今年で80回目を迎える4大メジャーのひとつ、マスターズ(4月7日〜10日/ジョージア州)が始まる。すでに選手たちは練習ラウンドを重ねて入念な準備をしている。

"マスターズ・ウイーク"と呼ばれるこの1週間。通常のゴルフトーナメントならば、試合が始まる木曜日から日曜日までの戦いぶりが話題になるけれども、マスターズだけは月曜日の練習日から大勢のギャラリーが観戦に訪れて、世界的に注目を集める。

 いつのことだったか忘れたが、かつてマスターズの公式練習日が始まる前日から大雨が降ったことがあった。結局、その雨は月曜日未明までやまず、その日一日はクローズとなった。ギャラリーの入場はもちろん、選手にも練習ラウンドをさせないという処置をとったのだ。

 そのとき、地元新聞『オーガスタ・クロニクル』に「この公式練習日、月曜日を一日クローズして、マスターズはいくら利益を失ったのか?」という記事が掲載された。

 主にコース内にある売店での売り上げ。つまり、そこで売られている清涼飲料水、ビール、あるいはサンドイッチやホットドッグなどの飲食物、さらにはマスターズのマークがついたお土産物など、それらの売り上げを推定してのことだ。

 その新聞では、信じられないことに「5億円の損失」だと伝えていた。

 ということは、"マスターズ・ウイーク"では一日5億円の売り上げがあって、日曜日の最終日までの売り上げを単純計算すると、35億円に上ることになる。それを知って、マスターズという大会はやっぱりスケールが違うな、と改めて感心させられた。

 マスターズでは、世界中にテレビ中継の放映権も売っているし、マスターズのマークがついた商品が数多くあって、それらの版権を含めたマーチャンダイジングによる収益も大きい。そのすべてを計算したら、とんでもない金額になることだろう。

 これは、あくまでも推測で不確かな数字だけれど、おそらく年間100億円を超える収入があるのではないだろうか。そんなところからも、大会の規模や人気のすごさを知ることができると思う。

 さて、今年は残念ながらタイガー・ウッズ(40歳/アメリカ)が欠場する旨を大会直前に発表した。「腰痛が完治しない」というのが、その理由。しかし僕は、時代の移り変わりを感じざるを得ない。

 昨年は、ジョーダン・スピース(22歳/アメリカ)が21歳で優勝した。通算18アンダーは、タイガー・ウッズの記録と並んでトップタイ。数カ月ほどタイガーより遅くて最年少優勝者とはならなかったが、同じ21歳での優勝だった。そして、何より圧巻だったのは、スピースの奪ったバーディー数だ。4日間で28個。2001年にフィル・ミケルソン(45歳/アメリカ)が奪った25個という記録を大きく塗り替えた。さらに、4日間首位を譲らなかった完全優勝は史上5人目という快挙だった。

 その結果を受けて僕は、「このスピースに加えて、これからはロリー・マキロイ(26歳/北アイルランド)、リッキー・ファウラー(27歳/アメリカ)、松山英樹(24歳/日本)などが、米ツアーをけん引していくと思う」と、昨年のマスターズの記事ではそんなふうに最後を結んだ(※2015年4月13日配信「松山英樹のマスターズ5位は、伊澤&片山の4位とココが違う」)。

 2015−2016年シーズンは、その予想どおりになった。前述した面々に加えて、オーストラリアのジェイソン・デイ(28歳)、アダム・スコット(35歳)らが、タイガーが魅せてきたゴルフとは、また別の次元のゲームを見せてくれている。

 今季の米ツアーでは、スコットとデイがともに2勝、スピースと松山が1勝という実績でマスターズに臨む。マキロイ、ファウラーは未勝利とはいえ(※ファウラーは欧州ツアー1勝)、決して調子が悪いわけではない。このマスターズに向けてピークを最大地点へと合わせて、オーガスタ入りをしている。

 マスターズが始まる前に「誰が勝つか?」という質問をいつも浴びせられるが、今年のマスターズほど予想しにくい大会はない。言い換えれば、「誰が勝っても不思議ではない」ということだ。

 それは当然、松山英樹にも言える。日本人選手による初優勝の可能性が、今年のマスターズでは限りなく大きい。

三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho