フィギュアスケート世界選手権女子シングルは、戦前の予想通り、フィギュア大国、日米露の熾烈な戦いが繰り広げられた。頂点に立ったのはロシアの新星エフゲニア・メドベデワ。シニアデビューシーズンで出場した5大会中4大会(グランプリシリーズ中国杯は2位)を制したことになる。

 技術と芸術のバランスのよさが際立ち、安定感のあるジャンプを跳び、プログラムを表現する才能もある 。今季はその実力を十二分に発揮した。来季以降もジュニアから続々ときら星のような才能がシニアに転向してくる予定で、戦いはますます激しさが増してきそうな予感がする。

 そんな厳しい時代に入った中で、日本は11年 ぶりに表彰台を逃した。それでも、出場した3選手それぞれベストを尽くしてリンクで舞い踊り、及第点といっていい結果を残した。来季の世界選手権 (ヘルシンキ)の出場枠最大3人を確保できた意味は大きい。

 全日本女王の宮原知子はショートプログラム(SP)6位 からフリー3位 に浮上して、合計210.61点 で総合5位 となり、日本勢トップの成績を収めた。技術点では優勝のメドベージェワに次ぐ高得点を挙げるなど、技術や表現力をこつこつと積み上げ、着実にレベルアップしたことを証明。18歳 のさらなる成長が楽しみなところだ。

 今大会を一番楽しんでいた本郷理華は合計199.15点を出し、順位こそ総合8位だったが、SP、フリーともに勢いのあるダイナミックな演技を披露してみせた。目標だったフリー200点超えは最後のスピンを取りこぼしたことでお預けになったが、来季への大きなモチベーションになるはずだ。日本女子フィギュアの未来のためにも、若手の宮原と本郷には奮闘を期待したい。

 そんな2人の後輩とともに、日本チームにしっかりと貢献した25歳の浅田真央。1年間の休養から現役復帰を果たし、「やっぱりいろいろありましたね」と振り返ったシーズンを、最後まで諦めることなく戦い抜いた。

「なかなかうまくいかないことが多くて、シーズン途中は復帰しないほうがよかったかなと思ったときもありましたし、自分たちの時代は終わったのかなと思いました。復帰して、最初は順位を目指し、(それは)選手である以上はやっぱり当然なことではあると思っているんですけど、自分がなかなか思うような演技ができなくて、結果がついてこなかったので、ちょっと違う考えを持とうと思いました。

 そうして自分のやりたいことや、目指している滑りをたくさんの方に見てもらいたいという思いが、少し芽生えてきました。理想は、結果も自分の演技も両方揃うことですけど、まずは自分の演技をしなければ満足しないですし、それを目指して現役に戻ってきたということもありますから、今日のフリーは、大目にみて自分の満足できる演技ができたので、とりあえず『今季が終わったな』とほっとしています」

 結果は今季の中で一番悪い順位の総合7位。 だが合計得点は今季自己ベストの200.30点をマークした。2シーズン前の休養直前に優勝した世界選手権で出した216.69点の自己最高得点には及ばないものの、それ以来の200点 越えを果たし、両手の親指を立てて笑顔になった。

「やっぱり世界選手権という大きな舞台で、SPが自分の思いどおりにいかなくて終わったときは『あ〜、何をやっているんだろうな』って、いつもだったら落ち込んでいたと思うんですけど、何かちょっと違う気持ちだったので、もう一度気持ちを切り替えて、思い切り自分を信じるしかないなと思って滑りました」

 今回の世界選手権でも、代名詞のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の成否が勝負を大きく左右したといえるだろう。SP、フリーともに回転不足を取られ、GOE(出来栄え点)も大きく減点されて得点源を失った。それでもフリーではしっかり回り切るジャンプだったこともあり、勢いに乗って『蝶々夫人』を演じ切った。蝶々夫人のように芯の強い女性、浅田真央の魂が込められた演技に、会場の観客はすっかり魅了されていた。

 休養から復帰した今季は「彼女のやりたいようにさせている」という佐藤信夫コーチは、世界選手権前に左ひざを痛めながら練習に取り組む浅田の頑張りに、あらためて感心したという。

「最高のコンディションで臨むことはできなかったんですけど、できる限りのことはやってくれたかな。そういう意味で頑張ったなと思っています。左ひざ痛は滑れないという状態ではないが、ちょっとやりすぎるとよくないことが出てきますから、手綱じゃないですけど、いきすぎないようにコントロールするのがまだまだ大変でした。(そういう状況ではあったけれど)本当に私の話を理解して頑張ってくれたかなと思います」

「競技会が恋しくなった」と復帰したシーズンはこの世界選手権で幕を閉じるが、浅田の現役生活はまだまだ続くことになりそうだ。

「いま終わったばかりなので、来季のことに関しての目標はないんですけど、いまできることを最後までやり切ることが自分の考えです。競技生活はあと何年かに限られていると思うので、たぶん復帰していなかったら後悔していたと思います。こうして現役に戻ってきて、たくさんの方に応援してもらえて、それが私はすごくうれしいです」

 良いときもあれば悪いときもある。それでも人生が続くように、浅田の競技者としての道もまだまだ続きがあるに違いない。第2ステージで心新たにした日本フィギュア界の至宝が、平昌五輪のプレシーズンとなる来季はどんな演技を見せてくれるのか。いまから楽しみである。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha