2008年のM-1グランプリで敗者復活から駆け上がり、瞬く間に人気コンビになったオードリー。いまや多くのレギュラー番組を抱え、若林はMCをそつなくこなし、春日は体を張って様々なスポーツにトライする姿が当たり前になった。


そうなると逆になかなか見られなくなるのが、本来の”お笑い”を全力でやる姿だ。そんな中、彼らが本領を発揮する番組、『とんぱちオードリー』(フジテレビ)が今夜24:25〜、4回目の放送を迎える。

バラエティ番組をやるというコント


2014年10月。『とんぱちオードリー』の初回が放送されるや、大きな話題をさらった。かなりたっぷりの時間を使って展開された「中学生の悩みを解決する」という、いかにもバラエティ番組らしい企画が放送されたかと思いきや、それがフェイクだったからだ。
とある一般の中学生男子の恋を応援し、なぜかカスカスダンスのアレンジ版を伝授するオードリー。その男子とコンビを組んで教室でネタを披露するお調子者の友だち、妙に味わい深いキャラで彼に協力する片思いの相手の友だち女子。
『天才たけしの元気が出るテレビ!』内の「勇気を出して初めての告白」にも通じるようなこのバラエティ然としたバラエティが、実はすべて綿密な脚本のうえに演じられたドラマであったというもの。つまり、「バラエティ番組をやるというコント」に視聴者はまんまとのせられた。

視聴者を翻弄し続けるオードリー


この初回放送が評判を呼び、翌年4月、10月にも『とんぱちオードリー』は放送された。第2回ではスタジオセットのバラエティで急にMCの若林がキレはじめたかと思うとフェイクドキュメンタリー『放送禁止』にも通じる恐怖の展開が待ち受けていた。かと思えば第3回では過去2回の放送で警戒する我々を見透かすように、最後までガチで若者の悩みを解決した。

地上波でこれだけ自由かつ綿密なことができるのは、総合演出がラジオ『オードリーのオールナイトニッポン』でも度々話題に上がる春日の盟友、“水D”こと水口健司ディレクターであることが大きいだろう。「自分の冠番組でやりたいことをやる」という、売れてなお難しいことを、オードリーはブレイク後6年かけ、仲の良いスタッフの力も借りて実現したのだ。

過去3回の放送では、毎回「ターゲット漫才」「春日チャレンジ」のコーナーもあった。「ターゲット漫才」はボディビルダーやホスト、小学生女子など、特定のジャンルの人たちを集め、彼らにウケる漫才をつくって披露するというもの。小学生向けに「スターライト学園」という単語を放り込んで爆笑をとったかと思えば自分たちと同学年の女性に「びんぼうパーマ」という単語をぶちこむも無反応……と、慣れない専門用語を駆使して漫才に仕立てる漫才師・オードリーの姿を観ることができる。

体を張る春日=オードリーの真髄


そして春日が様々なことにトライする「春日チャレンジ」のコーナーこそが『とんぱちオードリー』の隠れた柱だ。「春日チャレンジ!」と子どもたちの声が上がると、歌のおねえさんが元気に歌う「春日チャレンジの歌」に乗せて春日がなかなかひどい目に遭う。煮立ったお酢を飲まされたり、裸で女王様の鞭を受けたりと、かなりめちゃくちゃな仕打ちを受けてなお、春日の目は輝く。
思えば、オードリーは売れない時期から、いや、素人であった高校時代からずっと春日の体を使って遊んでいた。「高い場所から飛び降りる」「若林が車で春日に激突」など、シンプルに危険で、でもなぜか笑ってしまう男子の遊び。それをずっと続けてきた彼らが、自分たちの冠番組をもってやることはやっぱり春日で遊ぶことだった。おそらく、これこそがオードリーの真髄なのだ。
彼らが大人になり、芸人としても成長した結果獲得したものがあるとしたら、そういう体を張った笑いを延々やるのではなく、曲にのせて1〜3分という短い尺でまとめる潔さとポップさ、そしてこの形で見せることが最良だと判断できるスタッフとの関係なのではないだろうか。

さて、今夜はどんな仕掛けが私たちを待っているのか。『とんぱちオードリー』は今夜!
(釣木文恵)