ヘアカラー剤による被害相談事例は5年間で1000件超(shutterstock.com)

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 「白髪も厄介ですよね。でも、猫を飼ってるのと同じかな」、そんなシャレた言い回しでアラフィフの加齢現象を語っているのは小泉今日子さん(50)。世間の未魔女賛歌やアンチエイジング至上主義にも抗わず、これまでにも「老化は進化」とマイペースな発言をしている。
 
 彼女がたとえたように、白髪は"手のかかる猫"。本当に厄介だ。頻繁に美容院で染めてもらうのは経済的に無理がある。じぶんで染めるのは節約になるがムラが気にかかる。外出直前の鏡のなかに数本発見した時なんかはブラシで隠しても落ち着かない......。

 そんな節約派の現実的悩みに応えるべく、いささか大胆な提案記事を掲載したのが『美ST』2016年4月号(2月17日発売)。題して「発見!白髪染めを2カ月に1回にする方法」。

 その時間的・経済的節約秘術というのがなんと、ゼブラ社の油性マーカー『マッキー』を毛染め剤の代用品として誤魔化そうという過激なウラ技だった !

勇み足だった超絶コスパな毛染め秘術

 雑誌が発売されるや、たちまちネット上でも大反響。「この発想はなかった!」「マッキー万能すぎる!」「超絶コスパ良好なんですけど!」など、一部で絶賛の声が飛び交った。

 が、本来や字や絵を描く用途を逸脱した提案を当のゼブラ社が黙認しなかったようで(そりゃそうだ)、3月24日付の編集部ブログに「訂正とお詫び」文が掲載されて斯界の失笑を買った。

 「頭髪に使用するにあたって、十分な健康・安全上の配慮、およびゼブラ株式会社への取材を行うことなく記事を掲載したことを関係者の皆様にお詫び申し上げるとともに、記事を訂正させていただきます」
 
 そうなると巷間評も「筆記具を推奨しちゃいかんよなぁ」「昭和ならOKなネタだな(笑)」と一転し、「マッキーをアイラインにしていた元ギャルが書いたんじゃないの?」と取材記者の劣化ぶりを突くような指摘も書き込まれた。
おしゃれ効果の弊害も考えないと

 美を謳う雑誌であればこんな荒技紹介でなく、むしろ手染め(剤)をめぐる注意喚起の記事を優先してほしいものだ。

 たとえば、消費者安全調査委員会(消費者庁)が昨秋(2015年10月)に公表した調査報告書「毛染めによる皮膚障害」などは、率先して載せてほしい情報だ。

 概要欄によれば、2014年までの5年間で1000件超の被害相談事例が消費者庁に寄せられ、うち約170件は「1カ月以上の重症」だった。被害例の中には髪が抜け落ちたり、頭皮以外の耳や指先などの広範囲にまで炎症が広がった人もいるという。

 一方、同じく消費者庁が昨年の1〜2月にかけて、「毛染め経験」をもつ全国の老若男女3000人(15〜80歳)を調査した際も、驚く結果があぶり出された。ヘアカラー剤によるアレルギーのリスク(危険性)を「知らない」とした回答者が32%もいた。

 さらに驚くのが、もしアレルギーなどの皮膚障害に見舞われた場合、「別の商品にすれば改善されると思う」という楽観回答が56.5%......。半数以上が健康被害に無頓着な実態を知れば、日本人の黒髪が十人十色になりつつあるのも納得できる。

 ヘアカラー、ヘアダイ、おしゃれ染め、白髪染めなど、さまざまな名称で呼ばれる酸化染毛剤。個人差はあるものの、アレルギー反応を起こす元凶は「色持ち」をよくするために用いられるPPD(パラフェニレン)とされている。

 また、ロンドン大学高等教育機関のルイス・リナレス教授らの最新研究では、白髪化の初期段階では(毛髪内の色素を作り出す)遺伝子IRF4の影響が大きいと指摘。さらに研究が進めば、いずれ白髪予防の化粧品が開発できる可能性もあると示唆している。

 現状では酸化染毛剤の場合、使用前のセルフテストが必須だ。薬剤を皮膚に塗って反応を見るパッチテストで、痛みや赤み、かゆみなどの異常が出たら「アレルギー性接触皮膚炎」の疑いあり。手順の詳細は、日本ヘアカラー工業会のHP上でも公開されている。

 一度でもアレルギー反応があった場合、軽くすんだといっても要注意。再使用を重ねることで症状が悪化し、医療機関の受診が必要とされる事態を引き起こす例も少なくないからだ。

 白髪の厄介さを飼い猫にたとえた小泉さんは、「白髪も"この忙しいときに、またお前がわがまま言うから美容院に行かなきゃいけない"って美容院に行く。"行かなくてすむように、ちょっと我慢して"って、そんな気分です(笑)」ともコメントしている。

 加齢を象徴する白髪の悩みも、こんな肩の力の抜いた愛玩感覚(=憎らしくも愛しい)でつきあえば、鬱陶しさも多少は軽減するかもしれない。
(文=編集部)