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●フィギュアスケーターが陸上で行うトレーニング
世界選手権も終わり、フィギュアスケートはオフシーズンへと突入しました。現在、多くの選手が次のシーズンに向けて準備をしている頃だと思います。前回は体幹トレーニングについて触れましたが、今回はそのほかの陸上トレーニングについていくつかご紹介したいと思います。

以前、オフアイストレーニングとしてバレエや新体操などをご紹介しました。浅田真央選手はバレエをきっかけにスケートを始めましたし、高橋大輔さんは現役時代、陸上トレーニング専門のトレーナーさんと一緒にランニングや体幹トレーニングを行っていました。ですが、この他にも選手がオフアイスで行っているトレーニングがたくさんあります。

○さまざまな効果が見込める縄跳び

まずは、最も多くのフィギュア選手が取り入れているであろう「縄跳び」です。この記事を読んでくださっているほとんどの方も、一度は縄跳びをしたことがあるでしょう。フィギュアの選手はこの縄跳びをトレーニングだけではなく、ウオーミングアップで取り入れていることが多いです。テレビでウオーミングアップ風景が映った際に見かけたことがある方もいらっしゃると思います。

縄跳びのやり方は選手の目的によって異なりますが、長く跳び続けて心肺機能を高めたり、2重跳びや3重跳びでジャンプ力を高めたりと、さまざまな効果があります。専門用語では「プライオメトリクストレーニング」というのですが、縄跳びをしている際に着地の時間をなるべく減らし、着地のパワーをジャンプの力に変えることで、より楽に高いジャンプが跳べるようになります。

低年齢の選手は正しい跳び方を身体で覚えていくのですが、縄跳びをしている際は、体幹が安定していないと着地のパワーをうまくジャンプ力に変えられず、2重跳びなどで縄に引っかかってしまう原因になります。縄跳びは場所をあまりとらない利点もあるため、取り入れやすいトレーニングと言えます。

●ボールを使った練習の数々
○バランスや体幹を鍛えるメニュー

また、同じプライオメトリクストレーニングとして、1kg程度の重りが入っているボール(メディシンボール)を使ってトレーニングを行う選手もいます。こちらも目的によって使い方はさまざまですが、私の場合はボールを使って体幹を意識させることを目的として取り入れていました。

重いボールを真上に投げようとする際、腕の力だけではなかなか投げられませんでした。でも、膝の曲げ伸ばしの反動で生まれた力を体幹を通じて腕まで伝えられたときは、ボールは楽に遠くまで投げられました。この動きを応用して、ジャンプの軸に変えていくわけです。力を物に伝えて得た感覚は身体も覚えていてくれて、ジャンプも楽に跳べるようになった記憶があります。

物を使うトレーニングは他にもたくさんあり、バランスボールやバランスボードなどといった不安定な道具を使って、バランス感覚を鍛えるというトレーニングが一例です。

昨今のフィギュアスケートの採点法を鑑み、最近ではスピンやステップでより高いレベルの技を習得するため、基本の姿勢から変形させた姿勢で技を行うことが増えてきました。基本からあえて姿勢を変形させるため、平衡感覚を鍛え、どんな姿勢でも転倒しないようなバランスを保つ訓練が必要となってきています。

もちろん氷上での練習も重要になってきますが、変形した姿勢が原因でけがをしないよう、陸上で基礎の筋肉の使い方を覚えてから氷上で練習することが多いです。

○日常の健康増進にも役立てよう

見た目は華やかなフィギュアの世界ですが、その裏ではこのような見えない努力をしている選手がたくさんいます。フィギュアスケートへの効果をご紹介させていただきましたが、これらは、一般の方の健康増進にも大いに役立てられるものだと思います。

フィギュアスケーターが取り入れているトレーニング、ぜひとも日常にも取り入れてみてくださいね。

○筆者プロフィール: 澤田亜紀(さわだ あき)

1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。

(澤田亜紀)