乱獲続く漁業を10年で回復する「良識ある」改革

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世界の漁場で、乱獲のため魚が減り続けていることが問題になっている。しかし、適切な漁業改革を行えば、多くの漁場が10年以内に回復目標に達し、漁業の収益も向上するという研究結果が発表された。

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世界の漁場で、魚が減り続けていることが問題になっている。乱獲の結果、40年以内に天然の海産食物は世界からなくなると予測する研究者もいる(日本語版記事)。

ニューヨークとカリフォルニアの環境科学者たちはこのほど、世界中にある4,713カ所の漁場について分析調査を行った。調査の対象となった漁場は、世界の漁業活動の78パーセントに相当する。全体として明らかになったのは、漁業資源は乱獲されており、もしこの状態で漁業が続けば、多くの漁場が崩壊することになるということだ。

だが、研究者たちは、適切な漁業改革を行えば、多くの漁場が10年以内に回復目標に達するとも述べている。

一部の漁場では、状況を改善するために、漁業改革がすでに実行されている。そうした改革には、科学的情報に基づく捕獲規定を制定したり、漁業の利益と資源の保全を一致させるよう、業者のインセンティヴを再構成することなどが含まれる(例えば、改革が行われた米国では、2000年以降、乱獲された種の数は70パーセント減少。生息数が回復した種の数はゼロから39種となり、また漁業における雇用は、過去3年間で31パーセント、収入は44パーセント増加したという)。

研究者たちは、どのような漁業改革が行われれば、漁業の収益、漁獲高、そして海洋中の魚類のバイオマスにどのような影響をもたらすのかについて2050年までのシミュレーションを行った。そして、漁業を適切に管理した場合、漁業の収益、漁獲高、そして海洋中の魚類のバイオマスが3つとも改善されることが明らかとなった(もしすべての国が最適な管理の下に漁業活動を行うようになれば、世界の魚の生息数は、2050年までに倍増する可能性がある。また、「生態学的に健全な漁場」の割合は、現在の約47パーセントから10年後に77パーセントに上昇するという)。

研究チームは、2種類の改革モデルを作成し、シミュレーションを行った。ひとつは、「長期における漁獲の最大化」を目的としたモデル(搾取されている漁業資源に対してのみ適用されるもの)。もうひとつは、長期的に持続可能な経済的価値を最大化するよう、特定の魚種を選び、割り当てるモデルだ。ふたつのモデルを比較すると、前者よりも、後者へと変更する方が、収益、漁獲高、そして特にバイオマスに対してより大きな効果をもたらされることが明らかになった。後者のモデルでは、漁業の利益と魚類のバイオマスが前者より減少することが明らかとなった。

BAUは放置した場合。RBFMは権利ベースの漁業管理を行った場合。FMSYは「長期における漁獲の最大化」を目指した場合。IMAGE BY C.COSTELLO ET AL./PNAS

また、どちらのモデルの場合でも、放置された場合と比べれば、おもに品質が向上しタイミングよく市場へ投入されることによって市場価格は上昇し、業務コストは低減されることがわかった。

漁業改革によって最も利益を受けることになる10カ国は、中国、インドネシア、インド、日本などすべてアジアの国々だ(EUではすでに、加盟国ごとの魚の種類ごとの漁獲制限量を設定されている)。だが、利益が生じる場所はそれに留まらない。このような「漁業運営に対する良識のある改革」がうまくいけば、漁業資源、漁場の収益、人間の食料供給のすべてが10年以内に改善される見通しだ。中国では今後6年間に海産食品の消費が50パーセント上昇する見込みなので、こうした改善が特に必要になるだろう。