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マツダ「ロードスター」がこのほど「2016 ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」とその部門賞「デザイン・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。この2つの賞をダブル受賞するのは「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」創設以来、初めてだという。

同車は昨年、「2015-2016 日本カー・オブ・ザ・イヤー」も受賞しており、新たな伝説を作ったといえる。

ところで、こうした受賞歴を見て、「カー・オブ・ザ・イヤーって一体いくつあるの?」と思う人は多いのではないだろうか。あるいは、「去年のカー・オブ・ザ・イヤーって、スズキ『アルト』じゃなかったっけ?」と思う人もいるかもしれない。そこで今回はカー・オブ・ザ・イヤーについてまとめてみよう。

現在、世界の主要なカー・オブ・ザ・イヤーは3つある。マツダ「ロードスター」が今回受賞した「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」、北米で市販されるモデルから選出する「北米カー・オブ・ザ・イヤー」、欧州で市販されたモデルから選出する「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」だ。一方、日本国内ではなんと3つのカー・オブ・ザ・イヤーが毎年選考されている。「日本カー・オブ・ザ・イヤー」「RJCカー・オブ・ザ・イヤー」「日本自動車殿堂カーオブザイヤー」だ。

すでにお気づきの人も多いと思うが、これらのカー・オブ・ザ・イヤーは独立して運営されており、関連性もなければ連携・連動もあまりない。サッカーW杯なら各国の代表チームが各地域で行われる予選を勝ち進み、本大会で世界一をめざすことになるのだが、カー・オブ・ザ・イヤーにそういったシステムはない。各国のカー・オブ・ザ・イヤーを決め、そのモデルが北米や欧州のカー・オブ・ザ・イヤーを競い、そして「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」に進む、といったことはまったくないのだ。

日本の3つのカー・オブ・ザ・イヤーもそれぞれ独立して運営されており、格上・格下といった位置づけはない。もちろん他の国でも、独自にカー・オブ・ザ・イヤーが選考されている場合もあるし、消滅してしまったカー・オブ・ザ・イヤーも数多い。ちなみに昨年、マツダ「ロードスター」が国内で受賞したのは「日本カー・オブ・ザ・イヤー」。一方、「RJCカー・オブ・ザ・イヤー」はスズキ「アルト」が受賞した。

○選考の対象となるモデルはどれも同じ?

それぞれのカー・オブ・ザ・イヤーの対象モデルを見てみると、面白いことがわかる。「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」は2つ以上の大陸にまたがる5カ国以上で販売されたモデルから選考される。一方、「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」はヨーロッパの5カ国以上で発売され、年間5,000台以上の販売が見込めるモデル、「北米カー・オブ・ザ・イヤー」は北米で市販される乗用車およびトラックとなっている。審査員はいずれも自動車ジャーナリストで、投票などにより選考される。

小規模なメーカーが多いヨーロッパでは、販売台数に制限が設けられ、北米においてはトラック部門があるなど、それぞれの地域性が反映されていることも面白いが、注目すべきは、いずれも「製造」ではなく「販売」されているモデルが対象となっていることだ。この点は、改めて考えると非常に興味深い。というのも、主要なメーカーの主要なモデルは大抵の場合、世界中で販売されるからだ。

「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」の対象モデルは、「2つ以上の大陸にまたがる5カ国以上で販売されているモデル」だという。もっともらしく見えるが、その条件をクリアして選考対象となるモデルと、「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」の対象モデルとなる「ヨーロッパ5カ国以上で販売されるモデル」の間には、どれほどの違いがあるだろうか。北米も含め、世界の3つのカー・オブ・ザ・イヤーの対象となるモデルは重複する部分が非常に多く、いずれも世界中の主要モデルから一番を決めるアワードと考えて大きな間違いではない。

しかし、選考の傾向ははっきりと分かれる。「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」はこれまで、メルセデス・ベンツ、BMW、レクサス、アウディなどの高級車ブランドが多く受賞している。これに対し、「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」はプジョー、ルノー、フィアットの受賞が多く、長い歴史でメルセデス・ベンツが受賞したのは1回のみ。BMWにいたっては1度も受賞していない。「北米カー・オブ・ザ・イヤー」の場合は、当然ながらアメリカ車の受賞が多い。ただし、どのカー・オブ・ザ・イヤーもフォルクスワーゲンと日本車は複数の受賞やノミネートがある。

こうした世界のカー・オブ・ザ・イヤーに対して、日本のカー・オブ・ザ・イヤーは少し毛色が異なる。というのも、日本では国産車と輸入車を別部門に分けているからだ。

たとえば「北米カー・オブ・ザ・イヤー」の場合、ある年は「シビック」、他のある年は「コルベット」が受賞している。「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」も、ある年は「ゴルフ」、他のある年は日産「リーフ」が受賞している。それを考えると、日本のカー・オブ・ザ・イヤーはちょっと度量が小さい気がしないでもない。もっとも、国内に10近い自動車メーカーがひしめき合い、国産車のシェアが9割を優に超える国など他にないから、当然のことといえるのかもしれない。

○自動車には賞や格付けがたくさんある

これらのカー・オブ・ザ・イヤーはいずれも消費者の愛車選びに小さくない影響を与えるのだが、同様に消費者が気にかけるアワードや格付け、調査結果の類いは他にもたくさんある。最近とくに注目されるのは安全性の評価だろう。日本では「JNCAP」、欧州では「ユーロNCAP」、米国では「IIHS」が、それぞれ実車での試験をもとに衝突安全性を評価している。高い評価を得た車種はテレビCMでもそれをアピールし、いまやカー・オブ・ザ・イヤーより注目度は高いかもしれない。

消費者が強い国である米国では、JDパワー社の発表する調査結果も非常に大きな影響力を持っている。自動車耐久品質調査や自動車初期品質調査などがそれで、自動車メーカーや自動車ジャーナリストとはまったく無関係に、ユーザーに対して大規模な調査を行って故障率などを調べているため、信憑性が高いとされている。

アワードや調査結果ではないが、レースの結果やサーキットでのタイムがものをいう場合もある。WRC(世界ラリー選手権)のように市販車が活躍するレースで優勝したモデルは注目度が上がるし、スポーツカーにおいてはドイツにあるニュルブルクリンクサーキットのラップタイムがそのまま走行性能の評価になることもある。

世に賞と名の付くものは多いが、インターネットによる口コミの発達や価値観の多様化もあって、以前より注目されることは少なくなってきた。いい例が楽曲に与えられる賞で、かつては年末ともなると毎日、さまざまな音楽賞の授賞式がテレビ放送されていたものだが、いまではめっきり少なくなった。

そうした中で、いまだに多くの賞が変わらぬ権威を保ち、発表のたびに注目されているのは自動車、あとは映画くらいといえるかもしれない。

(山津正明)