二刀流プレーヤー・大谷翔平(日本ハム)の4年目のシーズンが始まった。プロ2年目の2014年には日本プロ野球史上初となる2ケタ勝利&2ケタ本塁打を記録し、昨年は15勝を挙げて最多勝のタイトルを獲得した。今シーズンはここまで2試合に登板して0勝1敗と勝ち星こそないが、13イニングを投げ15奪三振、防御率2.08と順調な滑り出しを見せた。

 まずは、キャッチャーの大野奨太に、ルーキーイヤーから今日までの大谷の成長について話してもらった。

「自分をコントロールすることがうまくなりました。もともと、いいボールを投げる能力は高かったのですが、コントロールが下手くそというか、苦手としている部分がありました。コントロールとは、気持ちや体、イニング間のコントロールのことで、経験していくなかで徐々に理解できるようになってきたと思います。それからですね、投手としてよくなってきたと思うのは。たとえば、イニング間のコントロールで考えると『ここで気持ちを入れよう』と、状況に応じて自分でギアを入れられるようになってきた。とはいえ、まだ気持ちの抜き方という面では、抜きすぎていると感じるときもありますけど......」

 大谷の今シーズン初登板はロッテとの開幕戦だったが、初回に3安打を集中され3失点。その後は7回まで無失点に抑えるも、敗戦投手となってしまった。ロッテの鈴木大地に大谷の印象について聞くと、「今では、日本で一番の投手じゃないですかね」と言った。

「魅力はあの真っすぐなんですけど、入団した頃はちょっと荒削りで、まだ高校生の部分がありました。ただ、速いだけならそれに合わせればいいだけのことなので。それが、クイックや変化球、コントロールとすべてにおいて精度が高くなってきました。対応するのが難しくなっています」

―― 鈴木選手は、開幕戦でも2打数1安打(二塁打)。昨年も8打数5安打と相性がいいようです。

「そうは思ってないですけどね。野球は個人の戦いではないですし、チームとして勝てていません(昨年は1勝2敗)。そういう結果を考えたら、大谷くんはいいピッチャーだと思っています」

 このロッテとの開幕戦で大谷から先制タイムリーを放ったのが主砲のデスパイネで、昨年の初対決から12打席目にして初ヒットでもあった。デスパイネは言う。

「去年の対戦では変化球を投げてくることが多く、僕はボール球の変化球に手を出してしまっていたんです。あれだけボールが速い投手の場合、変化球が多いとわかっていても、打席では真っすぐを待たないといけません。そうしないと、真っすぐが来たときに対応ができなくなるんです」

―― 開幕戦のタイムリーも打った球は変化球(フォーク)でした。

「なぜ、僕に対して変化球が多いのか。僕のようなラテン・アメリカの人間は、真っすぐに強いとわかっているからだと思う。とはいえ、あの剛速球に対してホームランを狙いにいくのは難しいことです。ホームランが打てればうれしいけど、彼と対戦するときはとにかく集中することが大事なんです。僕は、キューバでチャップマン(現・ヤンキース)と対戦したこともあるし、いろんなスピードボールを見てきたけど、大谷のボールはすごいです。彼は若くて未来があるので、もっと大きくなってほしいですね」

 日本ハムの吉井理人ピッチングコーチは、昨年はソフトバンクのコーチとして、それ以前は解説者として大谷のピッチングを見てきた。

「今年こうやって大谷をチームの中から見ると、やらないといけないことがまだたくさんありますよね。ただ、本人もそれをわかっていると思います。以前、日本ハムのコーチをしていたときはダルビッシュ有(現・レンジャーズ)がいました。彼を見て感じたことは、自分のやるべきことに好奇心を持っているということで、そういう選手は伸びるんですよ。僕は大谷もそのタイプと見ています」

―― これからどこを伸ばしていきたいと考えていますか。

「すべてですね。言葉を換えれば、大谷にはまだまだ成長する器があるということです。ダルビッシュはすごいレベルにあるのですが、それ以上になってほしいですね。大谷の最大の武器は真っすぐの速さで、そこそこコントロールも持っている。自分の真っすぐが"すごい"ということをもっと自覚してくれたらいいと思います。今年の開幕戦でも、ロッテの涌井(秀章)のピッチングを見ていたら、ピッチャーはやっぱり真っすぐなんだと再認識させられました。大谷の本質はパワーピッチャーです。それを貫いてほしい。自分の才能に期待を持って、思い切り投げてもらいたい。若い選手の自信満々のプレーは見ていて気持ちがいいですからね。大谷だけでなく、今の若い投手はいい真っすぐを持っていても、ほかのところに走ってしまうことがあるので......」

 前出の大野も「真っすぐが大谷の原点ですので、それを生かしながらのピッチングになります。勝負どころで大事なのは真っすぐですから」と話した。

「ただ、僕は"球速"に重きを置いていません。子どもの野球ではありませんからね。相手が真っすぐに対応してくるなかで、その真っすぐをどれだけ速く見せられるのか。165キロよりも158キロのほうが速く見えることもある。それが僕らの仕事ですし、それが"ピッチング"だと思います。スピードの見せ方は企業秘密ですが、大谷もうまくなっています」

 そして大野に「大谷投手がさらなる高みに到達するために何が必要か」と聞くと、こんな答えが返ってきた。

「1年を通して防御率1点台を目指し、そのためには安定感が必要です。ダルビッシュのときは、相手チームが戦う前から『今日は負けだ』と認めるようなところがありました。そうなれば自分たちも『アイツが投げるから今日は勝てる』と気持ちの面で有利に働きます。大谷にはその域に近づいてほしい。それができれば、今でもスケールの大きいピッチャーですが、もっともっと大きくなれる」

 大谷の今季2度目の登板は4月1日、昨シーズン大の苦手としていたソフトバンクだった。結果は6回を投げ5安打1失点と好投したが、勝敗はつかなかった。

「大谷くんとの対戦にはロマンを感じます」

 2年前、ソフトバンクの内川聖一はこのように語っていたが、今シーズンの初対戦を終え、率直な感想を聞いた。

「ワクワクさせてくれますよね。もちろん真剣勝負なんですけど、『勝った、負けた』の白黒がはっきり出る投手なので、抑えられても納得できるんです。彼に対しては、正直、うらやましさがあります。僕の場合は、いま持っているものをどれだけ維持するかにさしかかっているのですが、大谷くんは今でもすごいのに、これからどんどん進化して、まだまだすごくなる存在ですから」

―― 今季の初対戦は、3打数2安打でした。

「2本のヒットについては何も思ってないです。地方球場(静岡・草薙球場)での試合でしたし、開幕したばかりなので探りながらのピッチングだったと思います。ただ、去年までは抑えられていたので、ひと冬越えて『あれ、今までと違うな』と大谷くんに感じてもらえるようにはしていきたいですね」

 その2度目の登板から2日後、東京ドームでの日本ハム対ソフトバンクの試合前のこと。大谷が打撃練習を始めると、周りの人間は足を止め、ただ口をポカンと開け打球の行方を見守っている。ものすごい打球が右中間の広告ボードにボカンボカンと直撃し、逆方向にも強烈なライナーを飛ばすのである。ちなみに、4月4日現在、打者としての大谷は5試合に出場し、11打数4安打(打率.364)、2本塁打、7打点の成績を残している。内川は言う。

「投手で10勝するだけでも素晴らしいのに、彼は打者としても年間でホームランを10本打ったことがあるし、打率も残せる。ひとりのなかにスーパーな人間がふたりいるみたいですよね。実際に、今年も打者としてオープン戦から結果を出しています。正直、ひとりの野球ファンとして『今後、どれくらいのところまで行きつくのか』という楽しみがあります」

 個人的には、昨年の最多勝やプレミア12でのピッチングを見ると、"投手・大谷翔平"という意識が芽生えていた。しかし、内川は今でも"二刀流・大谷翔平"に大きなロマンを感じていた。

 そして4月4日、大谷のローテーションが中7日に変更になったことが判明した。栗山英樹監督が言う「1週間を投手で1試合、野手で3試合」というプランが実現することになる。シーズンはまだ開幕したばかり。はたして、投手として、野手として、大谷翔平はどんな活躍を見せてくれるのだろうか。

島村誠也●文 text by Shimamura Seiya