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東京大学(東大)は4月5日、肺線維症治療に向けた核酸医薬を開発したと発表した。

同成果は、東京大学大学院 理学系研究科生物科学専攻 博士課程3年 加藤一希氏(研究当時)、西増弘志助教、石谷隆一郎准教授、濡木理教授、リボミック 池田寿子氏、中村義一氏、東北大学 青木淳賢教授らの研究グループによるもので、4月4日付けの英国科学誌「Nature Structural & Molecular Biology」オンライン版に掲載された。

肺線維症は、肺組織の線維化によって引き起こされ、発症すると呼吸困難などを伴う重篤な疾患だが、いまだ有効な治療法は確立されていない。肺線維症の原因タンパク質であるとされている「ATX」は、血中に存在するタンパク質であり、リゾホスファチジルコリンという脂質を分解しリゾホスファチジン酸を産生する。ATXが過剰に働き、リゾホスファチジン酸が大量につくられると臓器の線維化を引き起こすことが知られている。

そこで今回、同研究グループは、肺線維症の治療を目的としてATX阻害剤の開発研究を実施。まず、核酸分子が塩基配列によってさまざまな形をとる性質(可塑性)に着目し、核酸リガンド(アプタマー)の実体を明らかにする「SELEX法」を発展させたリボミックの技術「RiboARTシステム」を用いて、ATXに選択的に結合し、その働きを抑える核酸アプタマーを取得した。次に、ATXと抗ATXアプタマーの複合体を結晶化し、大型放射光施設SPring-8にてX線回折データを収集し、その結晶構造を決定した。

この結果、抗ATXアプタマーはATXにぴったりと結合し、その活性部位を塞ぐことによりATXの働きを阻害していることが明らかになった。さらに、構造情報を利用してアプタマーの分子構造を改良し、ATXの働きをより強力に阻害するアプタマーを作製した。最終的に、改良した抗ATXアプタマーが肺線維症のモデルマウスにおいて治療効果を示すことを確認。肺の線維化に伴って気管支肺胞洗浄液にコラーゲンが顕著に蓄積するが、抗ATXアプタマーの投与によってその蓄積を抑制することができ、このとき気管支肺胞洗浄液中のATXの酵素活性も顕著に抑制されていたという。

今回の研究で得られた抗ATXアプタマーは、肺線維症の新規な治療薬の開発につながることが期待されると、同研究グループは説明している。

(周藤瞳美)