーが特別」なのではなく「ラグビーが理想」だ〉と言及するなど、ナショナリズムの克服を訴えている。残念ながら「おめざ女子」が期待を寄せても、ネトウヨ思想とは到底融合できそうにないだろう。

 ネトウヨ有名人がメディアにたくさん出たら「おめざ女子」はもっと増える。そして「正論」も女子にもっと読まれるのに......。彼女たちの提言はこういったものなのだが、これは「保守オヤジ」たちとも共通する願いだろう。だが、有名人が登場してネトウヨ発言をぶったところで、果たして「正論」を読む女性は増えるのだろうか。

 他方、安保法制の問題点を掘り下げ、安倍政権の危険性を記事にした女性週刊誌や女性ファッション誌は、軒並み部数を増やしている。つまり女性たちのあいだでいま高まっているのは、「安倍さんが言っていることっておかしくない?」という不信感なのだ。とくに保育園問題はその不信感に拍車をかけている状態といえるが、そんななかで「母親は子どもが3歳までは家庭で育児を行うべし」という母性神話や3歳児神話を垂れ流し、結局のところ「安倍さんは正しい!」「日教組と朝日新聞と左翼がすべての元凶だ!」というような話しか書いていない「正論」が、女性のニーズに応えられるとはとてもじゃないが思えない。

 もし、本気で「正論」編集部が「ぜひ女性にも読んでいただきたい!」と本気で考えているのなら、こんな企画はどうだろう。たとえば「保育園落ちた日本死ね」騒動でヤジを飛ばした自民党の平沢勝栄議員に石田真敏議員、菅原一秀議員、そして当人は認めていないが犯人だと噂されている石原宏高議員、白須賀貴樹議員、おおさか維新の会の足立康史議員らを集めてヤジの言い訳を訊く、「保育園に入れないのは自己責任!」座談会を開く。そうすれば、いかにも「正論」的な記事にもなるし、炎上すること間違いなし。きっといつもの部数より少しは上がると思うが......いかがだろう?
(大方 草)