イヤな時には逃げていい!? 「回避」という生き方

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執筆:玉井 仁(メンタルヘルスライター)


不快なものや危険なものを避けることを「回避」と言います。私たちにとって回避は自然なことであり、生きるために必要なスキルのひとつと言えるでしょう。

しかし、この方法ばかり使ってしまうと、問題が生じることもあります。
ここでは、その良し悪しを確認してみたいと思います。

回避は重要な選択肢のひとつ


一般的に使われる「回避」や「逃避」といった言葉には、あまりポジティブなニュアンスは含まれていないようです。
精神医学用語にも「回避性パーソナリティ障害」という診断名があるくらいですから。

しかし、時には逃げるという発想も大切です。
刃物を振り回された時に、それに立ち向かっていける人もいるかもしれませんが、そんな人ばかりではありません。その時、「回避」は重要な選択となります。

むしろ、その場で硬直して何もできない人が、いちばん危ないという見方もできます。

回避の現れ方は性格による


とはいえ、何を危険と感じるかは、人によって大きく違います。
臨床心理士としての体験からしても、この「回避」は、性格によって現れ方がずいぶんと違うように感じます。

例えば、こんな例を考えてみましょう。

Aさんはイケイケタイプで、自分が引く(回避する)なんてありえない、という人です。
ただし、我が道を行くという態度が過ぎたことで過去に人を傷つけたことがあり、そのことで自身も傷ついた経験を持っています。以来、強気ながらも周囲に配慮することをかなり意識するようになりました。

Bさんは慎重派で、何ごともまずは様子見をして、安全そうであれば一歩ずつ歩を進めるというタイプ。
それゆえに、「自分は逃げている(回避している)のか?」などと自問することも多かったようです。後に、一歩引いたスタンスばかりではなく、時には踏み出すこともできるようになりました。

AさんとBさんはかなりタイプが異なりますが、どちらが良いということはありません。
どちらにも良い面があり、また改善すべきと思われる面があります。大切なのは、自分がどういう「回避」の傾向を持っているかを理解し、自分が改善すべきだと思ったことに取り組むことです。

回避することが必要な場面


もうひとつ、「回避」が大切な場面があります。傷ついた時です。

傷ついた時は、後ろに下がり、傷が癒される時間を持つことが必要です。肉体が傷ついた時と同じで、傷が癒えていないのに無理をしたら、傷口が開いてかえって回復が遅れるということにもなりかねません。

傷ついた状況から早く抜け出したい気持ちはわかりますが、どんな傷も治癒までにはある程度の時間が必要です。
しばらくは安静にし、傷を悪化させかねないものごとは回避して構いません。傷口がふさがってから、少しずつ大丈夫であることを確認しながら、再び以前と同じように行動すればいいのです。

回避をしないことで得られるもの


人から誤解される(=傷つく)ことを恐れるあまり、社会参加ができない。
あるいは、「回避」することで頭がいっぱいになってしまい、身動きがとれなくなる。

「回避」は、そうしたさまざまな問題を生み出します。

誤解されることや批判されることは残念なことですが、社会生活を送る以上、ある程度は仕方のないことかもしれません。
不安にならないようにチャレンジをしない(回避する)のではなく、チャレンジをして何か新しい気づきを得ることを考えてみてはどうでしょうか。それによって多少のダメージを負っても、それはきちんと癒しつつ、少しずつ先に進めればと思います。

<執筆者プロフィール>
玉井 仁(たまい・ひとし)
東京メンタルヘルス・カウンセリングセンター カウンセリング部長。臨床心理士、精神保健福祉士、上級プロフェッショナル心理カウンセラー。著書に『著書:わかりやすい認知療法』(翻訳)など