連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第1週「常子、父と約束する」第1話 4月4日(月)放送より。 
脚本:西田征史 演出:大原拓


どうしたもんじゃろのぉ


いやな予感がする。
川岸にやぐら・・・(正しくは染織会社が使う物干し台)。どっかで見たことがある光景ではないか。
昭和5年、静岡県浜松市。朝ドラ94作目「とと姉ちゃん」の少女時代の風景は、92作目の「まれ」(15年)に似ていた。あのドラマでは浜辺にやぐらが象徴的にそびえ立っていた。
朝ドラ史上、2番目くらいの問題作「まれ」(一番は「純と愛」)と似た「物干し台」に、「きれいなもの」をテーマにした作文を書くため果敢にのぼり、周囲を騒然とさせた主人公・小橋常子(内田未来)を、とと(お父さんのこと)小橋竹蔵(西島秀俊)は、まず叱るものの、すぐ「自分で考え自分で行動したことはすばらしいと思います」と褒める。

なんて丁寧なんだ!

ととは、子供にも「おはようございます」「〜〜です」「〜〜ます」と丁寧語だ。とはいえ、この時代、「父の存在は絶対だった」という説明(語り・檀ふみ)もされる。御丁寧にアニメで。
お父さんが帰ってくると子どもたちも妻・君子(木村多江)も玄関に正座してお迎え。眼鏡付きの西島秀俊だし、こんなお父さんだったら絶対権威でも構わないと思ったが、設定では、生い立ちのせいで、父が権力を振りかざすことをしたくないと思っているそうだ。その代わり、「一、朝食は家族皆でとること 一、月に一度、家族皆でお出掛けすること 一、自分の服は自分でたたむこと」という家訓を守ることを課している。
月1のお出かけや自分の服をたたむなど、なんてつつましく微笑ましい。みかんをしわしわに揉むのがクセというのもかわいらしい。
「とと姉ちゃん」は、この素敵に丁寧なお父さんが亡くなった後、若くして父親役を担うことになった常子が、やがて、女性のための雑誌をつくることになるというお話だ。

冒頭は、昭和33年、常子(高畑充希)が雑誌「あなたの暮らし」の編集部で颯爽と働いている場面で、男の部下に「ひとに何かお願いするときは直接会って話さなきゃ」と丁寧な仕事の仕方をアドバイスする。
その編集部は、キッチンスタジオも兼ねているような充実したものだ。遡って昭和9年の、小橋家の食卓や子供部屋も、家具や食器等が何から何までいい感じに丁寧に並んでいる。朝ご飯が、白米、お味噌汁、めざし2本、お豆腐、たくわんと、丁寧な質素さ。
実在する、ハイセンスさで群を抜いていて、昨今の「丁寧な暮らし」ブームの先駆けとも言える雑誌「暮らしの手帖」の作り手をモデルにしたドラマだから当然だが、まるで「丁寧な暮らし」の広告のよう。広告といえば、西島秀俊の雰囲気は、彼が出ている家電や洗剤のCMのイメージを踏襲しているような印象を受ける。
冒頭の、手持ちかステディカムか何かでカットを割らず、常子の足取りを追う感じも、画にも凝っていますという丁寧さだった。
「んー・・・・・・どうしたもんじゃろのぉ・・・・・・」という主人公の口癖らしい台詞が用意されているのも、御丁寧。

初回15分で、これだけ丁寧だと、丁寧ぽさ集めてみました感が逆に居心地悪くて、こっちが「んー・・・・・・どうしたもんじゃろのぉ・・・・・・」になった。
もしや、1年ぶりに波乱の朝が来るかもしれない(楽しんでいます)。
(木俣冬)