2月中旬に1年ぶりとなる1250ドルの突破を見た金市場。弱気筋のカラ売りの買い戻しから新規資金流入による上昇で金相場の“質”が変わったことが昨年来の節目突破につながっている。金の上昇はさらなる金融波乱を暗示しているのか。

新規資金流入が変えた
金相場の“質”で
上昇した金

新規資金流入が変えた金相場の犲〞で上昇した金2月に入り、1年ぶりの高値圏となる1260ドル台まで急騰した金価格。世界的な金融市場の波乱が、投資家の関心を金に向けさせている。
ニューヨーク金先物相場は、2月11日に53・2ドルの大幅高で昨年5月の高値1232ドルを突破し、終値ベースでも1247・8ドルと1年ぶりの高値となった。1200ドル突破には、欧州の一部金融機関や米国のシェールオイル業界で高まった信用不安による買いが背景にある。2月11日の大幅高は、イエレンFRB(連邦準備制度理事会)議長が中国の経済不安などによる市場の波乱を考慮する旨の発言をしたことから、3月の利上げ観測が後退し、買いを呼び込んだのだ。
いずれにしても昨年の節目を抜けるごとにファンドの買いに拍車がかかった形だが、市場の内部要因を見ると上げの内容が異なるのがわかる。
まず今年1月から2月の1200ドル突破までは、ショートカバー・ラリー(カラ売りの買い戻し)だった。1200ドルの大台回復という達成感もあり、この時点でまとまった売りが出たのは当然だろう。ところが、この売りは吸収されることになる。
2月に入って先物市場では取り組みの増加とともにフレッシュ・ロング(新規買い)が急増したのだ。さらに、現物由来の金ETF(上場投信)の残高もコンスタントに増えている。これらは明らかに金市場に新規資金が流入していることを表している。つまり2月にかけてのショートカバーによる上昇から、新規資金の流入による押し上げに金相場の犲〞が根本的に変わったといえるだろう。
CFTC(米国商品先物取引委員会)のデータから筆者が類推するに、2月11 日の急騰相場はまず新規資金が相場を押し上げ、節目の1232ドルを超えたところで、ショートの買い戻しに拍車がかかり相場が加速し、そのまま1250ドルの心理的節目を突破。さらに買い戻しに拍車がかかり急騰に至ったということ。1232ドル以上は、いわゆる「踏み上げ」とみられる。
金市場への資金流入はその後も続き、2月の1カ月だけで金ETFの最大銘柄「SPDRゴールド・シェア」の残高が108トンも激増した。月間ベースで過去2番目の規模となる。買いの主体は不明だが、先行きの波乱を見越したヘッジファンドの買いがと見られる。原油価格低迷の長期化は資源バブルの崩壊を意味し、体力の弱い産油国や米国シェールオイル業界の破たんにつながる可能性も高まっており、そうした警戒感も背景にありそうだ。

マーケット・ストラテジィ・
インスティチュート代表
亀井幸一郎
KOICHIRO KAMEI
中央大学法学部卒業。
山一證券に勤務後、
日本初のFP会社であるMMI、
金の国際広報機関であるWGCを経て
独立し、2002年より現職。
市場分析、執筆・講演など
幅広く活躍中。