東野圭吾・原作のドラマ『カッコウの卵は誰のもの』(画像は同番組のHPより)

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 人気小説家・東野圭吾の作品が『幻夜』『分身』『変身』に続き、WOWOW連続ドラマWに登場する。『カッコウの卵は誰のもの』は、スポーツ遺伝子をテーマに、親子の絆、才能、真の幸せとは何かを問うメディカル・ヒューマンサスペンス。3月27日(日曜)夜10時から放送がスタートする。

 親子2代でトップスキーヤーをめざす天才女子アルペンスキーヤーの緋田風美と父・宏昌。風美のDNAから高い運動能力を予見させる特別なスポーツ遺伝子が検出される。そのアクティブで端麗な容姿にメディアの熱い視線が注がれる。

 だが、風美の出生には人知れず深いヒミツがあった。そして、予期しない恐ろしい怪事件が次々と風美に襲いかかる......。

 さまざまな思惑を抱きながらトレーニングに打ち込みつつも、スポーツビジネスに翻弄される人間の悲痛と苦悩。逞しく生き抜こうと情熱を燃やす若きアスリートたち。良心のはざまで揺れる人間模様が白銀のゲレンデに鮮やかに描き出される。

 ヒロイン・風美を演じるのは、NHK朝の連続テレビ小説『まれ』、TBS日曜劇場『下町ロケット』、映画『orange-オレンジ-』など大ヒットドラマにも出演した土屋太鳳だ。土屋は日本女子体育大学体育学部4年の現役体育大生ということもあり、その卓越した運動能力を秘めた土屋ならではの迫真演技に胸が高鳴る。

遺伝子検査サービスは信用できるのか?

 さて、本作のテーマである「スポーツ遺伝子」を調べる遺伝子検査サービスを手がけている企業は、国内内外を問わず数多い。その解析データは、どこまで信頼できるのだろうか?

 英国のスポーツ医学専門誌『British Journal of Sports Medicine』2015年12月号に掲載された記事によれば、スポーツ医学・スポーツ科学・遺伝学・社会科学・小児科・法学・生理学などに造詣が深い英国の専門家グループは、「ハーセリーズなどのスポーツ遺伝子検査はナンセンスだ」と論評している。

 この専門家メンバーは、スポーツや運動に関する項目を提供している39種類の遺伝子検査サービスを詳しく調べたところ、次のような表現があることにまず注目した。

 「あなたの遺伝子が運動能力にどう関わっているのかを見つけよう」「あなたのスポーツ遺伝子に基づいて、あなただけのトレーニングを!」「私たちはあなたのDNAの結果をもとに、体重を減らして筋肉を作り、ぴったりの服を着られるようにサポートします」などだ。

 ただ、39種類のサービスのうち21種類は、DNAの塩基配列の場所がまったく不明だった。調べるDNAを明らかにしている残りの18種類のサービスのうち、16種類は「ACTN3遺伝子」を調べ、11種類は「ACE遺伝子」を調べていた。18種類のサービスが調べた遺伝子数は、1個から27個とバラツキがあったが、中央値は6個だった。

 このような解析結果についてメンバーは、「商業的な企業秘密は理解できるものの、ACTN3遺伝子とACE遺伝子の解析だけでは運動能力や適性は解明できない」「これらの遺伝子の特質とサービスのうたい文句を結びつける確かな根拠がまったくない」と批判している。
ACTN3遺伝子は瞬発力、ACE遺伝子は持久力!?

 一方、ACTN3遺伝子は短距離走のスピード・パワー・瞬発力・スタミナなどに関係するとか、ACE遺伝子は忍耐力・持久力に関連があるという欧米各国の研究報告はある。

 だが、「短距離走のパフォーマンスの個人差は、ACTN3遺伝子やACE遺伝子だけでは十分に説明できない。関わるのはパフォーマンスの差のうち3%程度に過ぎない」と説明する。

 つまり、数個の遺伝子を調べるだけで、スポーツに関わる運動能力や適性を判断したり、トレーニングの方法や種目を変えるのは無意味になる。

 また、専門家グループは「これらの遺伝子検査サービスは科学的な知見が不足している。遺伝子に関する情報をユーザーに提供する時の遺伝カウンセリングも十分に行なわれていない」という。

成績や才能を特定できるレベルにはほど遠い

 そして、「クオリティも信頼性も低い遺伝子検査サービスは、スポーツをしたい人の意欲や好奇心を妨げるだけでなく、チャレンジしたい子どものチャンスや権利を奪いかねない」と強い懸念を表している。

 さらに、専門家グループは、より大規模な研究が行われれば、スポーツと遺伝子との関係が明らかになる可能性はあるものの、現状では解析ノウハウの限界やリスクが大きく、スポーツの成績や才能を特定できるレベルにはほど遠いので、信頼できないと結論づけている。

 この数年のうちに、ヤフー、ジーンクエスト、ジェネシスヘルスケア、DeNAなどが進出したことで、日本の遺伝子検査サービスのビジネスシーンも様変わりした。だが、今回の専門家グループが強く指摘するように、玉石混交の疑念もぬぐいきれないのも事実だ。

 解析技術の精度、判定の科学的根拠、利用者への精度や限界の丁寧な説明、検査の質を高める企業努力、研究開発の推進など、遺伝子検査サービスが取り組むべき課題は尽きない。健全なビジネス育成をめざす認定制度導入の動きも追風になりそうだ。

 『カッコウの卵は誰のもの』のヒロイン・風美が受け継いだスポーツ遺伝子。そのヒミツは、どのように明かされるのだろうか?
(文=編集部)